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269話 逃げた私たちの助けと再会

真っ暗な森の中、月明かりだけを頼りに私とガーネティアは……。



「痛いっ!また枝ひっかけたじゃない!」

「文句は走り切ってからになさい!」

「どうしてあなたは傷つかないのよ!」

「言わないだけでわたくしだって傷だらけよ!」

「うそよ!痛がってないじゃない!」

「いちいち痛がっていたら逃げられないだけよ!」



森の中、獣道、草木が生い茂る間を爆走していた。

お互いの足音と、怒鳴り声と、さらに後ろから聞こえる何人もの声。


状況はシンプル。

どこだかもわからない勢力に追われてます!



「待てー!!」

「女だ女だ!」

「似た顔しやがって気持ち悪い!」



ドタドタザワザワ兵士の足音がうるさい。

音からして、武装してるんだろうな。


暗闇で目が慣れてるわけじゃないから、すごく逃げにくい。

会話の内容的に、こっちに友好的なんてどう考えてもない。


結構遠くまで逃げられたし、もうすぐ港なのにこんなことある!?

ツイてなさすぎ!


足使えないとか言ってられないし、二人で全力フルスロットルで走るけど声は近づいてくる。

私が止まって、追いかけてくる奴らをやっつける?

でも武器持ってたらさすがに勝てない。

こっちは丸腰もいいところだし、ガーネティアの荷物以外何も持ってないんだから!



「ガーネティア何か持ってないの!?銃とか、ナイフ!」

「ないわよ!わたくし、ドレスと薬草とパン以外入れてきてないもの!」

「ドレス持ってきたなんて、危機感のない王女じゃない!」

「わたくし本当に王女だもの!そんなに責めないでちょうだい!」

「責めないでいられる人がいたら会ってみたいわね!」



なんでスラムでドレスなんだよ!

今はどうでもいい、とにかく逃げないと!

潮の匂いが近づいてきたから、きっともうすぐなはず……!


森を抜けたその時、波の音が耳をついた。

ザパーンと岩場に波が打ち付けられる音。

それは、目的地の音!


足を止めかけたガーネティアに「走って!」と叱咤して、桟橋を駆けていく。

追いかけられてる中、逃げ場のないところに行くなんて最悪だってわかってる。

でも、見えたんだもの。


大きくて、海に浮かぶ一隻の船。

『オールシー』って書かれた、帆のデザイン。


エラが所属している船舶がいるなら、助けてもらえるかも。

まさか、ジークが港に逃げろって『協力者を用意したからそっちに行け』ってことだったのか!


あの愉快犯、やっぱり仕事できるやつだ!


どたどた足音を立てている私たちに気が付いたんだろう。

甲板にいた人が手を振っているのが見えた。


月明かりだからなかなか見えないけど、その人物の声でさらに心が躍る。



「ディアーナ様―!!!!ご無事だったんですねー!!」

「メリー!」



声が聞こえたんだろう、人が甲板に次々現れる。

もうほぼ船の下までついた時、ようやく姿が見えた。


そこには、一か月前にスラムを出たメリー、アテナ、コマチ。

それに……三人よりも大きく手を振っているのは、今はライラと名乗っているエラだった。


大ビンゴ。

私はツイてる!



「お願い乗せてちょうだい!今追われて」



私が説明をしようとしたその時、大きな銃声が鳴った。

その直後、私の隣にいたガーネティアがぐしゃっと転ぶ。


咄嗟に身を縮めるけど、銃声がもう一発。

今度は船体に当たった。


ガーネティアのほうを向けば足から出血してた。

ふくらはぎに掠ったんだろうけど、その様子が痛々しい。

命に別状はないかもしれない……けど、このままここにいたらまた撃たれるかも!


私は考えて、ガーネティアに覆いかぶさるとそのまま海の中へ飛び込んだ。


冬の海は冷たい、通り越して寒い、凍りそう!

一瞬で足から内臓まで凍ったように寒さが襲ってくる。

水の中で必死にガーネティアを抱きしめて顔を出して、船に掴まった。


凍死しそうだけど、無抵抗で銃殺よりマシ!



「さ、さむい。あ、あしが、わたくしの足が」

「悪いわね、あのままいたらもっと狙われてたのよ」

「お前ら何しやがる!!どこのもんだ!」



私たちがいた場所へ飛び降りてきたのはアテナ。

両手に刃物を持って、立ちはだかってくれる。


月明かりの下、雲が晴れてとうとう敵の姿が見えた。

十人ほどの小隊で、手には銃身の長い武器。

そして腕章にあったのは……ステラディアの国旗。



「王女か?」

「まさか、王女を撃った!?」

「でも同じ容姿だし、偽物じゃないか」

「テメエらその前に言うことあんだろ!!なんで二人を撃った!」



アテナに一喝されても、ステラディアの兵はコソコソ話をやめなかった。

たしかにアテナは身長が伸びたけど小柄だし女。


でもお前らより強いんだぞ!?

私たち今なにもできないから見てるしかないけど!


埒が明かないようなその時、どたどたと桟橋に足音が増えた。

こちらに向かって走るような、一人分。


そして「通せ!通してくれ!」と張り上げる声。

覚えのある、彼の声だった。



「皆、止まれ!!ボクの命令に従い、今すぐ持ち場に引き返すんだ!」

「しかし王よ、この怪しい船と女たちは」

「彼女たちはボクの恩人たちだ。君たちは、そんな人たちに銃を向けたんだぞ!命令が聞けないというのか!」



兵士たちと同じような軍服の上に、暖かそうな毛皮を着こんで着ぶくれしたその姿。


あの日、ステラディアで私に何をトチ狂ったのか求婚したルシアンだった。

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