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259話 私の邪魔者、世界の魔女

「だから、予定より突撃を早めるなんて反対よ」

「ですが、一周目の通りに12月の下旬に決戦を起こせば、ちょうどいい邪魔が入りますよ」

「邪魔ってなによ。歴史の修正力のこと?」

「『魔女』です」



シー先生は、真顔で言い切る。

聞き間違いかな?って聞き返しても、魔女っていうのは間違ってないみたい。


でも、もしかして。

私と同じものを先生も感じてるんじゃないの。



「あなたも気づいているでしょう。特定の時期に事態が変わっていること」

「シー先生、気づいていたの?」

「はい。6/22と12/22以降に事態が変わる法則、あなたがたどり着いていないはずがない」

「でもその法則は嘘よ。だって」

「タイタニーからの武器流出を止められなかったから、ですか?」



先回りされた言葉に、つまる。

思い出すのは、コマチの力を借りてステラディアを抜け出した日のこと。

だって、ちゃんと予測立てていったのに、タイタニーの武器庫はもう空で。


予測は間違いだったんだって焦って、コマチを置いてけぼりにしたまま旅立ったこと。

それさえうまく防げてたら、今頃こんなに焦ってなかったのに。



「あれのことを『魔女』って言っているの?そんなの、シー先生には正体がわかっているみたいじゃない」

「はい、私は知っていますよ。本当に現れるだろう条件も、どんな見た目かもね」

「ど、どうして」

「私に一周目の記憶を植え付けたのは、魔女だからです。……その様子だと、あなたはその方法で一周目を知ったわけではないらしい」



やばっ、バレてる。

急いで「魔女のこと教えてちょうだい」と言えば、シー先生はこめかみに人差し指を当てて考え事を始めた。

この人に私がある意味この世界の創造主だなんて言いたくないしね。


シー先生は「私の憶測を多く含みますが」って前置きして語りだした。

私が知らない、原作にない要素を。



「特定の日に邪魔が入る、それ自体は当たっています。ですが彼女の出現条件はおそらくもっと厳密です」

「厳密……?」

「6/22と12/22。この日付から、あなたは何もわかりませんか」



わからないよ。

しいて言えば、半年ってこと?あと22日かな。

あからさまにため息つく先生にムッとするけど、別にそこまで呆れられるもんじゃないでしょ。



「太陽の周期ですよ。一年で最も太陽が昇る日と、太陽が沈むのが早い日と言えばわかりますか」

「……あっ、じゃあもしかして」

「はい。太陽はきっちり日付を覚えているわけではない……日付は、年によっては一日ズレる。あなたがタイタニーの武器流出を止められなかったのはそのせいでしょう」



ファンタジーのセオリー通り過ぎん?

夏至と冬至に合わせて現れる魔女?

どうりでちょっと違うんだ。こんな簡単なことに気が付かなかったなんて!



「わたくし、誕生日なのかとばかり……でも、どうしてそんな面倒なことをするのかしら。日付を指定なんかしたら、邪魔が入るに決まっているわ」

「あなたは魔女に会ったことはないのでわからないでしょうが……彼女は正しく『魔女』です。彼女はどこにでも現れることができ、到底不可能なことを起こして煙のように消える」

「ほんとうに魔法みたいね」

「スラムの不思議な青洞窟、月光国の地下空間、王族の祝福。この世には一周目になかった不思議なことが多いですからね。そんな人もいるんでしょう」

「納得が早すぎないかしら」

「十年以上考えても、発生した理由すらわかりませんからね。なら、回避しつつ利用するまでです」



シー先生がスープを飲み干すと、またもとの布袋にそのまま仕舞った。

片づけるのはいいけど洗いなよ……案外生活能力ない人だな。


もう食べる気力がない私を見て「いらないなら貰ってもいいですか?」っていうから器ごと渡した。

油断ならない人の前だと、食が進まないんだもん。



「わかっているなら、どうして?邪魔なんて入らないほうが楽じゃない」

「彼女の目的はわかりませんが、行動理念は想像がついているのでね。それを逆手に取ればいいだけです」

「へぇ、どんな?」

「この国を最悪の終わりにすることですよ」



ごきゅんと、自分の唾をのむ音がした。

シー先生の顔は真剣で、嘘なんてないみたい。


現実味がない。

「冗談でしょう?」って私が言う前に、シー先生は畳みかけるように語り始める。



「あの女は、おそらく動くのに制限がある。だから、限られた時間内でめちゃくちゃな未来を作ろうとしているんですよ」

「さっきから、なんなの?どうしてそんなにあなたは考えられているのよ」



情報量が多すぎる。

今の数分で、ずっと悩まされてきた『魔女』とやらが解体されてるなんて。

邪魔者の目的も、ここで判明とかあっていいの?


だめ、飲まれるな。

今大事なのは、先生が魔女の邪魔にわざわざ合わせて、戦いを挑もうとしてること。


魔女の思惑になんか乗ったら、原作通りの最悪な未来になるに決まってる。



「嫌。反対よ、だって、そんなのたくさんの人が死ぬ。一周目と変わらない」

「構いません。むしろ王族を解き放つのにちょうどよいものです」

「あなたが何を言ってるのかわからないわ。だって、王族を解放するために、もっといい未来にするために動いていたんでしょう!?」



ハトが豆鉄砲食らうってこんな感じなんだろう。

目を丸くして、口も半開きで、驚いてますって顔。

なんで、そっちがそんな顔するの?


何か間違ったことを言ってる気分になる。

だって、王族を解放するために戦うって、だったら私も勢力が欲しいし、だから協力するって……!



「ああ、そこから齟齬が起こっていたんですね」

「なによ」

「あなたは賢い。でも、この世界の状況判断は私のほうが上手のようだ」



後ろで、ザッと足音がした。

誰なのかを確かめる前に、私は頭への強い衝撃に倒れる。


ぐわんって視界が回って、地面に顔を擦る。

目を閉じる前、私を殴っただろうお向かいのおじさんに、シー先生が「ありがとうございます」って笑っているのが、見えた。

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