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247話 私が判断をするために、話せ

別に、思い浮かばなかったわけじゃない。

でも、どこかで信じたくなかった自分がいるのは確かだった。


確かに、薄々感じてたし。

武力を扱えるような統率力も、私を頂点として動く戦力も。

備えたのは、私だ。



「そんな、あんまりです!ディアーナ様は戦いたくて仲間を集めてたわけじゃ」

「いいのよメリー。シー先生は悪くないわ」

「でも戦いなんて!ディアーナ様は戦争を起こさないようにしてたのに」

「それでも、自然と武装できる集団を作り上げたのはわたくしだもの」



ディオメシアから逃亡して七年。

シー先生とはたくさん手紙のやり取りをした。


私がタイタニ―の武器庫を全部独占したいと望めば、財力のある人を紹介してくれた。

私を保護してくれて、一緒に動いてくれる仲間を紹介してくれた。

その見返り……じゃないけど、シー先生から頼まれたのは一つだけ。


『仲間をたくさん集めてください。あなたの言葉で動いてくれる、信頼の仲間を』


専属使用人の4人と一緒にいた経験から、信頼できる仲間の強さは知ってる。

だから、4人以上とは言わない。

そばにいてくれる仲間を、一人にしないでいてくれる仲間をたくさん欲しがったのは事実。


武装しないで世界を渡る旅をするなんて、まず無理で。

だから、仲間を守れるように武装をさせた。

その一部が、今スラムに逃げ込んできた私の仲間たちだ。



「シー先生、教えて。七年前から『いずれ来るべき時のために仲間をたくさん集めてください』って言ったわね」

「覚えているよ。ライラがディオメシアから逃げた後、そう手紙を出した」

「わたくしはいずれ起こる戦いで傷つく民衆を守るためって、聞いていたのだけれど」

「でも、戦争において守るということは『敵を潰す』ということだからね。君も、わかっているだろう」

「さすがに、ヴァルカンティアとソルディア・ステラディアの枠を埋める存在になるのは、想定外だわ」

「不満でしたら結構です。あなたが参戦しないなら、私たちスラム革命軍が皆殺しになるだけですから」



シー先生は、なんてことないような顔で残酷なことを言う。

そのとき「だからジャックがこの場に居ないんだ」って変に納得した。


ジャックもシー先生も、このスラムの民衆も行き場を無くした市民も。

みんな、たくさん傷ついてディオメシア滅亡戦に挑むつもりなんだ。

少なくとも、シー先生は未来を知ってて、どんなに痛ましい結果になるか知ってて、それでも戦うんだろう。


それをわかってる私の前に、仲が良かったジャックがいたら。

きっと、情に流されてた。


家族同然だった人間が戦うっていうのに「死にたくないから逃げたい」って私は言えない。

たくさん死なないために動いたくせに、その言葉だけは言えない。

臆病で、度胸なしで、言葉に出してしまったら全部の弱さを見せるみたいで。


義理と人情なんてものが私にあるかわからない。


シー先生は、私に『一司令官』として判断させようとしてる……のかもしれない。

同じ未来を知る私に、自分と同じ傷つく覚悟で戦いに飛び込むかどうかを試されてる。


だって、シー先生の目が先生のものだし。

難しい問題を出して、これが解けるかなって見守る大人の目だ。

大人しい顔して、いかれてる。



「汚いぞ、命を盾にして参加させるのかよ」

「アテナさんは現在の革命軍の規模をご存じですか?」

「だいたい、王国軍の1/3だろ」

「ええ、どんなに集めてもその数です。一周目の戦いでも、二周目の今回も」

「その数なのに、まさか正面から戦いを挑むんですか?あなたであればもっと知略を巡らせられるでしょう」

「コマチさんの言う通りですね。ですが、目的達成のためにはそれがいいんです」

「本来無関係のはずの人間を大量に含んだ『軍勢』なんて用意してまでやりたいんですか?戦争ごっこならボードゲームでもできるんですよ、知ってました?」

「そもそも、ライラがうますぎるほどに王女をやったからですよ。一周目の流れを踏襲していれば、無能でただのわがまま王女でいたら、戦うこともディオメシアを追い出されることもなかった」

「でもっ!だからってディアーナ様が戦わなくても」

「『修正力』とは不思議なものでしてね。どこかで誰かが、あるいは何かが『規定通り』にしようと帳尻を合わせてくる。それでも逸脱する場合、ライラが知る未来より悲惨なものになる可能性があるんですよ」



4人の言葉もシー先生を止められない。

なんでここまで強硬姿勢で、正面から戦うの!?

修正力って、それはわかっているけどそれが本当に理由!?


原作ではスラムの民が半分くらい亡くなってたはずだし、王国軍も大打撃の泥仕合。

人もかなり減ったし、お金もないし、信頼できる国ももうない状態で失意の中ディオメシアは滅びるんだ。


それを、わざわざ再現したいなんて彼の気が知れない。

もっと平和的に、血を流さないで丸く収める方法をなんで選ばないの。


(それも、私が勝手に未来を変えようとしたから?)


何がいけなかったんだろう。

シー先生の思惑をどこかで察しながら、言われるままに動いたこと?

シー先生の思惑に逆らいたいって言うくせに、自分で集めたたくさんの仲間たちを解放しなかったこと?

自分勝手に、死にたくないからって、嫌だからって、既定路線を外れようとしたから?


ううん、多分全部違う。

その全部を集めたって、この人がここまで戦いにこだわる理由が見えない。


なら、ここは打って出るしかないでしょ!

何もしないで大人数死なせるより、やりようがある。



「シー先生。わたくし、穴埋めで戦ってもいいわ」

「よかった。決心してくれましたか」

「でも、あなたの言いなりにはなってあげない」



この人は、わからなさすぎる。

背景も、なぜ未来を知ってるのにこのスラムに居続けるのかも。

それに、本物のディアーナ王女を使って大々的に人集めをしてる様子もなかった。

なら、何のために10年もディアーナを守ったの。



「全部、わたくしたちがする質問に偽りなく答えなさい。その内容によっては、協力を惜しまない」

「そう怖い顔をしないでくださいライラ」

「これから仲間が血を流すかもしれないのに、穏やかに笑っていられるのは人間じゃないわ」



シー先生は呆れて「わかりましたよ」と笑った。

もう、この人を先生なんて思えない。


正体不明の革命軍のボス、がお似合いだよ。

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