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232話 ジークを探してあたしがたどり着いた場所は

日が落ちたディオメシアは、少し寒い。

あたしの足は特に速いから、風邪が強く当たると余計寒い。

でもあたしの怒りで体は熱い!



「あの野郎許さねえ……!!」



あたしに酒盛って、メリーとコマチにもやりやがった。

普通に一人で出ていけばいいだろうが!わざわざヤバそうなやつ仕掛けていくんじゃねぇ!!


ここか?って場所はある。

ジークの野郎が勝手に動いて、勝手に情報収集してるだろう場所。

あたしの足なら、もう着く。


貧しい家々、穴だらけの壁。

ディオメシアの法律が微妙に通用しない、スラム特別保護区に。


(つっても、どこにいるんだ?情報集めるならディセルのとこか)


スラムの敷地内に入ったとき、まだ人間の動きは活発だった。

男も女も、大人がかなりの数動いてて、どいつもこいつも手には立派な武器を持ってる。

銃、ナイフ、槍。種類はかなりのもんで、寄せ集め感がすげえ。


なにより、防具はほぼ無いのに、攻撃手段は充分なのが気持ちわりぃ。

ボロボロの布を服にして、手首とか足首、頭のどこかに黄色い布を巻いてる。

間違いねえ、ディセルの組織した革命軍だな。


(だよな。武器流出が起こったってことは、こいつらもいろんな方法で武器『は』入手出来てるってことか)


勘だけでここ来たけど、とんでもない情報だ。

ずっと他国の同行ばっかり追ってるから、ディオメシア国内の革命軍は知らないことばっかりだからな。


そのとき、男が何人か通りかかるのが見えた。

ちょうどいいや、会話からディセルの位置とかわかるか?

適当に陰に隠れてやり過ごしながら、会話を聞く。

本当は、前に入った青い炎の不思議な洞窟に行ってもよかったんだけどな。


あそこは『大事な場所』だけど『情報の集まる場所』じゃない気がする。


だから、狙うはスラムの『現在情報』だ。

ジークもここに来てるなら、適当に情報収集しときゃどっかで会うだろ。



「おい、シー先生は今どこに?」

「ジャックと一緒だったんじゃねぇか?そろそろ俺達も動くしな」

「ついにだな……やっとあの悪王の軍とぶつかるんだ」

「ずっと訓練したんだ。もしかすると王様を倒せるんじゃねぇか!?」

「いやいやそれは言いすぎだろ~」

「でもシー先生が作戦立てて、ジャックが大将だ。負ける気がしねえ!」



おいおい、本気か?

ずっと国民を守る方向だった革命軍の動きが止まってたと思ったのに、もうすぐ挙兵だぁ?

嘘だろ、本当にディアーナの言った通りに近づいてやがる。


あいつの知ってる未来の通りに動いてるってことは、革命軍、他国のディオメシアを攻める連合軍でディオメシアを潰そうとするんだろ?


このままにできるかよ。

戦いになれば、たくさん人間が死ぬ。

そんなのはディアーナじゃなくても、あたしだって嫌だ。


どうにかディセルのとこいかねぇと。

作戦だかなんだかわかんねえけど、情報持ってみんなと合流すれば何か手は打てるかもだし。



「じゃ、俺ちょっとシー先生のとこ行ってくるわ。あの人また夕飯食べるの忘れてるだろうし」

「今日は珍しく、みんなに行き渡るだけ麦が手に入ったしな。さ、それぞれ持ち場戻ろうぜ」



お?ちょうどいい。

話してた男たちの一人がシー先生……ディセルのとこ行くならついて行こう。


にしても、結構な時間スラムにいるのにジークの気配がないな。

気配を消してるならしょうがねえけど、あたしの地獄耳なら聞きなれたあいつの声くらいすぐわかるのに。


もしかして場所間違えたか?

え、あいつここにいない?


……でも、こっちの方が重要そうだしこのまま潜入しとくか……


今度会ったときに頭蓋骨折れるくらい殴ればいいや。


そのままあたしは気配も音も殺して、男を尾行する。

すると、すぐに灯りが漏れる粗末な家にたどり着いた。



「お~いシー先生、あんたまたご飯食べてないだろう?持ってきてやったぞ」

「おや、ありがとうございます。ついジャックと今後の話が盛り上がってしまって」

「でも、俺にはわかんねえことばっかりだよ。シー先生、未来がわかるっていうんだぜ?」

「そりゃあそうだろう!こんなにシー先生は頭がいいんだ、未来位見えるだろ」

「信じてねぇなおじさん」

「ジャック、あまり口外しないでください」



耳を澄ませると、確かにディセルとジャックの声がする。

しかも、しれっと未来が見えるっての否定しなかったぞディセルのやつ。


窘めてるだけか?にしてはジャックの真剣な感じが気になる。


たしか、コマチが言ってたな。

『ディアーナ様はディセルも自分と同じ未来を知っているとお考えです』って。

それで出し抜かれてたらしいけど、嘘だろ本物じゃねぇのこれは。


どうすっかな……

このまま話聞くのがまずい気がしてきた。


ディセルも未来が見えてるなら、このままあたしが盗み聞ぎしてるのまでバレそうじゃねぇか?

とりあえず逃げる準備はしとくか。



「でも信じられるかよ。あの月光国が、潰れるのか?」

「未来の上ではそのはずですよ?今回、地下国家という形をとっているのでどう崩壊するかはわかりませんけどね」



……は???

何言ってんだジャックとディセルのやつ。


待てよ、お前らの目的は王族を潰すことだろ?

なんで月光国の、コマチの国がつぶれる話なんかしてんだよ。


今あそこはディオメシアの国民が逃げ込んでる場所でもあるんだ。

あんなところが、潰れる?

あそこはもう、一つの国なんだぞ!



「ですが、未来で起こる『決定的なこと』は覆すことが難しい」

「でも、ライラはこれまで何度も未来を変えてきたんだろ?なら月光国だって何とかするんじゃ」

「不思議なことに、敵は『邪魔者』だけじゃないんですよ。『修正力』というもの侮れないものがあります。実際にどうなるかは、私にもわかりませんが」

「そんなんでいいのかよ……『軍勢』だってどうなるか分かったもんじゃないのに」

「それは大丈夫だと思います。ライラは、ちゃんと考えられる子ですから」



足が、勝手に動いてた。


ディセルたちの側から、逃げるみたいに。

あの会話を、聞きたくないって考えちまったから?

あたしの理解を超えてたから?

ライラが……あたしたちのディアーナ王女が関与してるかもって、考えたから?


自分で自分の体がわかんねえ。

だけど、話の内容をそのまま記憶したあたしは一直線に、全速力で走ってた。


月光国に。

仲間が、いる場所に。

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