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231話 アテナがいなくなった後、私とコマチちゃんとディアーナ様のことを考えた夜

ちょっとぼうっとしてて、ついつい手の力が抜ける。


がちゃん!

大きな音がして、ハッとした。

床を見ると、緑茶の入っていたカップが割れちゃってた。



「わわっ!ごめんねコマチちゃん。カップ割っちゃった」

「いえ、問題ありません。怪我はありませんか」

「ないけど、まだちょっとお酒が残ってるのかも」

「ジークは戻ってきたら仕置きをしますので」

「コマチちゃんも無理はダメだよ?まだ座ってないと」

「いえ、まだ資料整理が……」



月光国のコマチちゃんの部屋。

ジークさんが持ってきたお酒でフラフラなのに、コマチちゃんはまだなにかしようとしてる。


本棚に行こうとしてるけど、まだ目はぐるぐるしてるのバレバレだよ。

だから、手を握ってソファに隣同士座る。

ミクサさんだって無理しないでって言ってた。

なら、休んだ方がいいんだよ。



「メリー離してください。まだ、考えることがたくさんあるんです」

「さっきまでくらくらしてたんだから、ダメ」

「アテナはさっさとジークを探しに行っているんです。自分も行動せねば」

「アテナは本当に頑丈なんだよ。コマチちゃんがマネしたらだめ」

「ですが、ですが早くしないと」



ずっと、気になってた。

コマチちゃんは、何かをずっと急いでる。

ディアーナ様がいなくなった日から、ここまでいつ寝てるんだろうなってくらい働いてるはず。


昔だったら、私ももっと頑張らなきゃって焦ってた。

だけど、今は違う。

誰かと比べるんじゃなくて、それぞれにできることがある。

そしてその役割をこなすために、無理をしなくてもいいってことを知ってる。


だから、私は逆にコマチちゃんの腕にしがみついた。

頑張り屋さんなのはわかるけど、コマチちゃんが無理に私を引き剥がすことはないから。



「コマチちゃん、何を焦ってるの?何が怖いの?」

「なんでもありません」

「ディアーナ様のことでしょ」

「だったらなんですか」

「教えて。コマチちゃんが考えてること」

「理解されない仮定段階のものを話しても仕方ありませんので」

「それでも聞きたいよ」

「強引ですね。ちゃんと確定したら共有しますから」



コマチちゃんはわかってない。

私は、情報が欲しいんじゃない。


どうにかして、コマチちゃんの助けになりたいんだ。

すっごく頭がいいわけではない私だけど、ちゃんとステラディアのために働けるくらい成長したんだから。



「コマチちゃんの助けになりたい。わからないことがあるなら一緒に考えよう?たくさん説明をお願いしちゃうかもしれないけど、私だって王様の右腕だもん!」

「でも、ディアーナ様の事情はかなり入り組んでいて」

「それはわかりやすく説明してくれると嬉しいな。王宮にいた時みたいに」



コマチちゃんは、一瞬考えてた。

でも、すぐに私に向き直ってくれる。


いつまでもちょっと抜けてるメリーじゃないもん。

国をどうするかの知識は、コマチちゃんと同じくらいあるんだから。



「ディアーナ様は、次の手を打つと言いました。それはきっと、わずかに口にしていた『別の仲間』の存在です」

「それは知ってるよ。ディアーナ様を保護した時に、男の人と女の人を一緒に捕らえたから」

「あのお方はディオメシアを滅亡させないため、既定の運命を捻じ曲げるような所業を行っているのでしょう。そして、そこには『邪魔者』がいる……先の武器大量流出はおそらくそれによるもの」

「そう、だったんだね」

「そして今は10月。次に邪魔ものが何か動くとすれば二か月後……その間に、ディアーナ様は手を打つはずです……ですが、その手立てが自分には全く見当がつきません」



もうちょっとついて行けないけど頷く。

だってここで「どうして?」なんて聞いたらコマチちゃんの邪魔しちゃう気がしたから。


えっと、要はディアーナ様はもう行動を起こすはずなのに、何にもないってことが心配なのかな?

そうだよね、だっていきなりまたいなくなっちゃうんだもん。


でも、う~ん……

私だったらどうするかな。

ルシアン王のそばで、たくさんの人の声を聴いて思ったんだ。


『その人の目線に立って考えてみる』事が大切だって。


だから予想してみよう。私がもしディアーナ様だったら……



「う~ん……ねえコマチちゃん。ディアーナ様ってどうやって武器を独占しようとしてたんだろ」

「オールシー船団の船長と交渉したと言っていました。理念に賛同してもらったと」

「でも、おかしいよ。理念だけで動いていいの?武器をいっぱい移動させるのって人手もいるし、お金も…そうだ、お金だよコマチちゃん!」



すっかり忘れてた。

ディアーナ様って王女様だったし、王宮時代は考えなくていいことだったから。


あのころ、私達はたくさんのものを使って、演出して、いっぱい動いて結果を出してきた。

一番すごかったのは、きっとエラちゃんの死亡を偽装したパレード。

でも、もうディアーナ様は王女様としては動けてないのに!



「メリー?」

「ディアーナ様、今は自由にお金使えないはずだよね?なのに、大口の契約を締結させてる。それに、仲間がって言ってたけど、その人たちを維持するのにもお金がかかるよ」

「自由に使えない?でもディアーナ様は……そうですね、考えて見ればおかしい。逃亡しているディアーナ様が、世界最大のタイタニーの武器庫を空にするというのが無謀なのに」

「それってさ、ディアーナ様の協力者にお金持ちがいるってことない?スラムのディセルさん経由かもしれないし、ディアーナ様が自分で関わった人かもしれないけれど」

「ですが、それがわかっても次の手立てがわかりません。世界の億万長者をしらみつぶしに探るのは時間がかかりすぎますし……」



ううっ、また詰まっちゃった。

ディアーナ様なら、ディアーナ様なら……


緻密に計画立ててそう、でも案外派手にすることもあったし……

裏から手を回す?それもやりそうだけど、なんだかそれだけじゃないような。



「いっそ、お金に物言わせて大群として攻めてくる!とか」

「ディアーナ様がそんなことしますか?そんなに大味なことを」

「うっ、でも、ディアーナ様って裏でいろいろ仕込むけど、陽動は派手にするお方だったし」

「……否定できないのが悔しいですね」

「えへへ、やっぱり難しいね」

「ええ。だからこそ、あの方は不思議な魅力がある」



コマチちゃんの顔がふんわり柔らかくなる。

よかった、力が抜けたみたいだ。


未来のことはわからない。

だから私達にできることは、ディアーナ様のために、ディオメシアを守るために何ができるかを考え続ける事。



「アテナ、ジークさんを捕まえられたかな」

「さぁ?今夜は泊っていきますかメリー」

「うん。明日はステラディアに戻るよ」



ちょっと、惜しいけどね。

近くにいなくても、みんな目的のために頑張れるって七年間でわかったから。


だから、いいの。

何をしているか、みんなの今がわからなくても。

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