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217話 私よりコマチが見えすぎてて怖い件について

心臓止まるかと思った。

コマチと二人きりになった時点で、何かあるのかなとは予想してた。

でも、まさか私が話せてなかった結論を途中式なしで入れてくるとは思わないじゃないか。



「コマチ、あなたどうしてそう思ったの」

「ディアーナ様がおっしゃったのは、七年前まで。その後については時間がなかったせいもありますが、シー先生についてのことは全く言わなかった。あなたらしくもない」



的確なところ刺してくるなコマチ。

確かに、私は自分が「原作者」であること。王女時代にディオメシア滅亡を回避するために布石を打つつもりで多くの対策をしたことは言った。

でも、それだけの情報でその結論に至るの?


いや、その話に入る前の私の行動だって情報として取り込んで予測したのか。

恐ろしいくらいの観察眼。

気味が悪いほどの予測力。


気が付いてほしかったことだ。

だけど、それをこちらの用意ができない時に叩きこまないで欲しい。


そうでしょう?

だってこの事実は、この世界の理解を超えたものなんだから。



「わたくしらしい、なんて不確定なことを、あなたが言うのね」

「はい。臆病に、周到に、あらゆる可能性を考えているのにどこか無鉄砲。大胆不敵でいながら細やかに裏で策略をめぐらせる。あなた様が偽物の王女であろうと、自分がお支えずべき人」

「じゃあ、わたくしが何を懸念しているか分かるとでも?わたくしのことをわかったように言うんですもの、朝飯前ではなくって?」

「大方、シー先生…いえ、スラムの元王族ディセルがディアーナ様を裏切る、あるいはディアーナ様を利用するという可能性に気づいたせいでは?」

「ぐふっ」

「しかもその理由として考えられる最悪があるとすれば……ディセルも未来を知っている、でしょうか」

「ぐっ、げほっ!うっ」



待って、驚きすぎて紅茶が変なとこ入った!

ゲホゲホ咳込むと、すぐにコマチはハンカチを取り出して私に差し出した。

気が利くな……じゃない!


完全図星だ。

しかもその理由まで言い当てる!?

信じられない。そこまで見破るか普通!?



「こ、コマチ‼あなた一体どうしてそんな」

「簡単ですが、未来を知ったうえでディアーナ様がディセルに協力しているのは確定。その話に乗ることでディオメシアの滅亡を防げると考えなければディアーナ様が協力するはずがありません」

「それは合っているけれど。なんでシー先生が未来を知ってるだなんて言ったのかしら?わたくし、そんなそぶりは見せなかったはずよ」

「そうですが、未来を知るディアーナ様が出し抜けるとしたら『同じ未来を詳細に知るもの』だと考えました。ディセルは『王族を潰す』と言っていましたが、どう考えてもディアーナ様と目的が一致しているとは思えませんので」

「そ、それは何も間違っていないのだけれど……というか、シー先生の目的すらわたくし初耳なのだけれど!」

「というのは前提条件でしかないのですが、ここから本題です」

「ここまでが前提ですって!?」



嘘でしょ凄まじくクライマックスだったよ!?

私の一番の懸念だった『味方だと思ってたシー先生が実は未来を知ってて、私はまんまと利用されたかもしれない』っていう問題を前提条件でしかないって?


これ以上の問題があるの?

ディオメシアを救うと思ってた行動が成就しないかもってことで、私はすごく混乱してるのにさらに上の懸念があるとでも?



「コマチには何が見えているのか、わたくしはとても恐ろしいわよ」

「ありがとうございます。ディアーナ様に褒めていただけるとは、恐悦至極」

「それはいいわ。あなたは何を考えているのか、わたくしに教えてくれるかしら。どうせ、二人きりになるまで話さなかったということは、他の3人には話せなかったのでしょう」

「はい。といいますのも、自分の中で推測でしかないのです……これをディアーナ様のお耳に入れていいものかも、ただ混乱を招くだけではないのかと」

「構わないわ、わたくしはすべてを受け入れる。例え、どんなに滑稽でもね」



コマチは未来を知らない、純粋なこの物語世界の人間だ。

普通なら、私やシー先生といった『未来を知ってる人間』以上に使えることはないかもしれない。

だけど、私はそんなに傲慢じゃない。


この世界の人にしか気づけないこと。

その個人だけが見落とさなかった異変。

そういったものは、必ずある。


ヒヤリハットの法則は、過去に日本で社畜してた時から身に染みた概念だからね!

重大なミスの前には、誰も気が付かない……あるいは、誰かが気づいていても見過ごしてしまったミスが300はあるという理論。


コマチのそれが、その300のうちの一つかもしれない。



「では、僭越ながら……ディアーナ様、先ほどのお話の中で2点おかしな箇所があったことを自覚されていますか?」

「わたくしにとってはすべてがおかしなものだから、どれを指しているのかわからないわね」

「では、自分が気になった2点を。一つは『アンナ王妃の死』、もう一つは『エラの到来』です」



それを聞いて思い出した。

その2点に共通する不審点。

ちょうどその時期には深く考えることができなくて、後回しにしてしまった異変。


どちらも、原作通りの出来事だ。

アンナがディアーナの誕生日に死ぬこと、エラがいきなり王宮に訪れたこと。


だけど、決定的に違うことがある。



「アンナ王妃が死なないよう、ディアーナ様は手を回したがなぜか『日付が変わる前に間に合うよう』アンナ王妃はお亡くなりになった。そして、ディアーナ様が予測するより半年も前にエラは王宮の門を叩いた」

「たしかにそれは異変よ。だけれど、わたくしが原作を変えようとした余波があるのかと放置していたのだけれど」

「それは本当にただの『余波』でしょうか?」



コマチの目は、わたくしをずっと見ている。

目を逸らさない、他には目もむけない。

恐ろしいほどの忠誠心、私が偽物王女ってわかってもなお変わらない視線。


だからこそ、彼女の言葉に嘘がないことはわかる。

コマチは、プライドが高いんだ。

私に嘘を言うことは、彼女の中の思いに反する。



「自分はこう考えています。すべて『未来を知るもの』がディアーナ様のディオメシア滅亡回避を『意図的に』邪魔しているのだと」



嘘じゃないからこそ、信じられない。いや、信じたくない。

だってそれは、私の敵がもっといるってことじゃないか。

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