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197話 私の望みを、ここで叶えたい

私はステラディアでディアーナ様を保護できたことを、本当に嬉しく思ってる。

だって、七年も足取りがつかめなかったんだもの。


なのに、ここまでみんなに怒られるとは……

だって、ルシアン王から直々に許可をもらったんだもん。



「あのう…私、ディアーナ様を保護しないほうが良かったかな」

「それはないです。メリーが影響力のあるソルディアで捕まえていなければ、まず会えませんでしたから。昔からディアーナ様は頭脳は大人、動きは子ネズミ、人使いは大しけの海」

「よくディアーナ様を保護できましたね。何をしたんですか?自分も打てる手は打ったつもりなのですが」



ジークさんとコマチちゃんの言葉で思い出すのは、協力を申し出てくれたルシアン王の顔。

あの時の陛下、笑ってたなぁ。

『あの時の借りを返せる』って張り切って指令出してた。



「えっと、ソルディアから出るための交通網を全部独占しました!」

「それ本気か?馬車、船、歩きもだぞ。そんなデカいこと不可能だろ」

「でもルシアン王が『これくらい物理的に止めないと、あの方なら事態を打開してしまいそうだ』っていうから」

「もしかしてあれ全部ステラディアがわざとやったっていうの!?」



私達を無視するように顔を背けてお茶を飲んでいたディアーナ様がこっちを向いてくださった!

この城に閉じ込めるようにしてしまってから、不機嫌だったディアーナ様。

二日間だったけど、前は話しかけたら返事をくれたのに要望くらいでしか口をきいてくれなかったから嬉しくなっちゃう。



「は、はい!あと、国境には兵の皆さんを配置して監視。全部の宿屋に人を配置してディアーナ様が来たらすぐに私が行けるようになってました!」

「メリー、その作戦はとんでもなく労力と人員と金がかかってますね。ソルディアであなたとアテナがディアーナ様を見たその日に捕獲したと聞いていますが」

「それって、ルシアンのやつがとんでもなく権力で早すぎるくらい動いたってことか?」

「ハハッ、一人の女のために国を挙げて動いたってことです?あの男、王子時代からは想像もできないくらい熱烈だったようだ。ディアーナ様、あなたとんでもない男を誑し込んでましたねぇ」

「そんなことは!……なくないなぁ…ルシアン王、本当はディアーナ様に会いたいって言ってましたし」



ディアーナ様を捕まえましたって報告したとき、私言ったんだ。

『ルシアン王も、ディアーナ様にお会いになりますか?仲良かったですよね』

でも、あの方は優しく首を振った。


『ボクが会うのは、あなたたち専属使用人の後でいい』

『でも、陛下がこんなに無茶しなかったら保護だってできてないのに』

『ボクはディアーナ様を敬愛してる。だけど、彼女が真に信頼する人達を差し置いて対面したいと望むほどバカではないんだ』

『バカ、ですか?』

『そうです。ディアーナ様は、権力に物言わせて自分に目を向けさせようとする男は嫌いでしょうから。ボクは、幼馴染でもレオンと同じ轍は踏みません』


ああ言われたけど、本当は早くお話したいと思うんだよね。


アテナ、コマチちゃん、ジークさん。

4人で目を合わせると、不思議と会話は止まった。

あの頃と比べるとみんな背負うものは変わったし、見た目も違う。


アテナは背がちょっと伸びて、ジークさんみたいな見定める目をするようになった。

コマチちゃんは相変わらずクールな中に、責任を持つ人特有の厳しさが混ざった目をする。

ジークさんはエラちゃん逃亡作戦で負った火傷跡が顔にあるけど、目の奥は優しい。


(コマチちゃんから話は聞いた。スラム特別保護区であったことも、全部)


私とアテナがディアーナ様を追ったのに邪魔をしたジャックさんとのこと。

ジャックさんが秘密を抱えてるから、スラム特別保護区まで行ったこと。

そこで、あの日ディアーナ様を逃がしただろうシー先生と会ったこと。

そのシー先生は、死んだはずのディルクレウス王のお兄さんだったこと。

不思議な洞窟で、ディアーナ様そっくりな女の人がいたこと。


……その人が、本物のディアーナ王女だって言われたこと。



「ディアーナ様、私達4人はずっとあなたを探していたんです。こんな形になっちゃいましたけど、こうしてお話できて嬉しいんですよ」

「何度も言っているわよね。わたくしは嬉しくないの」

「それは、ご自身で抱えている『秘密』に起因するものでしょうか」

「コマチは情緒がないですねぇ。もっとどうでもいい話をしてからでもいいのでは?」

「あたしはどーでもいい話より、本当が知りてぇ。ようやっと七年越しの再会だからな」



言わなくてもわかってる。

私たち4人とも、ちゃんとディアーナ様の口から話を聞けるまで引けないこと。


たとえそれが、私達にとって苦しいものであっても。

ディアーナ様から聞けるのなら、その現実から目を背けられない。



「ディアーナ様、お話しましょう?」

「だからわたくしは」

「みんなで、お茶してお話ししましょう!」



今、ピリピリする空気は嫌いだ。

お仕事でこうなるならいいけど、この部屋にいる5人は仲間なんだから。


それに、私達が話をするのはこの形じゃない。

もっと安心できて、話が弾んで、笑顔になれる形を私はよく知ってる。



「七年前みたいに、クッキー焼いたんです。レシピも昔と同じ、ふんわり甘い素朴なものですけど」



この部屋には、ディアーナ様一人で使うには大きいテーブルがある。

何のために運んだのかなんて、こうしてみんなでお茶したいから以外になくって。

本当なら王族と同じテーブルで食事なんて許されない。


だけど、このお茶会はディアーナ様から始められたものだから。


あの日の、あの日常の再演を望んでも、いいよね?

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