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6.仲直り

 それから2日後。レギーナが言っていた通り、クルトとロルフは仲直りをしたようだった。レギーナのところにやってきたクルトは、クラーラに促されて「この前はありがとう。それからごめんなさい」と言って頭を下げた。


 レギーナは「ごめんなさいはいらないわ」と笑ってから、2人と体を使った遊びをした。クルトとクラーラは楽しそうに声をあげて笑い、やがて、一時間経過をする頃疲れて眠ってしまった。そこへ「この前はどうも」とロルフがやって来る。


「クルトと仲直り出来たんですね?」


「うん。というか何もなかったような顔をしていたからな。俺も、あえて何も言わない。わざわざ頭を下げるほどの話じゃなかったからな。それで今回は終わりだ」


 そう言ってロルフはベンチに座った。


「そういえば、給金は出たか?」


 レギーナから毛布を受け取って、疲れて眠ってしまった2人に毛布をかけるロルフ。そうやって彼と会話をするのが当たり前になっているため、ベンチの前には離れの倉庫にあったガーデニングテーブルを置いた。そして、そこでレギーナは茶を振る舞う。


「あっ、はい! 明日出ます。出たら……全部、修道院に送るつもりなんですけど、どうやって送ったらいいでしょうか……?」


「全部?」


「はい! 全部です! だって、ここにいる間のお食事はいただいていますし、ここにいるだけですから、この侍女の制服で十分ですし……わたしには何もいりません」


 そう言ってレギーナは笑う。


「あっ、ロルフさんも、明日お給金が出るんじゃないですか? それとも、支払いの日にちが違うのかしら」


「ああ、そうだな……明日、かな」


 少し曖昧にロルフはそう言って「うん、明日だな」ともう一度繰り返した。


「お金を修道院に送りたいなら、まず休暇をとって……あんた、休暇は?」


「あっ、月に4日お休みをいただいています。しあさってがお休みです」


「そうか。そうしたら……」


 ロルフは丁寧に、金をどう預ければ修道院に届けてくれるのかを説明した。町のギルドで、手紙やら何やらを届ける「届け制度」があるのだと言う。そして、金銭を預ける場合は、差出人のサインと受取人側のサインをもらうらしい。


「そうなんですね。ありがとうございます。わたし、考えなしで来てしまって……恥ずかしいです」


 レギーナはそう言って、頬を赤く染めた。ロルフは小さく笑うと「とはいえ、全部を預けるのはいけないよ」と続ける。


「わかりました。すこーし。本当にすこーしだけ抜いておきます……」


「うん。それで、自分のためのものでも少しは買うといい。この家では、そりゃあ食事も出してもらえるし、衣類も支給されるかもしれないが、だが、それだけだ。たとえばハンカチを買いたいとか、手鏡が欲しいとか、そういった欲求がこの先出ないとも限らないだろ」


「ハンカチ……手鏡……」


 レギーナは少し「それは……」と口ごもった。ロルフが「何だ?」と尋ねると


「わたし、何も持っていないなぁと思って……いえ、全然問題ないんですけどね! そんな風にすぐ思いつくなんて、ロルフさんはすごいですねぇ」


 と明るく笑った。その表情を見てから、ロルフは少し眉をひそめたが、話題を変えた。


「なあ。クルトとクラーラがまた来るのは3日先だけど……明日、ちょっとここに来てもいいか?」


「えっ? 明日? 明日も庭師のお仕事があるんですか?」


「ああ。それで、あんたに渡したいものがあって」


「ええ? なんでしょうか」


「それは明日のお楽しみだ。いいか?」


「はい。大丈夫です」


「わかった。じゃあ、明日も同じぐらいの時間に来る……クルト、クラーラ、起きろ。そろそろ帰るぞ」


 そう言ってロルフは双子に声をかける。2人は眠たそうに「ふわあ」と欠伸をしながらぼんやりと目覚めた。よろよろ動き、しっかりと歩けないようだ。


 それを見たレギーナは、近くの茂みに生えていた草をむしって、口の中に放り込んだ。


「?」


 ロルフは不思議そうにそれを見ていた。と、次の瞬間、レギーナの口の中からピー!と大きな音がなる。


「わあ!」


 クルトとクラーラはその音を聞いて、一瞬で覚醒をした。


「すごい! 何それ!」


「ふふふ、わたしぐらいになると、この葉っぱでもっと大きな音も出せるようになるんだから。これは葉笛と言うんですよ。この木の葉っぱは変わった形をしているので、これだけで音が出せるんです」


 そう言って、葉っぱを数枚摘んでクルトとクラーラに渡すレギーナ。


「他にも色々種類があるので、今度教えてあげますね! 口に含んで良い葉かどうか、まずはそれのお勉強からしましょう!」


 口から出すところをあまり見せるのも何かと思い、そっとエプロンで隠しながら、葉っぱを口から出して捨てるレギーナ。2人は「うわあ!」と大喜びで、元気になって歩き出す。


「ははっ、はは……!」


 ロルフは突然笑い出した。レギーナは「え?」と驚く。


「ああ、いや、凄いな。レギーナは。また色んな事を知っているんだな……」


「ええ~、大したことじゃありませんよ。本当に」


 褒められたものの、いささか恥ずかしい。レギーナは頬を紅潮させて、恥ずかしそうにそう言った。クルトとクラーラはロルフより先に歩き始め「おにいちゃん!」と振り返る。


「それでは、また」


「はい」


 3人を見送りながら、レギーナは「一体明日何をいただけるのかしら?」と疑問に思うばかりだった。


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