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DRAGON・DESPAIR  作者: どらごん
アウグストゥス編
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夢と微笑み

「何故ですか! このままではマルーシャ王国の壊滅は目に見えています。あの最終兵器を使うべきです!」

白い白衣に身を包んだ男は機械音が鳴り響く実験室でもう一人の白衣の男に訴えかけている。

「アレは余りにも危険だ。世界を滅ぼした忌まわしき竜とまではいかない、だが国の二つや三つは簡単に滅ぼすことができる。」

眼鏡を掛けたその男は頭を抱え込みながら無数に積み上げられた資料を見ていた。

「帝国軍など滅んで当然です! 見たでしょう? 国々を滅ぼす為に女子供関係なく虐殺していくその様を! 帝国軍に我々マルーシャ王国が滅ぼされて良いのですか!」

「では誰がアレの生け贄になる!? 魂を持ち合わせてない人工の魔物。制御するためには人が必要だ。だがそれは、人が人でなくなるということ。あの醜い、汚ならしい魔物に成り果てるという事なんだぞ! これじゃあ、帝国軍の七人の騎士と何一つ変わらないじゃないか!」

痺れを切らしたのか、白衣の男が足音を強く鳴らしながら眼鏡の男に詰め寄った。胸ぐらを掴み、睨み付ける。眼鏡の男は今にも泣き出しそうな表情だ。

「私は愛する人も、愛される人もいない。ならば醜くても、汚らわしくても、マルーシャの為に私はこの身すら差し出しましょう! 」

「ま、まさか!? き、君が実験体になろうと言うのか!」

「実験じゃない、私達の希望だ! この身体・・・」


ーーヤツにくれてやりましょう。





真っ白なシーツの中で目が覚めた。またこの夢だ。身体中に纏わりつく汗。額に滲む汗を拭うと、ゆっくりと重い身体を起こした。ベットに前屈みで座る。

ヤツにくれてやりましょう。

この言葉の意味は何だ? あの男はまさしく自分なのだ。ヤツにくれる。自分は何を取り込んでいるのか。自分は本当は何者なのだろうか。

頭の中をぐるぐると回る違和感に嫌悪感すら覚える。いや、自分自身にすら覚えるのだ。悪魔のような翼を生やし、悪魔のように醜い腕。だが自分は悪魔よりもっと恐ろしい存在なのだ。

「私は、誰だ?」

この空間に、その質問に答える者など誰もいなかった。



「ダンテ騎士兵」

廊下を歩くダンテが振り向くと、そこにはセティが立っていた。

「黒い竜と接触したそうですね?」

「君は・・・?」

「申し遅れました。七人騎士隊のセティ騎士兵です。貴方が接触した黒い竜。それは五年前に帝国軍を裏切ったハイネという男の契約獣、同時に世界を滅ぼした忌まわしき竜の肉体シヴァです。ヤツは今何処に?」

ダンテは眉をひそめる。

「ハイネ殺害は私の任務。セティ騎士兵、君は魔女ノーリアの護衛が任務のはずだが?」

「私はハイネに裏切られました。何としても、この手で奴を殺したいのです!」

憎しみ、いや、嫉妬か。ハイネを殺すために生きているこの青年。だがそれはダンテが行うこと、それに対して嫉妬しているのだ。

「貴方がダンテだからですか! ダンテだからハイネ殺害を命じられたのですか! 私はこの五年間、ハイネをずっと追っています。しかし、何故ですか? いきなり現れた貴方に私の目標、いえ、生きるための全てを奪われたのですよ? 私が今此処で帝国軍に属し、生きているのはハイネを殺すためなのです!」

セティは物凄い形相でダンテに詰め寄る。ダンテはじっと見ていた。

「何か喋ってくださいよ、黙ってるだけですか?」

「君の覚悟はよくわかる。だが私にも、記憶を取り戻したい望みがある。記憶を取り戻す為にハイネを殺す覚悟がある。ハイネは私が殺す。もし君が邪魔をするのなら、私は君を容赦なく殺す」

ダンテはセティを睨み付けると、踵を返して歩き出した。その背後を見るセティは強い口調で言い放った。

「僕と貴方、どちらが先にハイネを殺すのか! これは僕と貴方との戦いです!」

「・・・いいだろう」

ダンテは振り向かず、そう答えた。



「それは本当なのですか? レイドール騎士兵長」

「ガタラマストスの魔女がそう言っていました。ジュリアール総司令官、仮にその話が本当だとすると、世界は皆救世主の書によって騙されていたということになります」

会議室でレイドール、そしてジュリアールが何やら話している。

「救世主アレストにより世界は救われた。だがそれは改変された架空の物語で、我々はそれを信じていた」

「そしてそのアギトと呼ばれる存在が忌まわしき竜を封印し、そして三百年後の今になって忌まわしき竜の魂を解放したというわけですか。妄想? 幻想? もはや偽りの真実。世界は、三人の魔女に騙され続けていた。ほんと、憎い女達だ」

世界の間違いを知ったジュリアールは不気味に笑みを浮かべた。くくくっ、というひきつった笑い声を上げながら左腕をそっと持ち上げた。

「人が信じている忌まわしき過去が偽りで固められていようと、この左腕が失われた事実は覆らない」

「その腕は、確かマルーシャ事件の・・・」

「そうだ。あの日、あの時を忘れはしない・・・。私はね、忌まわしき竜がどうとか、救世主がどうとかそんな事はどうでもいいのですよ」

レイドールの顔にゆっくりと左腕を近付ける。握り締めた拳の向こうのジュリアールの顔は酷く歪んでいた。

「私の目的はただ一つ、逃亡者ハイネの殺害でも、共和軍の殲滅でもない。私の左腕を奪ったアリーシャル・・・いえ、アルフレッドをこの手で殺すことです」

ジュリアールの左腕がレイドールの首を襲った。呻き声を上げるレイドール。金属製の義手がレイドールの首にめり込んでいる。

「私はアリーシャルを殺したいんですよ! だから貴方達はとっととハイネを捕まえて殺してくださいよ! 貴方達が不甲斐ないから私はわざわざダンテを甦らせて、ハイネ殺害を行わせているのです。だったらせめて共和軍の侵攻ぐらい抑えたらどうですか? 魔女の狂言などに耳を傾けてる暇があったら、とっととその魔女を殺してくださいよ!」

投げるようにしてレイドールを突き飛ばすと、ジュリアールは席から立ち上がった。こつこつという音を立てながらレイドールに近付き、腰の剣を首に向ける。レイドールは酷く荒い息を立てながら汗を滲ませている。

「役に立てないのなら殺しますよ? 貴方は帝国軍の精鋭部隊、七人騎士隊の長でしょ? 最近、新入りのセティ騎士兵が随分と身勝手な振る舞いをしていると聞きました。彼は貴方の監視下でしょ? きっちり教育していただかないと困ります。世界の偽りの件はガナム騎士団長より指示があるまで公言しないように。以上」

そう言うと、ジュリアールは剣を鞘に納め、席につく。混乱したまま座り込むレイドールに目を向けると、不可思議そうに首を傾げる。

「どうしたのですか? 話は終わりましたよ? いつまでもそこにいるのですか? そこにいられると目障りなんですよ?」

ジュリアールはそっと微笑んだ。

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