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DRAGON・DESPAIR  作者: どらごん
竜の子編
21/34

行こう、シヴァと共に

竜の子編の最終話です。今後、どんな展開になっていくのか楽しみにしてください。ぜひD・Dをよろしくお願いします!

レイナードの元に報告が入ったのは監視兵からでもなく、自らの耳への外的情報であった。爆発音が鳴り響き、目の前に広がる焔は揺らめき煙を上げる。

 城が燃えている。熱風を吹き出しながら。

「お下がりください、レイナード騎士団総監。此処は我々が!」

 レイドールが兵を連れてやってきた。

「どうなっているレイドール騎士兵長! 現状報告は!」

「私も今此処に来たばかりです、この兵も皆!」

 状況を理解していないのは皆同じだった。城で起こった謎の爆発は城の中を混乱に陥れた。真黒な煙を吹き出しながら城の塔が燃えている。

「爆発したのは城の中心部。本部塔の最上階です!」

 城の中から飛び出してきた一人の騎士は詰まる息を押し出した。

「最上階は国王陛下の自室だぞ!」

 レイドールは力一杯に叫んだ。レイナードがその後に続いた。

「前進せよ、国王陛下を救出するのだ!」

 レイドールとレイナードを筆頭に数十人の騎士が城の中へと侵入した。どころかしこも火の海だ。肌に触れるだけで感じ取れる熱気の中、騎士達は遥か上の階の国王陛下の寝室へと駆けている。

「他の騎士隊は!」

「契約獣の封印が解かれていました、今は契約獣と戦っています!」

「なんだって!?」

 普通、七人騎士隊は人を超えた力を保有している。それは自らより強い魔物と契約しているからなのである。契約した魔物は契約者に服従しなければならない、たが契約が解かれたのなら…

「しかし、私とハイネは違います! 私は先ほど任より解かれてきたので。ハイネは血の契約を交わしているものだと…」

「ハイネとシヴァの契約、魔女のナタリアは不安定なものだと言った。あの竜との契約が解かれる前に見つけ出せ、ハイネを失う事は戦力の大部分を失うのと同等だ」

 レイナードの唇は強く噛み締められていた。

 無数の螺旋階段を上り、迷路のように入り組んだ階段を駆ける。装飾の施された城内は無惨にも燃え、辺り一面には熱風が広がっている。レイナードは思わず顔を覆った。

 ようやく辿り着いた王室の扉の前でレイナードは大きく叫ぶ。

「国王陛下! 国王陛下!」

扉を強く叩くが返事がない。

数名の後ろの騎士がレイナードを止め、扉を蹴破った。勢いよく吹き飛んだ扉は音を立てて床に倒れ込む。レイナードが先陣を切り、部屋に入ると其処には予期しない光景が広がっていた。その場にいたレイナードを含め、騎士達は皆硬直し、その場に立ち竦んでしまう。

「お、お前…、一体どうなっている…」

レイナードは酷く困惑していた。震えにも似た声で問いかける。

火の海と化した王室の中にいるのは王ではない。本来、王室に入ることが許されるのは王とその側近のみ。しかし、この場にいたのは誰しもが予期していない人物であった。

背を向けるその人物はゆっくりと首だけを軽く振り向かせる。その横顔は何一つとして困惑の表情も、高揚の表情も浮かべていない。右腕に握られた剣は紅く、鮮血を帯びている。左腕に握られた肉の塊は、一定のリズムを持ち、鼓動を刻む。心臓だ。その片割れで倒れているのはこの部屋の主であり、帝国軍の王である。

「貴様、何故!!」

 レイドールは素早く鎌を引き抜き、飛び掛かる。右腕の剣で受けると部屋中に甲高い金属音が響き渡った。回し込むようにしてその者の足がレイドールの腹部を襲う。吹き飛ばされたレイドールは床に思い切り叩き付けられた。腹部を蹴られた痛みが端正な顔を歪ませる。

 ゆっくりと歩み寄るその者の瞳は紅に染まっている。

「何故だ! 何故、王を殺した!」


――ハイネッ!!


 赤茶色の髪が焔によって紅に染まっている。体中に浴びた血。顔にまで飛沫がかかったのだろう、頬をこれまた紅に染めている。

「ハイネェェェッ!!」

 レイナード達の背後から部屋に飛び込んだ一人の騎士。アゼザルである。大剣を引き抜いたアゼザルは満面の笑みで血に染まったハイネに飛び掛かった。

「俺はお前と戦ってみたかった、殺しあいたかったんだよぉぉぉっ!」

 巨大な剣はハイネの持つ片手剣を簡単に凌駕していた。振り回す大剣が一寸の狂いもなくハイネの首元に襲い掛かる。受けるのではなく受け流すハイネ。

「魔女の心臓を片手に俺と戦おうって! ひぃー、舐めてんじゃねえぞ、なあっ!」

 狂ったように叫ぶアゼザル、一方ハイネはまるで何もないかのようにまっさらな表情だ。冷静に、ただ単純にアゼザルの猛攻を受け流しているのだ。

「竜の子だから俺達と違うって? 自分は特別だって? そんな事どうでも良いんだよ! 俺はなぁ、お前が殺戮の虜になっているのが羨ましいんだよ、憎いんだよ! 俺は殺したい、殺して殺して殺しまくってさぁ! 初めて人を殺したのは餓鬼の頃だ。五月蠅い母親と生意気な父親をなぁ! あの時の感触が忘れられない、殺すって最高だよなぁ! だから騎士団に入隊した。なぁ、俺と殺し合おうぜ? なっ?」

 アゼザルの大剣が空気を切り裂いた。自らの首筋に襲い掛かるその大剣をハイネは剣で受けた。重い衝撃が全身に伝わる。アゼザルは首を傾げた。これ程にも重い大剣の衝撃を片手で受けられる筈がないのだ。

歯を食いしばり全身から溢れ出す殺気。ハイネの右腕の装甲が弾け飛んだ。其処には黒い鱗のある、鉤爪のように鋭い爪を持ち合わせた竜のような右腕があった。

「心も身体もやっぱり竜じゃないか! 良いね、良いねぇえっ!!」

 アゼザルの笑みは更に増した。大剣を薙ぎ払い、ハイネとの間合いを取る。

「お前を殺したい、だからよぉ、俺だって変ってるんだよぉ!!」

 アゼザルの身体を黒い煙が包み込んだ。真っ黒な煙はやがて形となってアゼザルの肉体を蝕んでいく。血管が浮き上がり、犬歯を剥く。アゼザルの両腕が禍々しい黒色の腕へと変っていく。背中を突き破るように出たのは二枚の翼である。顔は醜く歪み、黒い物体が体中に寄生するかのように取りついているのだ。

「お前が契約していた悪魔だよぉ。俺は今までの契約獣なんてどうでも良い。俺はお前を殺す…」


――ハイネェッ!!


 アゼザルは翼を羽ばたかせ飛び掛かった。ハイネの瞳が細く、鋭く輝いた。剣と剣がぶつかり合い、衝撃波を生む。部屋全体、城全体が大きく揺れたのだ。レイドールは思わずその光景に見とれてしまった。

 人同士の戦いではない、これは化け物の争いだ。目の前で繰り広げられるのは人を超えた殺し合いなのだ。

 アゼザルが大剣を振り上げた。ハイネはそれを見逃さなかった。駆けだした勢いを剣に込めて勢いよく踏み込む。アゼザルの腹部に衝撃が走る。血飛沫が吹き出され、噴き出た血が宙に舞う。アゼザルの手から振り上げた剣が落ちた。握りこまれたハイネの剣に更に力を込めた。紅の血が口からも溢れ出る。

「あぁ、いい。これだ、これなんだよ…」

 アゼザルは微笑みのように優しい笑みを浮かべている。名残惜しむかのように懐に入っているハイネを見ると、また口を開いた。

「気持ちがいい、満たされている。これが俺の求めてたものだ」

 勢いよく剣を引き抜いた。血と共に流れ出る内臓が床に飛び散った。がくがくと震える膝で立ち尽くすアゼザルは満足げに微笑みを浮かべると、床に崩れ落ちた。

 レイナードは開いた口が塞がらない。それ程の衝撃がこの場の全員に押し寄せているのだ。

『満たされた、欲望の果てにある死』

 王室のテラスから顔を覗かせるシヴァがそう呟く。身体の硬直が一瞬で消える。レイナードは叫んだ。

「やめろ、やめるんだハイネ! お前は、お前は忌まわしき竜と共に行くのか!!」

 今まで黙っていたハイネがようやく口を開いた。

「行こう、シヴァと共に…」

 そう言い残すとハイネはテラスへと駆けだす。シヴァが身を伏せ、ハイネが背に飛び乗った。シヴァは巨大な翼を羽ばたかせ、城から飛び上る。巨大な咆哮が城に響き渡る。紅い鮮血を身に纏った竜の子は、黒き竜と共に夜の空へ消えていく。その姿を見届けることしかできないレイナードは何一つ残っていない王室で一人、立ち竦んでいた。










夜 眠る夢


夢 紅い目の


囁くのは遠い昔の記憶


別つ記憶は血潮の中


黒い竜は言う 夜は眠ることはないと





竜の子編 完結

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