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DRAGON・DESPAIR  作者: どらごん
竜の子編
20/34

裏切り者

この中に裏切り者がいる。そんな疑心暗鬼な心持ちなのは言うまでもない。廊下を歩く騎士、街を歩く庶民、王の側近に王。全ての者が信用できないのだ。

「ハイネさん」

突然背後から話し掛けられた。振り向いた先に立つのは小さな少年、セティである。

「昨日の戦い、お疲れさまでした」

「ん、あぁ」

セティ、この少年はまずあり得ない。セティのいたあの村は帝国軍の範囲内。共和軍の手助けをするメリットは何もないのだ。寧ろ、帝国軍のメリットしかない。

「あ、レイナードさんが話があるそうです」

「レイナードが? 俺を呼んでいたのか?」

「はい、管理室にいるそうですよ。あの、ハイネさん」

セティは何か言いたげな表情だ。

「僕、ハイネさんみたいに強くなりたいです!」

不意を突かれてきょとんとした。拳を握りしめ、じっとハイネを見つめている。

「昨日のハイネさんのハイネさん、どんどん共和軍を倒して、どうやったらそんなに強くなれるんですか?」

「・・・、俺は人じゃない。人じゃないんだ。お前は俺に憧れちゃ駄目だ」

ハイネはセティの頭に軽く手を当てる。

「レイナードに剣術を学べ。近道をしたら足を踏み外すぞ?」

「ハイネさんは、足を踏み外したんですか?」

セティの質問にハイネの顔が曇った。一度口を開いたが口を閉じてしまう。意を決して重い口を開いた。

「最初から、人じゃないさ」

ハイネの表情は何処か悲しげだ。



「レイナード、呼んだか?」

「戦況報告がまだだ、ハイネ」

無数の書類の中でレイナードは資料を読みながらそう言った。ハイネはおどけるような口を開く。

「昨日の魔物の襲撃は共和軍のものではありません。これでどうかな?」

「一体誰の仕業だ?」

大きく息を吸うハイネ。

「ガタラマストスの魔女、奴が放った魔女だよ」

「ガタラマストス? 共和軍じゃないのか?」

そうだ、と言いながらハイネはづかづかとレイナードに近付く。そうして机を叩く。

「魔女がこの城を襲った理由はただ一つ。騎士団長と騎士団の不在を狙って魔物を差し向けたんだ。南の防衛線も陥落、以前から知ってなければこのタイミングでの進行はおかしい。魔女は言った、騎士団の不在を教えたのは・・・」


ーー帝国軍内部の者だって。


今まで書類を捲っていたレイナードの手が止まった。顔を上げたその表情は酷く困惑している。

「本当か?」

「このヴァリシュリア城の中に裏切り者がいる。怪しいのなんてたくさんいる。誰も信用なんてできないだろ?」

「待て待て待て、本当に本当なのか? それが事実なら、大変なことだ。早急に議会を開いて・・・」

「あんたは元騎士団長だろ? そうなればどうなるかくらいわかるだろう?」

くくくっ、という笑い声が頭の中で響く。

(ここにきて疑心暗鬼か? 仲間内で滅びを狙うとは、頭の切れる裏切り者か)

ハイネは無視してレイナードに一言。

「裏切り者を見つけてくれ」

そう言うと、踵をかえした。何処へ行くと言うレイナードの問いに答えることなく、歩き出した。

(共和軍と帝国軍の差は最早歴然としている。貴様が共和軍を滅ぼすために帝国軍に入ったのも無駄足だったか)

「だったら俺が一人でやってやる」

ハイネの顔が醜く歪んだ。

「シヴァ、東の塔で待っていろ」

(何をする?)

ハイネ黙って答えない。

そしてその晩、城にさらなる衝撃が走った。

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