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DRAGON・DESPAIR  作者: どらごん
竜の子編
19/34

平和の形

「ほんとに、使えない子だね」

少女の顔を叩きながら、女はそう言った。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

小さな瞳に涙を滲ませながら、少女は掠れるような小さな声で必死に謝り続ける。それが気に食わないのか、女は更に顔を叩いた。

「いい子になるから、何でも言うことを聞くから・・・」


ーーお母さん。


雨に濡れた大地は酷い泥濘。打ち付ける雨は少女の体を濡らし続けた。だがそんなことはどうでもいい。涙を流し、鼻水を垂らし、少女はただ歩き続けた。


行く当て何て無い。帰る場所何て無い。どんなに歩き続けても、どこまでも行っても、誰も自分など待ってはいないのだ。だが、少女は歩くしかなかった。

『一人か?』

真っ暗な洞穴から聞こえる低い声。声の主は語りかけるように声を発する。

『俺も、一人だ』

少女はゆっくりと顔を上げた。初めて優しく話しかけられた。その者が何者なのかはわからない、ただ自分と同じく孤独なのだ。

少女は勇気を振り絞った。掠れる声に力を込めて、精一杯の力を振り絞る。

「貴方は、一人なの?」

恐怖心と好奇心が混ざりあった震える声。洞窟の中で響き渡った少女の声に反応した低い声。

『ずっと、ずっと一人だ』

「なら、一緒。私と一緒」

少女はゆっくりと手を差し伸べる。

「貴方は、だぁれ?」

声は言う。


ーー俺は、ゲオルク。





「本来、イリス様が人前に出ることはまず有りません。いや、有ってはならない事なのです」

アルフレッドと呼ばれたその男は神妙な面持ちだ。白い石で造られた部屋は意外にも広い。一人分のベッドに机、テーブルにタンス。部屋の中央に置かれたその異質な空間でアルフレッドは言ったのだ。椅子に座ったイリスはつまらなさそうな表情で机の上の鳥の玩具を指でつつくように弄っている。

「どういう事です?」

フェレスの問いに、アルフレッドは固い表情のまま答えた。

「イリス様は我々にとって、いや、世界にとって必要不可欠な存在です。イリス様が世界の行く末を握っていると言っても過言ではありません」

強い口調で断言するアルフレッド。イリスの前に立つフェレスとナタリア。世界の行く末を握っているイリス本人は全くと言っていいほど興味がないようだ。

「もう良いでしょ、 アルフレッド? 私は籠の中の鳥。空も飛べない、不自由な鳥」

「ならばお前が、アレストの子孫なのか?」

突如ナタリアが口を開いた。

「えぇ、イリス様はアレスト様の直系。アレスト様の血を引く者です」

それに反応するアルフレッド。

「ナタリアさんは私に質問しているのですよ? 勿論、私は救世主アレスト様の血を引く者です。だからこのような部屋に幽閉されているのです」

「幽閉とは、そんな・・・」

言葉に詰まるアルフレッドを尻目にイリスは更に続けた。

「私だって自由に歩き回って、自由に生活したいのです」

イリスは不意に立ち上がり、フェレスに詰め寄った。驚いたフェレスを気にもせず、イリスはづかづかと顔を近付けた。

「外の世界は綺麗なモノなのですか? 私は外の世界を見てみたいのです!」

目を輝かせるイリスはまるで子供のようにはしゃいでいるのだ。それを焦り、止めるアルフレッド。二人の異常なやりとりを見るフェレスは客観的に眺めるナタリアの耳元で囁いた。

「あのお姫さん、何かおかしく無いですか?」

「何も知らないのか?」

ナタリアは鼻で笑った。

「あいつらの属するアレスト教は、三百年前に忌まわしき竜を封印した救世主アレストを拝めている。そしてアレスト教は自らの宗教を広めるのが主な活動じゃあない。アレスト教の真の目的は・・・」


ーー世界の崩壊を防ぐことだ。


ナタリアは首を傾げた。

「世界の崩壊?」

「そうだ。忌まわしき竜は三百年前に封印した。魂は契約者と赤子へ。肉体はシヴァとなり城に封印。だが誰しもが持つ、永遠の疑問。それは・・・」


ーー忌まわしき竜は何処から来たのか?


「それは、アレストすらわからない謎のはず。教団はそれを知っているのか!」

声を荒げたフェレスの顔は困惑の表情も混ざりあった複雑な顔だ。焦りともとれるフェレスの顔を嘲るように見ると、ナタリアは更に続けた。

「救世主が現れて忌まわしき竜を封印。簡単なおとぎ話だと思ったのなら大間違いだ。問題解決のためにはまず問題の発端を見つけなければならい。忌まわしき竜が現れた、それが問題の発端」

ナタリアは突然、フェレスの目を見つめた。


ーー忌まわしき竜は、異なる世界の存在だ。


「そんな、まさか・・・」

言葉が上手く出ない。困惑するのも無理はない。三百年間、信じてきた災厄の内容に自分が知らない真実が含まれていたのだ。

「異なる世界からの産物。竜を導いたのは勿論、契約者だ。その召喚に開かれた扉を封じているのがこのアレスト教だ。そしてそこの娘イリスはアレストの子孫、異なる世界との扉を封じる鍵となる存在だ」

わかるかフェレス、と馬鹿にした口調だ。

「異世界の扉を開ければ無数の竜が飛来する、それを閉じてる娘が世界平和の形なんだよ」


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