嫌われ者
帝国軍極東方面要塞。巨大な塀で囲まれた城のような要塞は要塞の名に相応しい程の警備、それに戦力を保有している。
荒れ地に聳えるその要塞の薄暗い廊下には足音が響き渡る。数人の男達が早足で廊下を突き進み、ある部屋に辿り着く。扉の前には二人の兵士が立っている。その二人の兵士の忠告を無視して蹴り飛ばすように乱暴に扉を開けた。
「ジュリアール、貴様!」
「此処では私達の命令を聞いてもらうと言ったはずですが?」
数十人の人が入れるほどの巨大な部屋の中央にぽつりと置かれている高価な装飾を施された机。
蛇のように鋭い切れ目、撫で付けた金の髪、蝋人形のように白い肌をしたその男は脚を組み、片方の肘を机に付け男達を見た。
「それにこの部屋の立ち入り許可も出していませんが、ガナム騎士団?」
嘲笑うかのようにガナムを見るその蛇のような男は机から立とうとはしない。
「何故我々が凍結されなければならない? これは王の命令だ!」
「此処は私の庭ですよ? 汚い靴で歩き回られてはたまりません」
騎士団とはまた違った青を基調とした制服に身を包んだその男は指を組み、汚いものでも見るかのように目を細めた。
「良いですか? この極東方面要塞では私の指揮下に置かれているのです、勝手な行動は自粛して貰いたい」
「共和軍が魔物を増やしている今、帝国軍には兵士が必要だ。貴様こそ、身勝手な行動よせ!」
不満げに唇をねじ曲げ、腰の剣を弄る男。
「ヴァリシュリア城に兵を送るのも私の権限によるものです。其れをお忘れなく」
視線をずらした方向に立ち並ぶ兵士達がガナムら数人の騎士を囲んだ。
「ジュリアール貴様!」
「ガナム騎士団長とそのお連れ達を部屋に案内してくれたまえ」
腕を捕まれたガナム。怒りを露にしている。
「王の命令に背くのか!」
「兵は送りますよ。ただ此処での上官は私です、王じゃない」
ジュリアールと呼ばれたその男は蛇のように嫌らしい笑みを浮かべた。
「ハイネといい、フェレスといい。どいつもこいつも命令と言うものをまるで解ってない!」
赤い絨毯が敷き詰められた大部屋にはハイネとフェレスを除く七人騎士隊が揃っている。不安そうに周囲を見渡して、今にも泣き出しそうなユリエ。
レイドールは一度目が合ったがこれを無視してさらに続けた。
「たかが竜と契約しているだけで、私達にも契約獣はいるというのに」
「確かに、俺も同感だ。 ハイネの奴はどうも気に食わねぇ」
机に脚を上げたまま、アゼザルはだらしなくそう言った。
「奴が竜の子だからか? レイナードの野郎が庇ってたのもそうだ。そうだろ、アイム?」
アゼザルに問い掛けられた一人の女。黒く縮れた長い髪の間から見え隠れする嫌に白い肌。窪んだ目の回りは黒く、青白い顔を更に強調しているようだ。
「わ、わ、私は。その・・・」
挙動不審なその女は仕切りに目を動かすが、決して合わせようとはしない。伏せた顔のまま、顔を強張らせている。
「何だよ、また何時ものか? ほんと死んでるな、お前」
アゼザルは汚ならしい笑い声を上げる。曖昧な笑みを浮かべたアイムと呼ばれたその女は再び黙り混んでしまった。
「教団に向かったフェレスはどうなんだ? 彼奴も竜と契約しているのか?」
アゼザルは冗談半分でそう言うと、レイドールを横目で見る。唇を噛み締め、怒りを露にしたレイドールは固く拳を握り締めていた。




