良からぬ行動
「僕の名前はセティと言います」
血と泥で汚れた服を脱ぎながら少年はそう言った。肩までの金の髪も、少女のように白い肌も、泥と血で汚れている。城の脱衣場でせティと名乗るその少年は徐に口を開いた。腕を組み、壁にもたれ掛かるハイネは横目でせティを見る。
「俺の名前はもう知っているな?」
「ハイネさんでしょ? あのドラゴンとバハムートが・・・」
「あれはバハムートじゃない、死霊だ」
「死霊?」
上着を脱ぎながらセティは首を傾げる。
「あぁ、本来バハムートは人とは契約しない。魔物の中でも上位に位置するバハムートは人と契約するメリットがないからだ。あのバハムートは死霊の集合体、怨念の塊だ。バハムートに擬態した死霊とは何時契約した?」
「共和軍が村に攻めてきて、僕達は村の奥に逃げました。でも共和軍が村を壊して、村人もみんな殺された。そして洞窟の奥から声が聞こえました」
セティが顔を上げた。
「お願いです、僕を騎士団に入れてください!」
ハイネは鋭い眼差しでセティを見る。
「身体を洗え、そうしたらお前を宿舎に連れていく」
「宿舎へ?」
「俺に剣術を教えてくれた奴だ。今は現
役を引退しているけど、腕は確か。それに彼奴は元騎士団長。影響力はあるさ」
城の裏にある騎士団宿舎。細長い建物は二階建てで、真っ直ぐの廊下の左右に部屋がある。その一号棟の建物の一番奥にある管理室にレイナードはいるのだ。
部屋の扉を軽くノックし、開けた。綺麗に整理された部屋の中央にある机。その席にレイナードは座っていた。
「その子が例の?」
「あぁ、唯一の生き残りだ」
「なるほど」
セティは一歩前に踏み出した。
「村のみんな、父さんと母さんの為にも!」
「復讐か」
「いけませんか? 何の抵抗もしない僕らを襲ったんです、当たり前でしょ!」
「・・・。わかった、良いだろう。事情は聞いてある。偶然にもこの宿舎には空きがあるから其処を使うといい。まずは身体を休めろ」
レイナードは優しくセティに話し掛けると軽く頭を撫でた。そして立ち上がり、扉に手を掛けた。
「案内しよう、君の部屋に」
セティを部屋に案内し、一通りの説明を終えると既に日は沈んでいた。管理室に戻った二人。先程までの微笑みは消え失せ、レイナードは腕を組み鋭い口調になる。
「ようやくお前と話ができるなハイネ」
「折り入って何だ?」
「お前の行動に騎士隊の奴等は不満を持っている。確かにお前は竜と契約して特別だ。だからと言って身勝手な振る舞いをしていい訳じゃない」
「命令に従っているだけじゃないか」
「竜で飛べとは行ってない」
ゆっくりと瞼を閉じ、レイナードは固く口を閉じた。反論しようと口を開いたがハイネの口からは何も出なかった。
「わかったよ。セティを頼む、俺は部屋に戻る」
おどけたように手を降り、扉に手を掛けた。部屋を後にしようとしたハイネの背中にレイナードは重い声を掛けた。
「今此処で騎士隊の結束を崩すわけにはいかない。わかってくれ」
一度止まったが、ハイネは何も言わずに部屋から出ていった。一人残されたレイナードは深い溜め息を着いた。




