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DRAGON・DESPAIR  作者: どらごん
竜の子編
13/34

復讐のためには

竜のように鋭い牙を剥きながら、バハムートは笑みを浮かべているようだ。黒い煙のような下半身はセティと呼ばれる少年の影に繋がっている。

『竜の子であろうとバハムートに挑むのはあまりにも無謀だ』

心に訴えかけるシヴァの声。ハイネは無視し、腰に刺さる剣の柄に手をかけた。ハイネに逃げる気などなかったのだ。ゆっくりと剣を引き抜き、身体の前で構えると、バハムートが笑い声を上げる。まるで嘲笑うかのように。

『我の忠告を無視するのか? 貴様の命は我のモノでもあるのだぞ?』

警告するシヴァの声など聞こえないかのように振る舞うハイネ。一歩踏み出した瞬間、バハムートの爪がハイネを襲う。空気を切り裂き、地面を削り取る。身を翻してその巨大な爪から逃れると、地面を転がり、勢いをつけて立ち上がった。そのまま地面を蹴り、バハムートの下にいる少年へと駆ける。両腕で握り締めた剣を力いっぱいに横へ凪ぎ払う。少年との間にバハムートの強固な爪がたちはだかり、甲高い音が鳴り響いた。直ぐに握り直し、後ろへと逃れる。

『あの小僧に直接手を下そうと言うのか?』

「そうだ・・・、ん?」

心の中からではない、背後から声が聞こえた。大空より現れた漆黒の竜は咆哮を上げながらハイネのすぐ横に土を撒き散らしながら着地した。

「来ていたのか!」

『呼ぶのが遅くて待ちくたびれたわ。くるぞ!』

バハムートが息を大きく吸った。焔が口の中で渦を巻いている。衝撃と共に火球がハイネに向かって吐き出された。

シヴァの翼がハイネを覆う。四散した火球が辺りを燃やした。

『妙だな。バハムートが人の子と契約するとは考えにくい』

「お前も俺と契約しているだろ!」

鼻を鳴らしたシヴァの口からを同じように火球が吐き出される。バハムートはそれを自らの爪で凪ぎ払うととてつもない咆哮を上げた。

『答えろ、バハムート。何故貴様ほどの魔物が人の子と契約する?』

『では此方も問おう。何故忌まわしき竜が人の子と契約する?』

『愚問だ。今は我が問うているのだ』

シヴァの翼の隙間からハイネが飛び出した。シヴァに気を取られている隙に一気に間合いを詰めると、バハムートの懐に飛び込んだ。怒りを露にして顔を醜く歪める少年目掛けて思い切り剣を降り下ろした。

透明な薄い紫の光を発し、ハイネの剣は少年へ届かない。

「魔方陣? 結界か!」

少年とハイネの間にある結界は更に光を発し、ハイネを吹き飛ばした。地面に叩き付けられたハイネにバハムートが更に追い討ちをかける。拳を振り上げ、勢いよく叩き付けた。身体を回転させ交わすと、その勢いのまま立ち上がる。

『あのバハムートが結界を? その小僧を守って、あやつに何の利益があるのだ』

「シヴァ、お前は俺と契約して力を取り戻す事が利益。バハムートに利益はない」

『ならば何故人と契約しているのだ?』

そんなこと知るか、とハイネは吐き捨てた。伏す気味悪く笑みを浮かべているバハムート。契約している少年は脚を引き摺りながら一歩、また一歩と近付いてくる。醜く歪めた顔がひきつり、腕を必死に伸ばす。

「殺してやる、殺してやる」

憎しみに満ちたその言葉。ハイネは心の中で呟いた。


ーーこいつは、俺だ。


復讐に囚われた自分自身なのだ。殺されたのはハイネと同じく村諸とも。ハイネの心が熱くなった。まるで俺じゃないか。母親を殺され、復讐を誓ったあの日の自分。過去の自分を見ているのだ。

『奴の憎しみに共感しているのか? まるで自分だと思っているのか? 醜いな』

「醜かろうが何だろうが、俺も彼奴も復讐しかない。俺達の全ては復讐だ」

ハイネは力いっぱいに叫んだ。

「答えろ! 復讐か、復讐なのか!」

涙で充血した瞳で、少年もまた力いっぱいに叫ぶ。

「殺したい! 父さんと母さん、村のみんなを殺した彼奴等を!」

ハイネは剣を地面に突き刺した。一歩前に出ると、鋭い眼差しを少年へ向けた。

「俺の母は共和軍に殺された! 目の前で、俺の目の前で! 俺は復讐を誓った。共和軍を皆殺しにしたい、いや皆殺してやる!」

シヴァは黙り、うっすらと笑みを浮かべた。

「お前も俺と同じだ。殺したいだろ? 復讐したいだろ? だったら殺せ、何もかも!」

ハイネは右腕を差し出した。

「共に来い、俺達の所へ」

「俺達の・・・ところ・・・?」

「帝国軍だ。帝国軍に入って剣術を学んで、共に共和軍を滅ぼそう!」

少年は黙っている。だが心には復讐の二文字が渦巻いている。一歩踏み出そうとした少年を見て、バハムートはハイネを片腕で吹き飛ばした。宙に浮いたハイネ。

『奴も共和軍とは何一つ変わらない! 殺せ、何もかも!』

その場に踞る少年。頭を抱え込んで必死にその場から逃避しようともがくその姿を見て、ハイネは衝撃によって痛む腹部を押さえながら叫んだ。

「この場で誓おう! 共に共和軍を、共和軍を皆殺しにしよう!」

『我は貴様を殺したい、ハイネッ!』

バハムートは少年との契約を断ち切った。影から分離し、一直線にハイネに飛び掛かる。巨大な爪を降り下ろすために腕を上げる。

ハイネの瞳が紅く染まった。投げ出された剣を瞬時に取り上げると、力いっぱいに凪ぎ払った。巨大な爪が頬を掠め、剣がバハムートの腹部にめり込んだ。

悲鳴を上げるバハムート。腹部から溢れだす赤黒い血。身体全身に浴びるハイネは歯を食い縛り、剣を押す力を増した。更に剣がめり込み、バハムートの口からも血が溢れでる。

『お前が憎い、ハイネ』

最後の力を振り絞り、バハムートの口から漏れた言葉にハイネは強く反応した。

「何故俺の名を。貴様は一体!」

笑い声と共にバハムートの身体が黒くどろどろと溶けるように崩れ落ちる。血も肉体も、真っ黒な液体になりその場に溜まる。バハムートの面影を無くしたその黒い液体。

シヴァは目を細めるようにして口を開いた。

『これは・・・、この臭いは。死霊の臭いだ』

「死霊だって?」

『死霊だ、バハムートではない』

呆然と立ち尽くす少年とハイネ。力を使い果たしたように少年はその場に膝から崩れ落ちた。

「どうなってる?」

ハイネの問いが村に響き渡った。


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