↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/105

トゥエルヴ・アーティファクトNo.9 『無影の書』

夜のエヌス・ヤタに雨が降る。

次第に強くなる雨は炎上した家屋を次第に鎮火させていった。


白銀のローブを身に纏う、青髪ポニーテールの魔神 セシル・アクアリュウム。

彼女の目の前に浮いた"魔導書"からは青白いオーラが放たれ、周囲の空間を捻じ曲げているように見えた。



「ありえぬ……なぜ、その力を解放できる?」


数メートル先にいる黒いマントの魔物、レヴィンの表情は見えないが、その声からは動揺が感じられた。


「私の力は、あの方との出会いで増した」


「あるわけがない、魔神が"成長"など!」


「この胸の高鳴り、圧倒的幸福感……これらは日々、強まっている」


「そんなものが強さと何が関係あるのだ!!」


「"テンションが上がる"というやつですよ」


「意味が……わからん……」


「わからなくて結構。おしゃべりにも飽きましたので、あなたを駆除します」


セシルは両手を広げて天にかざす。

すると彼女は暴風と雷撃を纏いながら、どんどんと上昇し始めた。


彼女の纏う氷で作られたローブが一瞬のうちに細かく砕けて広がる。

氷は複数の結晶体となり、煌めき舞う。

セシルは白い素肌と青色のブラとショーツを曝け出した。


「"無影の書"・モード『氷霧之絶剣ソード・オブ・アブソリュート』」


その言葉に反応するように、煌めく氷の結晶体は彼女が天に翳した手に収束し始めた。



「なんという膨大な魔力だ。ダレンツォ様にも匹敵するほどか……だが、この私には無意味!!」


未だに余裕が残るレヴィン。


「果たしてそうでしょうか?」


不適な笑みを浮かべるセシル。


手のひらに集まる氷の結晶は次第に大剣を作り上げる。

火炎、豪雷、爆風という他属性を纏う、人間の背丈の何倍もある巨大な"氷の大剣"だ。


その切先はレヴィン……と思われたが、なぜか大剣は180度回転して後方を向く。


「……え?」


私は困惑する。

攻撃しなければならない対象は目の前のはずだ。

それなのに大剣が狙う方向が逆?


不意に振り向く。

壊れたアヴァロ魔鉱石付近。

争う、蛇頭の魔物とアンデッド兵。



私がそれを確認した瞬間、


「『解放リリース』」


セシルが呟くように言った。


氷の大剣は轟音を響かせ、猛スピードで蛇頭の魔物へと飛ぶ。

そして、その胴体を真っ二つにして爆散させた。


同時にレヴィンも静かに灰になっていく。


「どこで気づいたのだ……?」


この問いに、ゆっくりと地に降り立つ下着姿のセシルが答える。


「あなたは目立ちすぎなんですよ。使い魔ごときが言葉を話せて魔法も効かないなんて、ありえない」


「だから……逆に私が"本体"でないと気づいたのか?」


「ええ。あたかも自分が特別な存在だと見せつけて"本体"から注意を逸らす。あなたが"本体"でないのであれば魔法が効かないというのも納得できる。実体が無いのですから」


「ダレンツォ様の使い魔である、この私が……」


レヴィンの黒マントが消える。

その体は無数の虫だけで無造作に人型に作られたものだった。

そして、その虫の体も灰となり風に舞って消えていった。


(……なんだろう、あの虫の魔物を見ていたら、()()()()()()()()()()()()


無意識にスカートの中のショーツへと手が伸びていた。

軽く触れ、ハッと我に帰る。


「私は……何を……」


被りを振ってサラの方を見る。

彼女は緊張の糸が切れたのか、その場に座り込んでいた。



そこに、ずっと蛇頭の魔物と戦闘していたイヴがやってきた。


『全員、無事のようだな』


「ええ、さすがは主人様です。やはり全て見通されていた」


『あの方の行動には全て意味ある。そのおかげで住民は無事だった』


「それはよかった。ですが、町がこうなった以上は我らの処罰は決定しています」


『そう……だな……』


言いつつイヴは兜を脱ぎ、素顔を晒した。

そういえば私はずっと彼女の顔は見たことがなかった。



……え?



私の心臓が跳ねた。

そして体が震え、ゴクリと息を呑む。


「あ、赤髪の魔神……」


長い赤髪に2本の黒い角。

美しい顔立ちの女魔神。


私がこの東部に帰ってきたのは、これが目的だった。

調査だなんて嘘をついてまで、魔神がいると噂があったエヌス・ヤタに入り込んだ理由。


"青髪の魔神セシル"に気を取られ、考えるのをやめていたんだ。


まさか……ガルサス大団長がずっと探している"赤髪の魔神"がここにいるなんて。

()()()()()()()()()()()()()()()()()……それが今、私の目の前にいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。