勝敗を決めるのはやっぱり"見た目"
踏み込みは同時だった。
荒野の土を力強く蹴ってお互いが前に出る。
ベリーショートで茶髪の女騎士マルタさん。
黒のお団子ヘアでミニスカチャイナ服のユーフェンさん。
マルタさんの背中は逞しかった。
その一切の迷いのない動きは、『魔物や犯罪者が怖い』と言っていたのが嘘のようだ。
剣同士が交わった。
2人は何度か剣を合わせ、甲高い金属音を周囲に響かせる。
だけど、まだ様子見の間合い。
どちらも実力を探っているのだろう。
ただ、何か少し違和感があった。
「なんだろう、ちょっと苦戦してる?」
ユーフェンさんの方がコンディションがいいのか、マルタさんが押されている気がした。
すると、先に一歩踏み込んだのは鎧を纏った女騎士マルタさんだ。
上段の構えから、一気に剣を縦に振り下ろす。
これは回避されれば明らかに隙を生む行動だ。
案の定、ユーフェンさんは簡単にバックステップで回避した。
マルタさんの剣は地面へと落ちる。
だが、彼女の狙いはここからだった。
剣を即座に目元に構え直して切先をユーフェンさんへと向けて突きの攻撃に出たのだ。
ユーフェンさんの体は空中にある。
これは剣の平によるガードを確定させるための動きだった。
カン!と甲高い音が響くと、ユーフェンさんは剣を弾かれて仰反る。
「なんと!!」
マルタさんは瞬時に剣を引いて下段に構え直し、さらに前へと出た。
「これで終わりだ!!」
そこからの斜め下から、斜め上へ向かっての斬り上げ攻撃はユーフェンさんを捉える……かと思われた。
「『突風』」
クミルさんの魔法だ。
凄まじい爆風がマルタさんの立つ場所で巻き起こって後方へと吹き飛ばされた。
そのあまりの威力に鎧ごと服が破け散った。
追撃にはユーフェンさんが前に出る。
「マズイ、見入ってしまっていた」
あまりの攻防にバックアップを忘れていた。
僕は焦りつつも、すぐさま魔法の詠唱に入る。
「体に宿る火の力よ……」
詠唱を始めると空気が一変した。
アイヴィさん、クミルさんの表情に緊張が見え、追撃しようとしていたユーフェンさんは途中でやめて後方へと飛ぶ。
異様なまでの警戒心だった。
僕の魔法はそこまで威力は高くないはずだけどな……。
それは土の巨兵による『デッド・ソルジャー瞬殺事件』で明らかだ。
いや、今は分析よりも魔法を発動させないと。
「今こそ目覚め、我が敵を貫け!ファイアーアロー!」
僕は目の前に手をかざす。
足元に赤い魔法陣が展開すると火の矢がユーフェンさんへ向かって放たれた。
今回は当たる!
空中にいるユーフェンさんにファイアーアローが命中して、その体を燃やした。
彼女はすぐに燃える服を脱ぎ捨てて着地する。
マルタさんもほぼ同時に空中で体勢を整えて着地。
どちらも"下着姿"で剣を構えた。
ここで僕は序盤の戦いでマルタさんが押されていた理由を知る。
「なるほど、そういうことか……」
マルタさんの下着は、上下どちらも無地で茶色の可愛げのないものだった。
一方、ユーフェンさんの下着は清潔感のある白色で無数の花の刺繍と、ブラとショーツどちらにも付いたワンポイントリボンが可愛いもの。
「そういえば、マルタさんに重要装備を渡すのを忘れていたな……」
厳密にはディアナに全てプレゼントしてしまっていたせいでマルタさんに渡せなかった。
セシルが作ったランジェリーは、その見た目の可愛さから謎の付与効果があって戦闘力を底上げしてくれるのだ。
(身につけた女性いわく、テンションが上がるらしい)
……それよりも気になるのは3人娘の困惑ぶりだった。
「なんで爆発しないの?」
「わ、わ、わ、わかりません」
アイヴィさんが眉を顰めながらクミルさんに話しかけているのが聞こえる。
「確かに、"あの女"から"アレ"を受け取ってたわよね?」
「は、はい、私も見てましたけど……」
「じゃあ、持ってるはずでしょ!なんで何も起こらないのよ!」
「わ、わ、わ、わかりません……」
一体、何の会話なのかわからない。
僕が"あの女"から"アレ"を受け取った?
どういうこと?
あと爆発って物騒すぎるでしょ。
まるで僕が、ずっと【爆弾】でも持っていたような言い方だ。
彼女たちの会話を聞いて、僕もマルタさんも呆気に取られていた時だ。
地面に雷撃が走り、轟音が鳴る。
「貴様ら……ただじゃおかん……!!」
お、ディアナがアヴァロ魔鉱石の鎖を自力で引きちぎって復活した。
今の彼女は"テンションMAX"だぞ。
「ここまでようですね」
下着姿のユーフェンさんが言った。
その言葉に反応し、クミルさんが慌てて杖を掲げる。
そして、
「『閃光』」
再び光による目潰し。
一瞬の出来事だった。
目を開けて周囲を見渡すが3人娘の姿はどこにもなかった。




