開戦!女騎士vs中華娘の巻
それは閃光。
ただでも陽の光が強い荒野が真っ白に染まる。
クミルさんが使った『閃光』の魔法によって、僕たちは視界を奪われた。
それは魔神とて同じだ。
ディアナは踏み出した直後の目潰しによって踏みとどまった。
瞬間、彼女の体は後方へと吹き飛ばされて地面を転がる音が聞こえる。
「またこれか……力が入らない……」
僕は振り返って倒れたディアナを見ると、体には"青い鎖"のようなものが巻きついていた。
クミルさんの"閃光の魔法"で視界を奪い、アイヴィさんが"青い鎖"を遠投していたのだろう。
あれは『アヴァロ魔鉱石の鎖』か。
白狼の砦でディアナを繋いでいたものと似ているが、それよりも細くて長い。
鎖は彼女の全身に巻きついて、完全に自由を奪っていた。
ディアナがいないとなると、僕とマルタさんでなんとかするしかなくなるが……。
そうこうしているうちに相手に動きがあった。
数メートル離れた場所から一瞬にして目の前まで迫るユーフェンさん。
僕はかろうじて反応し、腰に差したダガーを逆手で引き抜く。
ユーフェンさんは土を削るように斜め下から、斜め上へ向けての斬撃を放った。
「ぐぅ!!」
防ぐのが精一杯だった。
僕はバンザイするようにして仰反る。
(この動きは知ってる、二度目は一歩踏み込んでからの斬り下げだ)
ユーフェンさんとの修練でよく見た剣術の型だった。
この対策は"仰け反ったまま踏ん張らずに後方へと倒れるようにしてバックステップする"こと。
彼女が二度目の攻撃を空振りしたところで、僕の攻撃ターンになるはず……、
そう判断した僕はすぐさまバックステップした。
だけど、なぜかユーフェンさんはそのままの勢いで回転しながら流れるように脚を折り、あぐらをかいて地面に座る。
すると、その数メートル後方で弓を構えているアイヴィさんと目が合った。
「マズイ……!」
ユーフェンさんの体でアイヴィさんの姿が全く見えなかった。
剣で体勢を崩して、弓で追撃を狙う戦略。
これは僕がユーフェンさんの剣技を知らなければ成立しない動き。
つまり回避行動まで読んでの戦略だ。
そんなことより、今の体勢からだと身動きが取れないし、体も空中にあるため回避しようがない。
彼女のスキル、『狙撃』の追尾効果によって確実に射抜かれてしまう。
そう思った時にはもう矢は放たれていた。
"ビュン"!!
猛スピードで飛ぶ矢が向かうのは僕の心臓のあたり。
これは当たる!!
その瞬間、
鉄音を響かせて僕の目の前に右側からサイドステップする女性。
腰に差したショートソードを引き抜き、円を描くような斬撃で矢を打ち落とす。
「なに!?」
アイヴィさんの驚く表情は初めて見た気がする。
それもそうだ、あのスピードで飛ぶ矢を一度の抜剣で斬ってしまうのだから。
僕はバックステップで距離を取り、後衛へ。
そして前衛には期待の大型新入社員、"女騎士マルタさん"が立った。
「状況はわからないが、シオン様には指一本触れさせない」
言って剣のグリップを両手で握り、目の高さで構えた。
その剣の切先は、静かに立ち上がったユーフェンさんに向けられる。
「その構えは"シュヴァーレン流"ですか」
「ええ。それが何か?」
「貴族が騎士学校で習う流派の一つ。オーソドックスで地味な剣技と師匠から聞いています」
無感情にユーフェンさんが言うと、マルタさんは余裕の表情で笑みを溢す。
「剣術は"派手だからいい"、というわけではない」
「ごもっとも。でも地味だということは単調であると言える。単調であれば動きは見切りやすい」
「本当に地味で単調かどうかは、やってみたらわかるわ」
マルタさんとユーフェンさんの殺気がぶつかり合う。
いや、ちょっと待てよ。
マルタさんって、こんなにカッコいい人だったの?
これは少し印象が変わったな。
失礼かもしれないけど彼女は貴族というより、どこにでもいる村娘といった見た目だ。
「シオン様、バックアップをお願いできますか?」
「う、うん!」
やる気、満々だぞ。
こっちは2人、あっちは3人で不利な状況ではあるけど、マルタさんとなら負ける気がしない。
こうして女騎士vs中華娘という異種剣術戦が開幕されることになった。




