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もはや通例となった冒頭戻り

僕は遂に【白狼の砦】に辿り着いた。

砂漠の中にある石を積み上げて造られた砦。


"黒き要塞"……そんな言葉が似合うほどの重厚感がある建物だ。


巨大な門から入ってすぐ、横の螺旋状の石階段を降る。

灯は少なくて暗い。

湿った空気と何かが腐ったような匂いが鼻腔を刺激した。


階段を降りきると、そこは多く牢屋が横に連なる空間。


「そこでおとなしくしてろよ」


全身を鎧に身を包んだ女騎士が言った。

これほど牢屋があって空いているのにも関わらず、入れられたのは"先客"がいる牢だ。


僕は狭い牢屋の中、後ろの奥の暗がりを見る。

そこには"青色に発光"する鎖に繋がれて吊るされた女性の姿があった。


それは美しい褐色肌の十代後半の若い女性だった。

オレンジ色のウルフカットの髪、服装は白のぴっちりしたタンクトップと黒のショートパンツ。

そしてブラウンのブーツを履いている。


その体は胸の膨らみは小さく、全体的に筋肉質で引き締まっていた。


何よりも特徴的なのは、こめかみ付近にある2本の短い黒い角。


これで彼女が"魔神"であることがわかる。


足が地についていない状態の彼女は項垂れており、体には無数の傷も見えた。


「この鎖、アヴァロ魔鉱石……?」


思わず呟いた。

すると褐色肌の女性は少し顔を上げて、僕を鋭い眼光で睨む。


「なんだ、お前……」


あまりの圧迫感に僕は後退りした。

一瞬で悟る、この女性は僕の苦手なタイプ。

どう見てもオタクの天敵、"ギャル"だった。


だけど目的を果たすためには彼女とコミニケーションを取るしかない。


「あなたが"ディアナ"さんですか?」


「なぜアタシの名前を知ってる?」


「あなたの力が必要だったので、ここまで来たんです。今、拘束を解きます」


「意味がわからん。なんで、お前みたいな"キモい人間"なんかに力を貸さなきゃならない。アタシを解き放った瞬間、お前の首を刎ねてやるからな」


彼女はニヤリと笑った。

"キモい"と言われるとショックだけど、今は『偽装カモフラージュ』で顔が変わってるからね。

……いや、それでも精神的にダメージは結構あるな。


でも今はそんなことを気にしてる場合じゃない。


「それは絶対に無理です」


「は?アタシを舐めてるわけ?」


「舐めてるわけじゃないです。ただ……」


ディアナは目を細めて僕をさらに鋭く睨む。

やはりオタクに優しいギャルは存在しないのか……。

そうだとしても、僕はもう引かなかった。


「『従属オビディエンス』……僕に力を貸してもらいます」


「アタシは……」


あれだけ僕に対して敵意を剥き出しにしていたディアナの目は虚ろになった。


僕は地面に転がる小さな石を1つ拾う。

そして親指の上に乗せた。


「"スキル結合"……『炎速指フレイム・スフィンガー』」


指を勢いよく弾く。

高速で放たれた小石はディアナが吊るされた、ちょうど真上の天井へ。

鎖が繋がれた場所に当たって、数センチだけ天井に"熱線"が走った。


天井との繋ぎ目が内部から高温で熱せられたことによって、鎖が千切れてディアナは地上に落ちる。


よし、練習どおり上手くいったぞ。

スキルとスキルを合わせて新たなスキルを作り出すという『結合』の能力だ。

イヴとランジェリカさんのスキルを組み合わせて、"飛ぶ熱線"を生み出した。

ランジェリカさんのスキル、ちゃんと役に立ちましたよ!



そして、着地した彼女は僕の前にひざまずいた。


「魔王軍、第七総魔将ライトニングエフェクトの"ディアナ・ボルティクス"。アタシにできることがあれば、何なりとお申し付け下さい……」


先ほどとは打って変わって従順となったディアナの表情はトロけている。

言っていることが真面目なだけに、そのギャップに僕は心を打たれた。


「ディアナさんって……可愛いですね」


「え……アタシが可愛い……?な、何かの間違いでは?」


「間違いじゃないです。ディアナさんはとっても女の子らしくて、とても可愛いと思いますよ」


「あ、あ、あ、ありがとうございます……いや、でもアタシなんて……ずっと"男女"なんて言われてバカにされてきて……」


「そんなことを言ったヤツは僕が許さないです。僕と一緒にいたら、そんなことは絶対に言わせない」


ディアナは跪いた状態で僕を見上げた。

褐色肌でもわかるほど、顔が赤らんでいるのがわかる。


うん、やっぱり可愛い。

"ギャル"への印象が変わり始めているぞ。


「ディアナさん、僕の願いを聞いてくれますか?」


「はい、アタシでよければ!」


「じゃあ、僕と一緒にここを出ましょう。時間が無いので東部に着いたら説明しますね」


「東部へ向かうんですね!わかりました!では、この檻を破壊して……」


「その必要は無いですよ。()()()()()()()()()()


「え?」


全てが計画通り。

いや、計画した以上の状況だった。

当初の目標である、"誰も傷付かず、平和的な脱獄"は新入社員のマルタさんの協力により、とてもスムーズに進んでいる。


やはりランジェリカさんの祖父が残した予知の通り、僕はここから無事に脱出できてズワーンさんのクエストをクリアできるのだ。



……そう、思われた。



安心しきっていた僕の行く手を阻むように、この場所で"絶対に出会ってはいけない人物"と対面することになる。

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