表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/102

とっ捕まってからの……ヘッドハンティング!

アーバスラム西部地方


西部は東部よりも日差しが強く、さらに西に行くほど砂漠が広がっている。


セシルのスキル、『交換エクスチェンジ使魔リリス』によって僕だけ1人、3日ほどで西部地方の中央付近に位置する町、"カイデ・モーグ"に辿り着いた。

この町は砂っぽくて、家屋の造りを見るにアラビアンなイメージだ。


ここに来た目的は【白狼の砦】に捕まっている、魔神ディアナ・ボルティクス救出のため。

すべては賢者ズワーン・ディルマから受注したクエストから始まっている。


さて、気になる作戦内容だが、当初は"僕がわざと事件を起こして捕まり牢獄へ入る"というものだった。


でも、さすがに某ドラマのように嘘であっても銀行強盗なんてしたくはない。


難色を示した僕を見たセシルは、すぐさま作戦を練り直してくれた。

新たな作戦は"誰も傷つけず、とても平和的"に捕まれるのだ。



そんなこんなで僕はセシルの新作戦によって街中で、すでに数人の武装騎士に取り囲まれていた。


「やはり、こいつだ」


「手配書の似顔絵そのままだな」


「うむ……少し、背が小さいようなきもするが間違いないだろう」


そりゃ"顔"は完璧だろう。

だって『偽装カモフラージュ』のスキルで手配書の似顔絵そっくりにしてあるからね。

さすがに身長まではわからん。


僕は数人の騎士団員に拘束される。

すると騎士のリーダーらしき人物が言った。


「砦への護送は任せたぞ」


「わ、私が一人で……ですか?」


「こいつは"ドロップ兄弟"の弟のほうだ。兄もいるかもしれん、我々は捜査を続ける」


「了解しました」


「自信を持て。お前は剣術もスキルも申し分ない。もし、こいつが抵抗するようなら、それなりの対応をしろ。お前ならできる」


「はい……」


新米らしき騎士は不安な様子だ。

兜で顔はあまり見えないが、声からいって女性だろう。


「こいつは悪名高い犯罪者だ。気をつけろよ」


「はい!」


彼女の緊張感が僕にも伝わる。

もしかしたら初めての大任なのかもしれない。

僕には"ドロップ兄弟"がどれだけの犯罪者なのかはわからないけど、どうやら西部では有名らしい。


そんな犯罪者を女性1人で護送するって、何かおかしい気もするけど……。


それはさておき、僕はこの新たな作戦である"指名手配中の凶悪犯に扮して捕まる"という誰も困らない方法で【白狼の砦】へと護送されることになったのだ。


__________



いやいや、こんなガバガバでいいのか?

そう思われるほど雑な護送だった。


手だけが拘束された状態で荷台に乗せられた僕は御者を務める女騎士さんの背中を見ていた。


どう考えたって隙だらけだ。


僕が本当の犯罪者なら、後ろから刺されても不思議じゃないぞ。

それが気になって周りの風景なんて目に入らないくらいだ。


でも彼女は、


「えーと、護送の手順は……確か……」


ぶつぶつと呟いている。


「あのぉ、大丈夫ですか?」


僕は心配になって思わず聞いてしまった。


「え、ええ、大丈夫……って、犯罪者が口を開くな!」


「ああ、ごめんなさい」


怒気を含んではいるけど、いつもイヴの鬼教官っぷりを見ているから何も感じないな。

まだまだ対応に慣れない様子が見て取れる。


どうしようかなぁ。

"あの言葉"を言いたくなっちゃうなぁ。

……僕は欲望に耐えかねて、ついつい言ってしまう。


「『従属オビディエンス』」


「……」


彼女の肩が下がり、馬の手綱を持つ手も緩むのが見えた。

顔を見なくてもわかる、完全に従属されてる。


「騎士様、お名前は?」


「……私はマルタ・リエットと申します」


「マルタさん。とても綺麗なお名前ですね」


「ありがとうございます」


「騎士団には、まだ入団して間もないのでは?」


「はい、数ヶ月前に入りました」


「もう慣れましたか?」


「……」


マルタさんは黙ってしまった。

これは珍しいパターンだ。

従属状態にある人間は、必ず質問されたら答えを返す。

まさか、もう"反発の心"が出たのか?

いくらなんでも早すぎる。


そう思った時、彼女から啜り泣いている声がした。


「この仕事は……私には向いてないと思います……」


「でも、さっきの騎士様はマルタさんのことを高く評価していたようでしたけど。剣術もスキルも優秀だと言ってましたよね?」


「怖いのです……魔物や犯罪者と関わることが……」


「そうだったんですね」


「でも、父や母を失望させたくはない……せっかく大団長のお膝元ひざもとで仕事ができるのに、これでは……そう思って頑張ってはいるのですが……」


「じゃあ、ここ数ヶ月間はずっと辛かったですよね」


「はい……」


優秀な人材ではあるのだろうけど、過度な期待とリアルな現場仕事が彼女を苦しめているのだろう。


今出会ったばかりだけど、僕はマルタさんに幸せになって欲しかった。


「マルタさんは何か他にやりたいことはあるんですか?」


「やりたいこと……私は女の子っぽい仕事がしたい……贅沢でしょうか?」


「別に贅沢ではないと思いますよ。自分がやりたいことをやった方が健全ですからね」


「でも、叶わぬ夢です。私はこの仕事で生涯を終えます」


悲壮感。

働きはじめの新入社員が職場に馴染めず絶望している。

これはなんとかしてあげないと。


「もし……僕に協力してくれたら、マルタさんの願いを叶えてあげますよ」


「え……?」


「親御さんのことが心配かもしれませんけど、多分、僕の婚約者のことを知れば悪くは思わないはずです。どうです、僕と一緒に来ませんか?」


優秀な人材を見つけたら、まず声を掛ける。

その人材が今の環境に満足していないなら、なおさらだ。

ちょっとした面接で採用は決まった。


あとは彼女次第であるが……


結果はいかに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ