"最強"の意外な弱点と3人娘の勇姿
蒼天の下、砂の荒野に風が吹き抜ける。
大きさが4、5メートルはありそうな土の巨兵の目の前に、僕の声に応じて召喚されし怪獣(アンデッド兵)。
黒い豪雷と竜巻の中から、ついに姿を現した。
「こ、これは……!!」
か細いガイコツ兵が一体。
身長は150センチくらい。
生まれたての子鹿のように足を震わせて、ようやく立っている状態だ。
短い剣を両手持ちして、勇敢にも土の巨兵の前に立つ。
その姿を見た後方の誰かが、
「あにあれ、クッソ弱そうなんだけど」
と嘲笑気味に言い放つ。
いや、絶対にアイヴィさんでしょ。
「だ、大丈夫さ、見た目で判断したら……」
ズドーン!!
土の巨兵の踏み潰し。
ガイコツ兵は生まれてから(アンデッドだけど)、10秒も経たずして、この世を去った。
「うあああああ!!僕の、僕の……デッド・ソルジャーがぁぁぁぁ!!」
あまりのショックに僕は両膝をつく。
「やっぱり……クッソよわ」
後方の誰かが言った。
いや、絶対にアイヴィさんでしょ!
「……君の仇は取る!!」
怒りは頂点に達していた。
僕は静かに立ち上がり、前へと踏み込む。
それに反応して土の巨兵も動く。
大きく腕を振り上げて、それを一気に地面に叩きつけた。
見える!
「『影跳』」
一瞬で土の巨兵の背後へと移動した僕は腰からダガーを引き抜いてからの跳躍。
スキル『猫足』によって強化された脚であれば難なく2、3メートルはジャンプできる。
「これでも食らえ!『炎歪』!」
土の巨兵の背中へと突き立てられたダガー。
そこから這うようにして四方八方に熱線が広がる。
「……あれ?」
何かおかしい。
いつもなら内部が炎に焼かれて爆散するのに。
まさか……。
僕が"ある結論"に到達した時、セシルが叫ぶ。
「主人様、お離れを!」
土の巨兵は振り向き様に腕を振る。
その勢いは大地に亀裂を生じさせるほどの衝撃があった。
僕は反応できず、その攻撃をクロスガードするかたちで受けて吹き飛んだ。
「うあああああ!!」
地面を何度も転がる。
十メートルほどで、なんとかダガーを地に突き刺して止まった。
「な、なんで効かないの!?」
腕がヒリヒリするけど、それどころではない。
近接最強と思われたスキル『炎歪』。
熱線が届かない相手にはもちろん効くことはないわけだが、さらにもう一つ致命的な弱点があった。
「そうか……あの体、土で作られてるから……」
全身が"土"だから内部もクソもない。
そもそも土だけで構成されているものに臓器なんてなかった。
木材などと違って土の内部では炎が起こらないのだ。
土の巨兵は屈伸から、僕以上の跳躍で空に舞う。
あんな巨体が落ちてきたら、ひとたまりもない。
そう思った瞬間、空中の土の巨兵を目掛けて一本の火矢が飛ぶ。
あれはファイアーアローか。
魔法使いのクミルさんが放ったものだな。
爆煙を上げて墜落する土の巨兵。
しかし、しっかり着地して振り向く。
すると、そこに疾走する中華娘のユーフェンさんがいた。
舞うような剣技で土の巨兵を攻撃する。
だが、それは地面を斬っているようなもので全く効果はみられない。
土の巨兵がユーフェンさん目掛けて右腕を振る。
そこにアイヴィさんが射った通常矢が数本飛び、腕の付け根に集中的に刺さり攻撃が止まる。
刹那の隙。
ユーフェンさんはそれを見逃さず、無数の斬撃を矢が刺さっている腕の付け根へと浴びせた。
その斬撃によって土の巨兵の右腕が落ちる。
「す、すごい連携だ……」
初めてとは思えぬほど華麗な連携攻撃。
ランジェリカさんとサラさん、僕もだけど……固唾を飲んで見守る。
まさか、このまま倒しちゃうのか!?
そう思ったのも束の間、土の巨兵は左腕を地面に叩きつけてユーフェンさんを衝撃で吹き飛ばす。
さらに、そこからの右腕は周りの土を吸い上げて即座に再生した。
「冗談でしょ……チートじゃないか……」
勇者スキルにも負けないほどのチートっぷり。
こんなのにどうやって勝てばいいんだ!?
「どうやら私の出番のようですね」
真打ち登場。
魔王軍が誇る最強クラスの魔法使い、その名もセシル・アクアリュウム。
3人娘の後ろに立つセシル。
彼女が手を広げると空中にドス黒い亜空間のようなものが現れる。
亜空間から手元に落ちる一冊の大きな本。
あれって魔導書なのかな?
セシルが持つ本は勝手に開いてパラパラとページが捲れる。
「ゴーレムなど……我が魔法で吹き飛ばしてあげましょう」
黒いフードの下はニヤリと笑っているに違いない。
そんな魔神セシル・アクアリュウムの魔法が土の巨兵を襲う。




