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南部の武器商人

例の会議から二日。

僕とイヴの夜はずっと濃厚なものだったが、なぜか僕のステータスレベルは全く上がらなかった。


「もしかして、戦闘でレベリング?」


まぁ、そりゃ当然といえば当然な話だ。

僕のステータス数値が普通に戻ったというのであれば戦闘して経験値をためて上げるのだろう。



そしてセシルがおこなっていた東部中央へ行くためのパーティー選抜は奇しくも疑惑の人物が加わることになる。


メンバーは、


僕、セシル、ランジェリカさん、サラさん、クミルさん、アイヴィさん、ユーフェンさんだ。

(ちなみにアイヴィさんはまた志願して無理やりメンバーに加わった)


多くの人員を連れていくよりも少数精鋭にして、個々の能力をしっかり生かす編成にしたようだ。


バランスを考えて、戦いの際には前衛3人、後衛4人の陣形を取る。

とは言っても実際はセシルだけで十分なのではとも思う。

本人曰く、彼女の強さは相手が熟練の騎士団員でも1000人くらいなら一瞬で葬れるほどの強さだという。


魔神、恐るべし。


ちなみにイヴは町の防衛任務のため残ることになった。


というわけで、僕たち7人はランジェリカさんの実家のある東部中央に位置する町、"レヴォン・バレイズ"を目指すことになった。




曇り空、小雨が降る中。


町の前には漆黒の鎧を全身に纏うイヴ。

さらに彼女が引き連れる自警団の女性冒険者が並んだ。


『いってらっしゃいませ、主人様。ご無事を祈っております』


「うん。イヴさん、町の防衛は任せたよ」


『はい。我が命に変えても、この町を守り抜いてみせます』


イヴが頭を下げ、自警団もそれに続いた。

しばらくの間、彼女に会えなくなると思うと寂しい。

だけど、これも全てはみんなの幸せのためだ。

僕が弱気になってはダメだよね。



僕はランジェリカさんが操る馬に2人乗り。

他のメンバーはアイヴィさんが御者を務める荷馬車に乗った。


レヴォン・バレイズまではおおよそ1週間ほどだが、その前には"荒野の迷宮"と呼ばれる場所がある。


まずはそこを目指す。


僕たちはエヌス・ヤタから出発した。


_______________



朝方、ポツポツと小ぶりの雨が降る。


馬に跨るのは初めてだ。

僕は青色の制服(?)の上から鎧を着たランジェリカさんの後ろに乗って両腕を彼女のお腹にまわす。

息を吸うたびにランジェリカさんの髪から、とてもいい匂いがした。


先頭を行く荷馬車についていくかたちで、馬はゆっくりと歩く。



それにしても不思議な出会いだよなぁ。

ラーグ・グレイスの町で、たった一度だけ会話しただけなのに、今や婚約者だ。


……そういえば、あの時、どうして彼女は北部の辺境の町にいたんだろう?

確か偽勇者候補のゼイバーさんが「なぜ彼女がここにいる?」とかなんとか呟いていたのを思い出す。


「気になったんですけど、ランジェリカさんはなぜラーグ・グレイスにいたんですか?」


「あの時は任務で"武器商人"の関係者を追っていました」


「"武器商人"?」


「はい。その武器商人の部下と思われる者が逃げたとされたのが東部から北にかけてだったので、私の部隊が北へ赴くことになったのです」


「なるほど。そういう経緯だったんだね」


「はい。その武器商人の部下は多くの騎士を殺めたようなので、現在でも騎士団はこの"武器商人"を危険視して追っています」


「めちゃくちゃ危険人物じゃないか」


「そうですね。とても奇怪な武器や道具を売るとかで、()()では恐れられていますからね」


南部……。

いや、まさか、そんな偶然あるのか。


「その"武器商人"ってどんな見た目をしてるの?」


「それが、わからないのです。かなり警戒心が強いのか姿を滅多に現さないようで、ほとんど人を介して商品を売ってます」


「なるほど。そうなると名前とかもわからないね」


「名前は……異名ならわかりますよ」


「異名?」


「はい。南部では、その武器商人のことを【ホワイト・スコーピオン】と呼んでいるようです」


ホワイト・スコーピオン?

白いサソリ……。

それって、まさか"あの男"なのか?

であるならランジェリカさんも少なからず関わっていたということだ。

僕は"あの男"の関係者がどんどん増えてくることに身震いする。


「そうだ、これを」


言ってランジェリカさんはスカートのポケットからネックレスのようなものを取り出して、僕に手渡してくれた。


それは"深紅の丸い宝石がついたネックレス"だ。


「その武器商人の手がかりです」


「なにこれ?」


「魔法効果が付与されたアイテムのようですが、私も何に使うかはわかりません。よかったらシオン様がお持ち下さい」


「でも、このネックレスが無いと任務に支障が出るんじゃ……」


「もう任務から外されましたので、私には必要のないものです」


僕はネックレスを凝視するが見たことがない物だし、もちろん何に使うかもわからない。


「雨足が強くなりそうなので、一旦ここで野宿にしましょう」


「そう……ですね」


森林地帯に入ったあたりでランジェリカさんが言ったとおり、土砂降りの雨になった。

その前にテントを張れたのはラッキーだ。


僕たちは一日目の移動を終えて夜を迎えることになる。

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