初出撃は恋の始まりの予感!?(2)
空は快晴。
僕は青く広がる大空にいて猛スピードで落下する。
「ちょっと待って!!"使い魔"って空を飛んでたの!?」
風圧で服とマントが揺れ動く。
言うなればパラシュート無しのスカイダイビングだった。
真下の状況はよく見える。
地上は開けた街道。
真ん中には荷馬車が数台いて列を作っていた。
それを取り囲むようにして無数の"鳥のような魔物"と少し離れた場所に"巨大な丸い岩のような魔物"がいる。
この"巨大な岩のような魔物が"魔獣"だろう。
体長は4メートルほどかな?
これは、かなりデカい。
いや、冷静に状況を確認している場合ではない。
このままだと僕は墜落して、一番最初にあの世行きだ。
「ど、どうやって着地を!?」
命の危険が迫る中、僕の脳は驚くほど冷静になり分析が一瞬のうちに終わる。
過去にも経験がある。
確実に"ゾーン"に入った。
この時のためにスキルを集めたと言っても過言ではない。
練習通り、全てを感覚だけでやるんだ。
いくぞ……!!
まずは空中で詠唱を完了する。
「体に宿る火の力よ、今こそ目覚め、我が敵を貫け……」
詠唱が終わると同時にズドン!!という轟音と共に僕は地上に着地した。
場所はちょうど荷馬車のあたり。
『猫足』
このスキルで着地の衝撃を軽減した。
つまり、これが無ければ僕は今ごろ死んでいる。
周囲に土埃が舞い上がる中、2人組の"女性"の声がした。
「な、なんだ!?」
「新手の可能性がございます!お下がりください!」
「わ、私が引くわけにはいかないのだ!」
もしかして、この2人組の女性がセシルが言っていた騎士なのかな。
「いや、人間?……もしや援軍ではないか!?」
「ですが一人のようです!たった一人増えたとのろで、この数の魔物は……」
確かにそうだ。
でも、それは僕がただの冒険者だったらの話し。
「"『拡散』……火矢"!」
天に手を掲げると黒い雷撃が四方に走り、足元に大きな赤い魔法陣が展開した。
そこから無数の火の矢が発生して飛ぶ。
さらにファイアーアローは『狙撃』のスキル効果が付与され、誘導レーザーのように空を飛ぶ鳥の魔物に向かって曲線を描いて向かった。
目にも止まらぬ速さでファイアーアローは空を飛んでいた大量の鳥の魔物に到達して体を貫き、燃やして灰にした。
すると後方にいる女騎士と思われる2人が驚きの声をあげる。
「あれが下級魔法のファイアーアロー!?」
「な、なんだ、あの魔法は……あんな形状の魔法は見たことがない……」
黒い灰が風に舞う中、僕の数十メートル先にいる巨大な丸い岩の魔獣も反撃に出る。
恐らく、この魔獣にはファイアーアローが効かなかったんだ。
魔獣の体の周りに細かい魔法陣が展開されると、そこから"土の槍"を射出。
その数はゆうに数十を超えていた。
瞬間、悲鳴にも似た女性の声が上がる。
「危ない!!」
だけど僕は冷静に対処する。
左手のひらを魔獣の方へと向け、それを返すような動作をする。
左手の甲の【黒竜の紋章】から火花が散り、黒い雷撃が地面を抉るように迸った。
「『魔転』……"土盾"」
そう呟いた瞬間、僕の目の前に大きな土の壁ができ、魔獣が放ったすべての"土槍"を防ぎ切った。
そして役目を終えた土の壁は崩れ去る。
『魔転』は魔法発動後、次に使用する別属性の魔法の詠唱を無くす。
これが攻撃の後隙をフォローする無詠唱・魔法連携。
「外殻は魔法を弾くほど硬いのか……それなら!」
僕は腰に差したダガーを引き抜いて前へと一気に踏み込む。
『猫足』の効果で一歩の跳躍で数メートルもの距離を移動できた。
それだけじゃない。
体がとても軽かった。
これはユーフェンさんとの鍛錬の成果かもしれないな。
魔獣の正面。
魔獣は外殻に張り付いていた岩の腕を振り下ろして移動を阻止しようとしてきた。
読み通りさ。
「『影跳』」
"魔炎殺法・踏影"
魔獣の背後、硬い外殻にはところどころにヒビのような隙間があった。
僕はその隙間へとダガーの刃を滑り込ませる。
「外部がダメなら内部を焼き切る!『炎歪』!」
再び黒い雷撃が発生して、瞬く間に魔獣の外殻に無数の歪な熱線が走った。
そして大きい岩の体は、さらに膨れ上がり、最後には爆散して灰になった。
すべて事が終わると僕は荷馬車の方へと走り寄った。
「あのぉ、大丈夫でしたかー?」
2人の女騎士を見る。
あれ……見覚えがあるぞ。
僕が近づくと、どちらも唖然とした表情をしていた。
「あ、ありえない……この数の魔物を……」
「しかもクラスAの魔獣をたった一人で倒してしまうなんて」
「ええ……最後は何をしたのか、わからなかったわ」
1人は長い黒髪で重厚な鎧を着た、美しい清楚系の女騎士。
もう1人は白いぴっちりめのローブに鉄の杖を持った魔法使い風の女性だ。
「もしかして……ランジェリカさん?」
「え……?あなたは、あの時の……」
僕の姿を見た彼女は焦ったように乱れた長い黒髪を整える仕草をした。
そう、僕が助けたのは数ヶ月前にラーグ・グレイスの町で出会った伯爵令嬢、"ランジェリカ・リリーさん"だったのだ。




