果てしなき魔法少女への道(2)
太陽の光が降り注ぐ昼下がり。
町の中央のベンチにいる僕とセシルのところに全身鎧姿のイヴがやってきた。
もちろん頭も兜で隠してあるのは、外から来た人間に町への不信感や警戒心を抱かせないためだ。
『お待たせいたしました。主人様』
「う、うん」
『ほら、お前も主人様に挨拶しろ!』
「は、はいぃぃー!」
イヴが連れてきたのは短い茶髪の女の子だった。
服装はカーキ色のローブ、頭には大きな黒の三角帽子を被っている。
手には大きめの木の杖を持ち、肩にかけられたショルダーバッグはパンパンに膨れ上がっていて、これだけで冒険者であることがわかった。
顔はそばかすがあって、第一印象は"地味な村娘"といった感じ。
それにしても、この声の裏返り方は緊張感のあらわれだろうな。
無理やり魔神に連れてこられて、この町の支配者という人間に挨拶しろと言うのだから。
「ほ、ほ、ほ、本日はお日柄もよくぅ……」
『主人様の前だぞ!もっとしっかりせんか!』
「は、はいぃぃー!」
イヴの鬼軍曹っぷりがヤバい。
あまりの気合いの入り方に見ているこっちがヒヤヒヤするぞ。
「わ、わ、わ、わたくし、クミルと申します!」
「クミルさん、いいお名前ですね」
「あ、あ、あ、ありがとうございます!」
僕は笑顔で対応しているけど、やっぱり魔神2人がいるという状況は彼女にとって……いや、誰だって緊張するか。
「クミルさんは、もしかして魔法使いですか?」
「は、はいぃぃー!そうでございますぅ!」
「それはちょうどよかった。クミルさん、魔導書って持ってます?実は僕も魔法を覚えたくて……」
「は、はいぃぃー!少々、お待ちになってございまし!」
もはや敬語がめちゃくちゃだ。
こうなるならタメ口でもいいんだけど……。
多分、クミルさんは僕と同じくらいか、少し年上と思われる年齢だろうから。
クミルさんはショルダーバッグを開けて、両手でゴソゴソを中身をあさる。
「どっこいしょういち!」
どっこいしょういち?
バックから本を1冊だけ取り出すだけにしては、やけに力が入ってるな。
僕はバッグ取り出された本を見る。
「は?」
その本は広辞苑並み分厚さで、大きさがA3サイズはある。
あれだけパンパンに膨れ上がっていたバッグは空気の抜けた風船のようになった。
つまりバッグのほぼ全ての面積を魔導書が占めていたのだ。
「こ、こ、こ、こちら、"ファイアーアロー"の魔導書になります!」
「ぶ、分厚い……もしかしてこれって凄く難しい魔法なんじゃないの?」
これについて説明してくれたのは隣にいるセシルだ。
「ファイアーアローはファイアーボールと同じく"下級魔法"となります。初歩的な攻撃魔法ですね」
ちょっと待てよ……下級魔法でこの厚さ!?
僕はラノベを読み切るのにも1週間はかかるっていうのに、この量を読み切るとなると1ヶ月はかかるぞ。
「ち、ちなみに何ページあるんです?」
「お、お、お、およそ、2500ページでっす!」
「長すぎる……」
短いラノベなら長編でも物語が完結してしまう。
それが下級魔法となると中級や上級って、どれだけの本を読まなければならないのか。
「もう少し、簡単に魔法を覚える方法って……」
「ありません」
「ですよね」
セシルの一言で現実に引き戻される。
アニメなどでよくあるような、"すぐに強い技が使えちゃう"ようなご都合展開は期待しない方がいい。
やっぱり地道な努力の先に強さがあるのだ。
「が、頑張って読んでみます」
僕はファイアーアローの魔導書をクミルさんから受け取った。
ずっしりとした本の重みを感じて息を呑む。
一通りの自己紹介を終えてイヴが言った。
『では主人様、この者にスキルを』
「ああ、そうだった。『従属』……これからよろしくお願いしますね、クミルさん」
僕が口にした"その言葉"を聞いたクミルさんは、肩の力が抜けて脱力状態となり目が虚になる。
そして、
「はい。こちらこそ、よろしくお願い致します」
と落ち着いた様子で言った。
その声がとても低くて、先ほどのクミルさんとは全く違う印象だったのが気になった。
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その夜。
彼女の願望は少し特殊であった。
ギルドの僕の部屋(元エリシアさんの部屋)にクミルさんを招いていたのだが……。
そこで彼女の本当の姿を垣間見ることになる。
窓から差し込む星の光、暖炉の灯りの中、天凱ベッドの上で仰向けに寝るのは僕だ。
「あ、あのぉ……クミルさん」
「患者は黙ってなさい!!今は診察中なのよぉ!!」
「は、はぃぃー!!」
三角帽子を被り、茶色のシンプルな無地の下着姿のクレアさんは狂気に満ちた表情で僕の体を触りまくる。
ちなみに僕は服を一切、着ていない。
「そうかぁー、ここはこうなってるのねぇ」
彼女の目は血走ってる
目の下にクマがあって、笑顔がぎこちない。
「あのぉ、クミルさん……」
「患者は動くんじゃねぇ!!」
「は、はぃぃー!!」
笑顔で叫ぶクミルさんに圧倒される。
言い表すなら、今の彼女は"マッドサイエンティスト"だろう。
ベッドで寝そべる僕は至る所を触られ、匂いを嗅がれ、さらに体を擦り合わされたりと、好き勝手に弄ばれた。
このままいけば、最後には体を切り裂かれるのではいだろうか……?
そしてクミルさんとの戯れ(?)は夜通し続き、そしでようやく……、
【従属レベルが上がりました】
いつも通り、左手が痛む。
【新たなスキルを獲得しました】
色々あったが、一応スキルを獲得できた。
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【従属レベル】
ミナ・・・(レベル1)
クミル・・・(レベル2)
ファリス・・・(レベル2)
ランジェリカ・・・(レベル1)
イヴ・ガルハート・・・(レベル3)
セシル・アクアリュウム・・・(レベル3)
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【獲得スキル】
・『炎歪』
・『耐寒』
・『影跳』
・『偽装』
・『拡散』
・『魔転』
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今回の獲得スキルは『魔転』だ。
このスキルの内容は、
"魔法を発動後、次に使う魔法の属性が前に使った属性と違う場合は一度だけ詠唱をせずに即時発動できる"
やっぱり魔法系のスキル。
しかも、かなりテクニカルなスキルな気がするぞ。
こうして僕は"魔法少女への道"を着々と歩むことになるのだった。




