まずは、これからの方針を
ジェイルさんに町の修繕の依頼をした日。
その足で僕とセシルはボロボロの街並みのエヌス・ヤタの中を一緒に見て回った。
この町自体、さほど大きくはない。
調べたところ家屋も300件ほどで、住民は200人ちょっと。
住民のすべてが若い女性。
その中にはこの町のギルド所属の冒険者もいる。
彼女たちは前回の魔獣討伐作戦で多くの冒険者たちを魔物に食わせたという罪があったため、エリシアさん同様で拘束した。
そうなると、この町において力仕事をする人間は極端に少なかった。
外から来た冒険者や商人などを合わせても、やはり男手が足りない。
「空き家も多いよなぁ。誰もいないのに修繕するって、勿体ない気もするけど」
「では、他の村や町で家を失った人間を連れて来るというのはどうでしょうか?」
「おお!セシルさん、ナイスアイディア!」
「はい」
セシルの声は高揚しているように感じた。
いつも落ち着いていて無感情って感じだけど、やっぱりイヴ同様でやっぱり褒められたいんだよな。
「ならば少し離れた村を襲い、生き残った人間をこの町のまで連れてきましょう」
「は?」
「そうすれば、迅速かつ効率的に移民を生み出すことが可能ですし、この町の人口は簡単に増えます」
「……セシルさん」
「はい?」
「セシルさんは、またおばかになりたいみたいだね」
僕がそう言った瞬間、セシルは立ち止まって人目も憚らず、その場に跪く。
「大変、申し訳ございません。このセシルの発言に問題があったのなら、心から謝罪を致します」
声も体も震えている。
よほど、『愚者の刑』に効果があったらしい。
あんな尊厳もクソもない姿を主人の前で晒すというのは、やはり精神的ダメージが大きいのだろう。
「セシルさんは頭がいいんだから、みんなが幸せになるように物事を考えてくれると嬉しいな」
「みんなが……幸せですか?」
「うん。セシルさんならできると思うよ」
「はい……尽力致します」
セシルは功績を上げる事に対して凄く執着があるように思える。
だから仕事ができないと思われることに恐れを感じているようだ。
一方、イヴは僕との主従関係に執着があって、そこが崩れることを極端に恐れている。
「町の周辺の調査って簡単にできないものかな?魔物とか盗賊とかの被害で住むところがなくなった人たちを助けたいからね」
「私が"使い魔"を飛ばしましょう。しかし、もし何かを見つけても、今はまだ派遣する兵がおりませんが……」
「それなら僕が行くよ」
「な、なんと……主人様、自ら赴かれると?」
「うん。ここはやっぱりリーダーが率先して行かないとね!」
正義のヒーローなら自分から戦地に行って人を救うのが常識だ。
なんなら自分でユニフォームなんて作ったりして、それを着て出動なんてカッコ良すぎる。
ギルドの地下の洞窟に秘密基地なんて使っちゃってさ。
これは夢が膨らむぞ。
「私は……私は……」
僕が憧れのヒーロー像を考えている時、何やらセシルは妙な動きをしている。
跪きながら、ちょうど女の子の部分に触れているように見える。
「私は主人様のお考えに感服いたしました……このセシル・アクアリュウム、命をかけて主人様にお仕えする所存です」
そう言って頭を深々と下げる。
彼女はその際も指先を小刻みに動かしているようだった。
フードの下では甘い吐息を漏らす。
もしかして興奮してる?
多分、セシルは自分の動きを制御できないみたいだ。
でも僕は嬉しかった。
無感情で冷めた態度のセシルだけど、そんな彼女が欲望に忠実になるのはいいことだと思う。
興奮したら、いかなる時でもイジリ倒したっていいんだ。
人の目なんて気にせず、僕の前では素直になってほしい。
「セシルさん、今日の夜は一緒に過ごそうか」
「わ、私が……主人様と一緒のお部屋でですか……?」
「うん。セシルさんはとても頑張ってるから、ご褒美をあげないとね」
「私は未だに何の成果も上げておりません。主人様の寵愛を賜るほどのことは……」
「これからの期待もあるし。嫌かな?」
「嫌などということは決してありません!有難くお受け致します!」
あまりセシルとは深く話をしたことがなかったけど、実は凄く素直で感受性が強い女性なのではないだろうか。
かっこいい黒ローブの中に身につけている下着もあんなに可愛らしいのも内面をあらわしているのではないだろうか?
僕は彼女の隠れた心の内が気になっていた。




