表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/86

アーバスラム最強の男

というわけで、町の家屋の修繕をおこなうために僕が召喚した人物。


それはもちろん熱いNバトルを繰り広げた……、



「って、なんで二人もいるんですか」


町の入り口に2台の荷馬車と2人の男。

1人はスキンヘッドで少し無精髭を生やした筋肉質の中年男性。

もう1人は黒髪にヒョロリとした体格の若年男性だ。

相変わらず2人は睨み合っていた。


「俺の方が速かったろ!」


「いいや、俺だ!」


またやってんのか、この2人。

そいえば結局、前回のレース(?)はどちらが勝ったのかわからない。

いや、勝敗なんてどうでもいいんだけどさ。


「なんで二人も来たんです?僕が呼んだのはジェイルさんだけのはずですが」


ジェイルさんとはNMW735を操る、元特殊部隊の傭兵で消耗品の走り屋ステイサム。

現在の仕事が建築家ということで、エヌス・ヤタの家屋の修繕を頼んだ。


「こいつが勝手についてきたんだよ!ゆっくり走ってたら追い抜きやがって」


「別にいいじゃないか。街道バトルは突然起こるんだ。おかげで早く着いたろ」


そう言ったのはN86を乗りこなすヒョロ男のタクミウスだ。

相変わらずのコジロウ声で実家のような安心感がある。


まぁ、でも確かに早かった。

3日くらい前に手紙を送ったばかりだぞ。


「俺だって町の復興ぐらい手伝える、なにせ俺の仕事は……」


「いや、大体わかるから大丈夫です」


「え?」


カーブがやたらと速い豆腐屋でしょ。

一体、豆腐屋が町の復興の何を手伝えるというのか。


「とにかく町の修繕をお願いします。人手が欲しいのであれば町に来ている冒険者に依頼を出しますので」


「了解した。だが、これは時間と金が掛かるぞ、町をパッと見ただけでわかる」


「そりゃそうですよね……」


そんな会話をしていると、僕の後ろに気配を感じる。

振り向くとそこには腰のあたりからスリットの入った黒いローブと頭にフードを被った背の高い女性がいた。


魔神セシル・アクアリュウムだ。

彼女には外に出る時は"黒い角"を隠すように言ってある。

冒険者や旅商人に変な噂を広められても困るからね。

尻尾はどうしようもないからイヴの鎧同様、服の飾りで通すしかなかった。


「資金面ならご心配無く。この町には、ある程度の貯えがありますので」


口元だけがかろうじて見える状態のセシルが言った。


「貯えなんてあるの?」


「ええ、エリシアが貯めていたようです。何のためかは知りませんが」


「それって使っていいの?エリシアさんのお金でしょ?」


「何を言ってるのです、現在エリシアはシオン様の所有物ですから、エリシアのモノはシオン様のモノです」


なんだそのガキ大将理論は。

とは言っても、今はお金は必要だから少しの間だけ借りよう。

とりあえず町が復興できて、利回りがよくなったらエリシアさんにはちゃんと返さないとな。


「じゃあジェイルさん、町の方をお願いします。何か足りないものとかあれば言って下さい。すぐに手配させます」


「了解だ。俺に任せておけ」


渋いステイサム声で言われると頼もしいな。

2人は僕らに手振りつつ、睨み合いながら町の中へと入っていった。


残された僕とセシル。


「シオン様、町の住民のスキル選抜の件でお話が」


「う、うん」


「この町にいる住民で使えそうなスキルを持った人間が少ないく、選抜に時間が掛かっております。もうしばらくお待ち頂くことになるかと……申し訳ございません」


「別に大丈夫だよ。それより住民には優しくね。みんなには早く普通の暮らしに戻ってほしいからさ」


「かしこまりました」


言ってセシルは、その大きく膨らむ胸に手を当てて軽くお辞儀した。


「でもスキルの選抜なんて必要なのかな……?」


「もちろんです。弱いスキルに無駄な時間を掛けてはいられません。優秀なスキルを早急に手に入れ、シオン様には"北西地方の覇者"になってもらわねば」


「は、覇者……?」


「ええ。私が知る限り()()ほど厄介な人間がおりますが……それでも、この東を制覇できれば必ずアーバスラム地方の支配者となれます」


凄まじいビッグプロジェクトを掲げられていて僕は言葉を失う。

多分、イヴもノリノリでいるのだろう。

ここに姿を現さないということはスキル選抜に躍起やっきになってるに違いない。


「もしかして、その二人と戦わないといけないの?」


「可能性はあります。特に【西の白狼はくろう】とは一戦、まじえることになりましょう」


白狼は聞いたことがある。

確か騎士のランジェリカさんの従者が言ってた人だな。

あの時の口ぶりを思い出すに、恐らく"白狼"とは勇者候補なのだろう。


「その人って強いの?」


「はい。"白狼"は大陸トップクラスの勇者候補である王国六聖勇士の一人で、アーバスラムの西側を仕切っている騎士団の長です。現在、この地方では間違いなく最強の男でしょう」


紹介文が強すぎる。

声色変えずに凄いこと言ってるぞ。


「彼がいるから私たちはアーバスラム地方を落とせずにいるのです」


「魔神が揃っても倒せないのに、僕なんかに倒せるわけないでしょ……」


「まぁ、"倒す"というのが、"殺す"の意味であれば不可能な事ですからね」


「どういうこと?」


「白狼の勇者スキルです。彼は()()()()のです」


「は?」


「"他者から殺されない"というのが白狼の勇者スキルですから。だから彼を殺すのは()()、つまり老死しかありえない」


これまた、とんでもないスーパーチートスキル。

よくある"主人公補正"なんて言っても差し支えない。

じゃあ、その白狼ってどうやって倒すの?

"他者に殺されない"というスキルを持った人間をいかにして攻略するのか……それを考えなければならないということだ。


いやいや、僕の目的は魔王討伐であって世界制覇ではない。


できることなら、その"白狼"という人物には会いたくないが……。


しかし、そんな僕の願いを無視するように、思いのほか早い段階で僕は"白狼"に出会うことになるのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ