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それは恐らく片鱗

父の話では15歳になると総じて人はスキルを発現し始める。

そしてスキルに応じた経験を積むことでレベルが上がり、さらに新しいスキルを習得することができるという。


さらに人間は体の成長に応じて体を流れる"魔力"もわかるようになり、魔法も使えるようになる……らしい。


"らしい"というのには理由があって、僕は成長しても全く魔力を感じなかったのだ。

父と母は"うちの息子は大器晩成型なんだ"と僕を最後まで信じてくれた。


それがなんとも悲壮感が漂っていて、見ているこっちが悲しくなった。


__________



僕が10歳になる頃。

(前世と年齢を合わせると25歳くらい)


近所では同い年の子供が数人いる中、僕はミナちゃんという女の子とよく遊んだ。


というより遊ばれていた。


「ちょっとシオン!もっとしかっりしなさい!あんた男でしょ!」


「う、うん、ごめん」


「だから、そうやってすぐに謝んないの!」


「ご、ごめん」


ミナちゃんは村で一番、可愛いと言われている女の子だ。

ただ、そのツンツンした性格から友達は僕しかいなかった。


遊ぶといえば川で"魚取り対決"や森で"木登り競争"など男の子っぽい遊びが多い。

最初は僕が圧勝していたが、ミナちゃんが魔力を感じれるようになってからは魔法を使われ始めて全く勝てなくなった。

そんなミナちゃんは冒険者に憧れているようで、将来は村を出るのが夢だとか。



そんなミナちゃんといつものように川で遊んでからの帰宅途中。


夕刻の肌寒い風が吹く頃だった。


前を歩くミナちゃんが不意に言った。


「シオンのスキルってどんなのかしらね?まぁ、こんなシオンのことだから"勇者のスキル"って言っても大した事なさそうよね」


「う、うん……」


「ちょっと!そこは否定しなさいよ!」


「ほんとに大した事ないスキルだからさ……」


「え?」


疲れて油断していた。

僕はもうスキルの内容を知っているが他の人は知らない。


「シオンはもう自分のスキル知ってるの!?」


「え……いやぁ……そのぉ……」


「教えてよ!!」


ミナちゃんは目を輝かせて僕に近寄ってくる。

こうなった彼女はもう止められない。

スキルの内容を聞き出すためなら地の果てまで追ってくるだろう。


「どんな能力なの!?」


「え、えーと……言うなれば『猫が実家のおばあちゃんの膝の上で気持ちよく寝れる』スキルかな」


「は?意味わかんないんだけど!スキルの名前はなんなのよ!」


僕は俯きつつ、意を決して"そのスキルの名"を口にした。


「『従属オビディエンス』……」


「……」


反応が無かった。

僕はミナちゃんを見る。

なぜか彼女は虚な目をしていて、ただボーとして立っていた。


「ミナちゃん?」


「……シオン」


「ど、どうしたの?」


「シオンは……私に何かしてほしいことはある?」


どういう意味だろう?

彼女の質問の意図が全くわからない。

それより、いつものミナちゃんではないような……。


「シオンの好きなことしてあげる」


僕の胸は高鳴った。

一体、何が起こっているのかはわからないが、あの男勝りなミナちゃんが女の子のようだ……。

いや、これはさすがにミナちゃんに失礼か。


「いや、特には無いけど……」


「それじゃあダメ。私はシオンこと大好きだから何かしてあげたいの」


「え……」


「私はシオンのお願いならなんでも聞くから。どんなことでもいい、言って?」


ミナちゃんは、とろけそうな目で僕をじっと見つめてきた。

何かがおかしい、そう思いながらも鼓動が早くなる。

僕の理性は感情を抑えきれなかった。


「じ、じゃあ……ぼ、ぼ、ぼ、僕を……」


言いかけた瞬間、ミナちゃんはハッとした表情をした。


「あれ……私……どうしちゃったんだろ」


「ミナちゃん?」


ミナちゃんの顔がどんどん赤くなる。

そして悲鳴にも似た声を放ちながら走り去っていった。


置き去りにされた僕は道の真ん中で立ち尽くす。

すると突然、


「痛っ……」


左手の甲に痛みを感じる。

見ると"黒い竜の紋章"から血が流れ出していた。


そして、


【レベルが上がりました】


一瞬のことすぎて、どこから聞こえてきた声なのかわからなかった。

男が女かも判別できない声だ。


周りを見渡しても誰もいない。


今、思い返せば、この時から僕の"奇妙なスキル能力"は片鱗を見せていたのだ。

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