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夢の中で知る、この町の真実


夢を見ていた。


夢の中の僕は薄暗い洞窟にいる。

湿気があって、冷んやり肌寒い。


この場所は広いドーム状になっていて閉鎖空間。

そのため日の光は一切、届いていない。

岩肌に等間隔で設置してある松明の灯りによって、かろうじて周囲が見えている。

地面は思った以上に平らかで、明らかに人為的に作られた空間であると感じた。


なによりも気になったのは中央、天井に無数の鎖で繋がられ吊るされた巨大な菱形ひしがたのアヴァロ魔鉱石だ。


形が従来のものとは違う。

これが、この町の転移の石碑……?



『やはり、お前が元凶だったか』


僕の……いや、"わたし"の前にいる漆黒の鎧を着た女性が言った。

彼女は、わたし達の数メートル先で佇む"人物"へ向けて凄まじいほどの殺気を放っている。


「やはり……というのは、ずっと私を疑っていたということですか。いつからです?」


『会った時からだ』


「なぜ?」


『お前から異常に魔物の匂いがする。それだけじゃない。この町、全体がそうだ』


「匂い……。それに''この場所''がエヌス・ヤタだとわかるのですか?」


『ああ。町の地下だろう』


「凄いですね」


数メートル先にいる"人物"がニコリと笑った。


彼女は紫色の長い髪を軽く掻き上げる。

白いレースのロングワンピース。

上半身には胸元を覆う程度の大きさの銀の鎧を纏い、手には大きな鉄杖を持っている女性。


「エリシアさん……なんで?」


思わず声が漏れた。

エリシアさんは無表情に答える。


「ファリスさん、信じ難いかもしれませんが、この町はもう無いんですよ」


「ど、どういう意味ですか?」


「エヌス・ヤタの町は前回の魔物の侵攻によって滅んだのです」


「でも……町はあるじゃないですか」


「見た目はね。でも実際は存在していない。今、我々の町は魔王軍の支配下にあります」


わたしは言葉を失った。

この町は魔物除けのアヴァロ魔鉱石は破壊されて町の中もボロボロではあったが、普通に人間が生活している。

冒険者たちや商人などの出入りもあるのだ。


ちゃんと町としての機能を果たしているのに……。


エリシアさんは続ける。


「違和感を感じる人もいますよ。だって町の人間は"若い女だけ"ですからね。男や老人はどうしたのか?そんな疑問を抱く人間は少なからずいる」


町の入り口にある立て看板には、


"老人を大事にしましょう"


そう書かれてはいるが、町には老人の姿は見当たらない。

疑問に思わなかったわけではないけど、大して深くも考えなかった。


「イヴさん、あなたならわかるでしょう。この意味が」


『全員、魔物に食わせたのだろ?』


「御名答」


『"魔獣グリム・リーパー"が自然に生まれるというのは稀。今回の場合、アレの出現は意図的なものに感じた。となれば魔獣を生み出すための()()であったと考えるのが妥当だ』


計画?

エリシアさんは魔獣を作るために町の男や老人を魔物の餌にしてた。

もしかして、この町はそのためにあるのか?


『冒険者たちも食わせていたのだろう。森に設置してあった"大量の罠"と"必要もない案内人"はそのためのものだ』


「これは全て、私たちが助かるための道だった。致し方ないことなのです」


『魂を売ったのか』


「どう言われようと構いませんよ。私は我が主人に仕えるだけ」


『確証が無かったがハッキリした。お前を操っているのは"あの男"だな?』


"あの男"とは誰のことを指しているのか?

私が思考していると、エリシアさんの後ろに巨大な影が見えた。


その影から野太い声がする。


「誰かと思えばイヴ・ガルハートではないか。結局、オレの可愛いペットを見に来たのか?」


どこからか入ってきた、その影の全容を見た瞬間、わたしは失禁しそうになった。


そして一瞬にして悟る。


"わたしはここで死ぬ"


今までに見たこともない"恐怖"と"絶望"がそこにいたから。

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