またまた、やっぱり冒頭へと戻る
今、思えば出会いから不自然だった。
でも考えないようにしていたんだ。
"この人物"だけが、誰一人として気づかなかったことを何の躊躇いもなく口にしていた。
ファリスちゃんも、エイジさんも、エリシアさんも。
誰もわからなかったことだ。
いや、僕ですらも最初はわからなかった。
でも、この人物は出会った瞬間に、
「ダンナや"お姉様方"に助けて頂けて感謝の極み!一生ついていきやす!」
そう言った。
"お姉様方"とは明らかに複数の女性を意味する。
だけど、この時点だと漆黒の鎧を纏ったイヴ・ガルハートは一言も言葉を発さずにいた。
さらにイヴは女性にしては少し低い声をしている。
だから鎧を着ている状態だと話している時も、男なのか女なのか判別できない。
だから、もしイヴの声を聞いていたとしても、鎧の中身が女性であることを判断することは不可能に近いのだ。
なのに"この人物"は全身鎧姿のイヴを、声すら聞かずに女性であると断定した。
そうなると……"この人物"はイヴ・ガルハートという女性を知っているということになる。
イヴを魔神と知って落ち着いて行動できるということは決して人間ではない。
そんなの同じ魔神しかありえないじゃないか。
"この人物"は最初から全てわかった状態で、僕たちと行動を共にしていたんだ。
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首の無い、"ハム・エッグ"の体は砂嵐に包まれている。
「『偽装』を解除」
若い女性の声がした。
「イヴを虜にするほどの人間とは、どれほどかと思ったのですが。まさか、この程度の寒さで倒れるとは……」
女性が纏っていた"砂嵐"が消えていき、徐々に人物の姿が露わになった。
長い青髪のポニーテールで眼鏡をかけた女性だ。
細身で白い肌の体にフィットしたノースリーブの黒いローブは足元まであり、片側は腰のあたりまでスリッドが入っていて脚が露出している。
足には黒いヒールブーツを履いていた。
イヴほどではないが張りのある胸。
両耳の上に2本の短めの黒い角、お尻には黒い甲殻の尻尾。
そして左手には大きな魔導書が広げられてあった。
「最後に言い残すことはありますか?イヴに伝えておきましょう」
「……」
「なんです?」
「……す」
「ああ、凍えて声も出せないのですね」
女性は膝をつく。
もみあげの長い青髪を上品に指でなぞって耳にかけながら僕に顔を近づけた。
彼女はとても美しい顔立ちで、見た目から知的な雰囲気を醸し出していた。
「なんです?」
「お…………え……す」
「え?」
「……『従属』」
「……」
女性は停止した。
周囲で聞こえていた暴風音も止む。
「私は……なんということを……」
そう呟いて女性は立ち上がる。
少しの間、僕を見つめているが、その目は徐々に虚になっていく。
彼女は一歩下がってから持っていた魔導書を閉じて跪き、倒れる僕に対して言った。
「この償いは……私、第五総魔将フロストタクティションの"セシル・アクアリュウム"が全身をもって代えさせて頂きます」
自分の犯した過ちを悔やんいるのか、顔面蒼白となったセシルは眼鏡の奥の瞳に涙を浮かべていた。
セシルと名乗った女性はすぐに立ち上がると着ていたローブを捲り上げながら脱ぐ。
露わになったのは花柄ピンク色の下着でワンポイントリボンのついた可愛いブラとショーツだった。
セシルという女性はとても知的に見えるが、実はこういうのが好きなのだろう。
「お見苦しいかもしれませんが、これが最も最善の策です」
そう言ってブラジャーとショーツも脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿となった。
そして足を大きく広げて、ちょうど僕の下半身のあたりを跨ぐと見下げるように立つ。
その肉肉しさがないスレンダーで綺麗な体と対極的な豊満なボディを見て、寒さで死にそうな僕でも胸が高鳴る。
「失礼いたします……」
彼女は顔を赤らめながら足をM字に開脚して、しゃがみ込むと優しく僕の服を脱がせていった。
そして遂に僕自身も裸体を晒す。
凍った大地が冷たい。
もう気を失いそうだ。
「"岩の城壁"」
セシルが呟くように言った。
すると僕とセシルを取り囲むようにして、高さ30センチほどの小さな円形状の岩の壁ができる。
さらにセシルが、
「"火熱の陣"」
と言った瞬間、僕の背中の氷が溶けて水となり、さらに適度な熱によって温水となる。
これは間違いなく"お風呂"だ。
考えてもみると異世界に来てから一度も経験していない。
「お体、失礼致します」
セシルはお風呂の中で僕の体を包み込むようにして抱いてくれた。
セシルの体は熱を帯びていて、温水と相まって暖かい。
僕は初めて女性と一緒に、お風呂に入ったのだ。
多分、セシルも初めてなのだろう。
彼女の胸から心臓の鼓動音が伝わってくるけど、それはとても早くて緊張しているのがわかった。
とても気持ちよくて、体の疲れもあったからか、僕はそのまま気を失ってしまった。




