強敵現る、その名もグリム・リーパー
マッスルボマー・エイジさんの進行は完璧だった。
イヴが言う、森の中は誰が罠だらけというのは事実のようだ。
地面をよく見るとトラバサミなどが等間隔に設置され、地面の色が変に違っていたり(多分、落とし穴とか網とかかな)と明らかに人為的な罠がある。
先行するエイジさんは、
「この道はワタシの筋肉が危険だと言っている」
とかなんとか言って上手く罠を回避していた。
実はめちゃくちゃ有能な人なのではないだろうか。
いや……逆に怪しい?
実はエイジさんはすでに罠の場所を知っているから、こんな動きができるとも考えられる。
仲間を疑いたくはないけど前例もあるから、警戒は怠らないようにしないとな。
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雲に覆われた空。
ひんやりとした風が吹く。
僕らは、ようやく森を抜けて開けた場所に出た。
"遺跡"と呼ばれるところは石が積み上げられた寺院のような作りだった。
しかし今はほとんど崩壊し、穴だらけで建物と呼べるものではない。
そんな遺跡に静けさに包まれていた。
他のパーティーはここまで辿り着けていないようだ。
「もしかして……僕たちだけ?」
違和感があった。
ギルドで作ったパーティーは10もあったのに、森を抜けられたのは僕らだけだ。
まさか僕ら以外、全滅?
50人はいた冒険者が誰一人ここまで来れないなんておかしい。
僕の分析はエリシアさんの言葉で遮れる。
「考えていても仕方ないですから進みましょう。引き続きエイジさんに前衛をお願いして、次にハム・エッグさん、シオンさん、ファリスさん、私、イヴさんの順で進みましょうか」
やっぱりリーダーシップ取れる人がいると心強い。
エリシアさんがパーティーにいれば最強クラスと言われるグリム・リーパーも難なく倒せそうだ。
僕らは指示通り、隊列を組んだ。
そして数十メートル先にある寺院の遺跡へと進む。
周囲を警戒しつつ、歩いていると突然、
「なによこれ!!」
後方からの叫びが聞こえた。
ファリスちゃんの声だ。
僕はすぐに振り向く。
すると青色の眩い光に包まれたファリスちゃん、エリシアさん、イヴが一瞬のうちに消えてしまった。
「え?どうなってるの!?」
見覚えがある青い光。
それは"転移"の時に発生する光だ。
でもエヌス・ヤタの転移の石碑は壊れていた。
じゃあ……女性陣3人は一体、何処に行っちゃったの?
困惑していると、さらに寺院の方からドン!という轟音が響く。
「こ、今度はなんだ!?」
風圧を背中に感じてから、僕が再度、振り向くと土埃が巻き上がる中に"黒い小さな影"が見える。
次第にそれが消えていき、黒い小さな影の正体が露わになった。
その姿にハム・エッグが体を震わせながら怯えた声で呟く。
「な、なんでゲスか……あれは……」
「こんな時に"グリム・リーパー"か」
「あれが最強クラスの魔獣……?」
一言で表現するなら"人間"。
それは魔獣と呼ぶには些か違和感がある。
グリム・リーパーは全身が真っ黒だが、どう見ても人間の少女のような体型だ。
顔面はくり抜かれたようにへこんでいて、そこからは感情なんてものは読み取れない。
"怪獣"と形容するよりも"怪人" (?)と言ったほうがしっくりくる。
体は小さい、しかし、そこから放たれる禍々しい黒いオーラはグレイト・グリズリーなんて比にならないほどだ。
緊張感が増す中、30メートルほど離れた場所に立っているグリム・リーパーは、ゆっくりと拳を前にかざした。
「マズイ……!!」
動いたのはエイジさんだった。
すぐさま、しゃがみ込むようにして地面を殴っると畳2枚ほどの大きさの"土壁"が正面に出現する。
その瞬間、凄まじい爆風が吹き荒れて土壁が壊れ、エイジさんと僕、そして僕の斜め前にいたハム・エッグが数メートル後方へと吹き飛ばされた。
僕は何度も地面を転がり、ようやく止まる。
倒れてしまったがダメージはない。
ちょうどエイジさんが作ってくれた土壁の後ろにいたから助かったのか。
前にはエイジさんが片膝をつき、腕で頬を拭う仕草をした。
「危なかったな……腹直筋と大腿四頭筋の鍛えが甘かったら死んでいた」
表情にいつもの余裕は無い。
それもそうだ……魔法でもなんでもなく、ただグリム・リーパーはかざした拳を"パッ"と広げただけで今の爆風を作り出したのだから。
「ハム・エッグは……?」
僕は上体を起こして周囲を見た。
後方、うつ伏せで倒れたハム・エッグ。
いや、ハム・エッグだったもの。
首から上が無かった。
僕は言葉を失う。
ここまで一緒だったのに、こんなに呆気なく死ぬのか?
ゼイバーさんの時もそうだったけど、今回は何かが違った。
「少年、どうやら君とワタシだけでグリム・リーパーを討伐せねばならぬようだ」
エイジさんの言葉で僕の視線はグリム・リーパーへと向かう。
なんだろうか、この感情は……。
言うなれば燃え盛る炎が心臓から全身へと広がっていくような感覚。
僕は立ち上がって腰に差したダガーを引き抜いて逆手で持った。
「アレを使う」
僕が……いや、俺が貴様を倒す。




