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魔物の群れ、誰かの罠

"魔獣"は魔物の上位。

魔物が人間を喰らい続けると成る存在。


魔獣は成長していくと下級の魔物を支配できるようになる。


そして魔獣を使役できるのが魔神。


魔神たちが魔獣の群れを従えて部隊を作り、人間の国を滅ぼすために侵攻している。


__________



森林内、各所でおこなわれているであろう魔物戦。

僕らも、ちょうど只中にいると言ってもいい。

周囲には沢山の黒い影がうごめいていた。


「取り囲まれてる……」


僕の目には数体ほどは確認できるが、実際はもっといるのだろう。

空中にもバサバサと黒い何かが無数に飛んでいた。


自然と汗が額から流れる。


「数は多いですが、私たちなら対処できます」


この状況でもエリシアさんは落ち着いていた。

パーティーの全員が臨戦体勢を取る。


まずは正面から、二匹の黒い狼型の魔物がサイドステップを踏みつつ攻めてくる。


「ほう。このワタシの筋肉を見ても恐れんとはね」


まぁ、相手は魔物だからね。

恐れるもなにも感情的なものがあるかどうかは不明だ。


狼型の魔物はエイジさん目掛けて飛び込む。

鋭い牙での噛みつき攻撃と予測できた。


だけどエイジさんは全く動じない。


「ふん!!」


エイジさんがおこなったのは地面を拳で殴るという行動だった。

するとブラウン色の粒子が無数に飛び、その瞬間、地面から畳ほどの大きさの土壁が現れた。


「マッスル・ウォール!!」


どう見ても"土の魔法"だった。

いやいや、その鍛え上げられた肉体で攻撃しないのかい。


土壁が崩れると怯んだ狼型の魔物がエイジさんの目の前にいた。


「マッスル・グレートヘッドバァット!!」


魔物の眉間にエイジさんの頭突きが炸裂。

さらに、もう一匹の魔物に対しても、


「マッスル・ウォール!マッスル・グレートヘッドバット!」


"土壁"からの"頭突き"。

魔物はどちらも地面に叩きつけられて灰になる。


「鍛えが甘い!お前たちの筋肉から悲しみの叫びが聞こえるぞ!」


だから鍛え上げられた肉体で攻撃しないのかい。

それより僕が思うに"頭"って鍛えられないと思うんですよ。

全然、"マッスル"ではない。



次の魔物の攻めは横方向から来た。

昨日、戦った黒い猿型の魔物だ。

体は小さいが腕が長くて凶暴性がある。


それが三匹。


対応するのはハム・エッグ。

ようやく彼の実力が見れるのか。


「う、うわぁーー!来るなら来いでゲス!」


ハム・エッグは目を閉じて両手を振り回すだけだ。

なんと予想以上のポンコツっぷり。

誰がこいつを連れてきたんだ。


「あんたは下がってなさい!」


そう叫んだのはファリスちゃんだ。

後ろ腰の短刀を引き抜いて逆手で構える。


そして、


「先手必勝!秘技・"破魔風爪はまふうそう"!」


突っ込んでくる猿型の魔物へと2度、短刀を振った。

爆風の斬撃は高速回転して手裏剣のように飛び、同時に二匹の魔物を真っ二つにして灰にする。


もう一匹は倒された二匹の後ろに隠れていて無傷。


短刀を振り終えたファリスちゃんの隙をつこうと突っ込んできた。


「"影翔かげとび"」


ファリスちゃんは一瞬で、その場から姿を消す。

そして気づいた時には猿型の魔物の背後におり、短刀を首筋に突き刺していた。


「"突風陣とっぷうじん"」


荒れ狂う突風によって魔物は爆散。

あまりにもハイスピードな展開だった。



魔物は空にもいた。

辺りを飛び回っている黒い影。

カラスのようにも見える魔物が数十はいる。


「空中の魔物は私が」


エリシアさんは大きな鉄杖を構えて詠唱した。

鉄杖は神々しい金色の光を放ち、彼女の紫色の長い髪が靡く。


「"ディバイン・ライズ"」


鉄杖から放たれた小さな光の球が空へと一直線に向かい、そして魔物の群れに到達すると音もなく光り輝いた。

空にいた魔物たちは一瞬にして灰と化す。


光の魔法って、こんなに強いのか……。

いや勇者候補だからステータスが高いのかもしれない。

どちらにせよ勇者スキル無しでこの強さなら、前回の魔物の侵攻に勝利を収めたというのも頷けた。



スムーズに魔物の群れを処理できたのはいいけど、僕とイヴは何もやってないぞ。

あとハム・エッグもか。


僕はため息をつくと、すぐに先頭にいるエイジさんが声を荒げた。


「気をつけるんだ!何か様子がおかしいぞ!」


一気に緊張感が増す。

皆が無言となって静寂が広がるかと思ったが……、



"うぁぁぁーー!!"


"助けてくれぇー!!"


"なんだこれはー!!"



森には"男性の冒険者"と思われる者たちの悲鳴が響き渡っていた。


すると後ろにいたイヴが僕の耳元で小声で言った。


『シオン様、この一帯は罠だらけです。誰が設置したものかはわかりませんが、足元にご注意を』


"罠"って一体どういうことだ?

考えるに魔物を足止めするために設置されていると考えるのが妥当だ。

だけど、さっきの魔物の動きを見るにヤツらは罠の位置を知ってた?



僕が思考していると、隣にいたエリシアさんが口を開く。


「とにかく今は遺跡まで進みましょう。恐らく、そこがグリム・リーパーの住処です」


エリシアさんの言う通りだ。

僕らの目的は魔獣グリム・リーパーの討伐。

どんなことをしてでもこれを達成しなければ町に被害が及ぶ可能性がある。


他のパーティーのことは気になるけど、それでも僕たちはエリシアさんの指示通り、森の奥にある遺跡へと進むことを選んだ。

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