トップクラスの魔獣の影
僕とイヴは、見た目は世紀末、頭脳は聡明のハム・エッグと共にギルドへと入った。
ギルド内の作りは"ボロボロ"という部分以外、ラーグ・グレイスと町とほぼ変わらない。
正面奥に受付カウンター、右端には大きな依頼掲示板、左端にテーブルとスツールがいくつか置かれた談話スペース。
受付カウンターの中には階段があって、2階はベランダのようになっていた。
中には50人ほどの男女の冒険者がガヤガヤと隣同士で会話している。
僕は入り口付近で周りを見渡しながらファリスちゃんを探していると、2階に人の姿が見えた。
その瞬間、あれほど騒がしかった冒険者たちが一斉に黙った。
「本日は、お集まり頂き感謝しております」
2階に現れたのは若い女性だった。
年齢的には二十代前半くらいかな。
長い紫色の髪、白いレースのロングワンピース。
上半身には胸元を覆う程度の大きさの銀の鎧を纏い、手には大きな鉄杖を持っている。
とても落ち着いていて可憐な印象だ。
「私がこのギルドの長を務めております、"エリシア・ラバロ"です」
……え?
ということは、この女性が勇者候補?
イメージだと"凄いもみあげのウェポン・ジャックマン"だったんだけど。
まさかの勇者候補"X"が、こんなに美しい清楚系女子だったなんて。
「ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、この町から少し離れた場所にある遺跡付近にて二匹の魔獣が確認されました」
冒険者たちが息を呑む。
構わずエリシアさんは淡々と話を進めた。
「いずれ、この町に被害が及ぶことは必然。皆さんの力をお貸しください」
ここにいる全員が魔獣の危険性を知っている様子だった。
僕も間近で見たけど、あの大きさと凶暴性は普通であれば大人数で対処しなければならない存在だろう。
「一匹は"グリム・リーパー"です」
ギルド内がざわついた。
名前からして危険度が高そうだ。
僕は振り向いてイヴに説明を求める。
『グリム・リーパーはかなり強力な魔獣です。ここにいる冒険者を見る限り、全員で挑んでも全滅の可能性があります』
「え……そんなに強いの?」
『ええ。魔獣ではトップクラスです』
冷静に語るイヴに僕は唖然とする。
いやいや、さすがにトップクラスの魔獣と戦うなんて早過ぎる気がする。
まだ僕の旅は始まったばかりだ。
『誰かが使役してなければいいのですが』
「使役?」
『はい。他の魔神が関わっていなければ、私が使役してすぐに解決できますが……』
イヴが言いかけると、エリシアさんが話を続けた。
「もう一匹は"グレイト・グリズリー"です」
また周囲がざわつく。
これもまた強そうな名前だ。
……ん?ちょっと待てよ。
"グレイト・グリズリー"?
それって、もしかして昨日の魔獣かな。
すると僕の前にいたモヒカン世紀末男、ハム・エッグが元気よく手を上げて、
「それは昨日、こちらのダンナとそっちにいる姉御が倒したでゲス!!」
そう叫んだ。
前言撤回。
見た目は世紀末だが、聡明ではない。
ハム・エッグ……この男の頭はどうかしている。
冒険者たちが僕と離れた所に立っていたファリスちゃんを交互に見た。
あそこにいたのかファリスちゃん……。
彼女は焦ったの様子でキョロキョロと周りを見て顔を赤らめ俯く。
こんなことで注目を集めるとは思わなかったのだろう。
いや、そもそも僕とファリスちゃんは何もやってない。
倒したのはイヴ……いや、イヴが召喚した怪獣(?)なんだけど。
冒険者たちは僕とファリスちゃんへ半信半疑の視線を向ける。
そりゃそうだ、ここにいる冒険者に比べたら僕たちは子供みたいに見えるからね。
だけど、もうここまできたら否定するにもできない状況だ。
そんな中、それ以上の鋭い眼光を感じた。
それは2階から僕らを見下ろしているエリシアさんだった。
驚愕といった表情。
なぜか彼女からは"嬉しさ"、"感謝"のようなものは感じられなかった。
だけど、すぐにエリシアさんは笑顔になる。
「それは凄い。では、あとはグリム・リーパーだけだということですね」
そう言って胸を撫で下ろすような仕草をして続ける。
「グリム・リーパーはとても強力な魔獣ですが、ここにいる全員で協力し合えば必ず討伐できます」
エリシアさんはリーダシップに優れているのか、今の言葉で冒険者たちの士気が高まった気がした。
「しかし、皆でゾロゾロと行っては統率に問題が生じることでしょう。私どもでパーティー編成をおこないますので、それぞれのパーティーで役割を決めてグリム・リーパー討伐を目指しましょう」
つまり、ここにいる50人ほどの冒険者が数人のパーティーに分かれる。
そこから前衛、後衛などを決めてグリム・リーパーを見つけ次第、パーティーごとに攻撃を仕掛けて討伐するということだろう。
ということで、まず僕たちはギルド長であるエリシアさんが決めたパーティーに分かれることになった。




