人を見た目や名前で判断すべからず
太陽の光差し込む森林地帯の開けた場所。
ここで繰り広げられた熱い戦いが終わった……。
一部始終を目撃した僕は感動していた。
「異世界……最高……」
そう思わず呟く。
まさか"女幹部"に止まらず、"怪獣"(?)もいるなんて思いもよらなかった。
さらに怪獣(?)同士の戦いも見れるとは。
僕が天を見上げて思いにふけっていると鎧姿のイヴがこちらち歩いてきた。
そして、
『シオン様、大変、申し訳ございませんでした……』
そう言って跪き、深く頭を下げるイヴ。
隣で見ていたファリスちゃんは何事かと驚く。
『シオン様をお守りするのが私の役目……まさかこような不祥事を起こすなど、あってはならないこと』
「いやいや、僕はすごく楽しかったからいいんだけど……」
『それでは私が納得できません!どうか、この私に罰をお与え下さい!』
「罰って言ってもなぁ」
僕の隣で聞いていたファリスちゃんは終始、困惑した様子だった。
そりゃそうだ、空から降ってきて、怪獣(?)呼び出してバトルさせて、最後には罰与えてくれって言ってるんだから。
案の定、ファリスちゃんから言葉が漏れる。
「あ、あんたら、仲間同士じゃなかったの?」
「うん……実は守ってもらってるんだよね。ほ、ほら、僕って勇者候補だからさ……」
「へー、そう」
全く信じてない顔。
そりゃ僕よりイヴの方が強そうだからなぁ。
だけど、それ以外、何も思い浮かばないぞ……。
そんなやりとりをしていると先ほど助けた冒険者が笑顔でこちらに走り寄ってきた。
イヴは警戒してか、立ち上がって僕らの前に立つ。
さっきはあまり気にしてなかったけど、この冒険者の格好が異様だった。
見るからに世紀末。
黒いレザージャケットにレザーパンツ。
肩パッドにトゲトゲがついている。
さらに茶髪のモヒカンという、ある意味で怪獣(?)を超えるインパクトがあった。
ちなみに年齢は20代前半くらいだろう。
「どうもー、さきほどは助かったでゲス!」
"ゲス"?
なんだ、その金持ちミニ四レーサーみたいな語尾は。
見た目とギャップありすぎる。
「いやぁ、拙者はまだ駆け出しゆえ、どう切り抜けていいかわからず……」
もはや設定が散らかりすぎて訳がわからない。
ただ一つ言えることは、この冒険者とは関わらない方がいいということ。
「あなた名前は?なんで、こんなところにいるの?」
とファリスちゃん。
「小生、"ハム・エッグ"と申します」
予想の斜め上をいくキラキラネーム。
見た目が世紀末の茶髪モヒカンで名前がハムエッグとなれば絶対にここでお別れしたほうがいい。
「お恥ずかしながらステータスが弱すぎてギルド最弱のレッテルを貼られてしまい、一番、簡単な仕事である、"薬草採取"を受けて森に入ったでゲス」
マズイな……一気に近づいてきたぞ。
まぁ、見た目や名前で人を判断するのはよくないよね……。
「初仕事で張り切って来たのはよかったんでゲスが、まさか、あんな化け物と出くわすとは」
まさか初仕事で薬草採取に来てパッケージモンスターと出会ってしまったのか。
運が悪すぎる男、ハム・エッグ。
「でも、ダンナやお姉様方に助けて頂けて感謝の極み!一生ついていきやす!」
満面の笑みでハム・エッグが言った。
'ダンナ"とか"お姉様方"とか……見る限り僕とファリスちゃんは年下じゃないかな?
その前に僕とファリスちゃんは何もしてない。
「それでダンナたちはどうしてここに?」
「ああ、僕たちはエヌス・ヤタを目指していて、途中で崖から落ちてしまって……」
「あらら、それは災難でしたね!エヌス・ヤタは拙者が今、滞在している町でゲスよ!案内するでゲス!」
僕とファリスちゃんは顔を見合わせる。
このモヒカン男のハム・エッグからは悪意などは感じられない。
ついて行っても問題はないのではないか。
「イヴはどう思う?」
『私はシオン様に従います』
「じゃあ……案内お願いしようかな」
「ガッテン承知の助!お任せ下さい!」
こうして僕らはハム・エッグと名乗る駆け出し冒険者の案内で、当初の目的地である"エヌス・ヤタ"に無事に向かうことができた。
イヴへの罰は町に着くまでの間に考えよう。




