表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/21

Sランク・スキルガチャ

目を開けると、そこは真っ白な空間だった。

周りを見渡しても、ただただ驚きの白さ。

あまりにも白すぎて距離感が全く掴めない。


「ここ、どこだ?」


思い起こしてみる。

確か僕はアーケード街を歩いていてゲームセンターの前で止まり、UFOキャッチャーをプレイした。


そこで特別な何かを手に入れて、家に帰る途中に……、


「トラックに轢かれたんです!」


突然の声。

若い女性の声が白い空間に響いた。


彼女は空中からゆっくりと降り立つ。

全身に薄い白の布だけを纏ったグラマラスな女性だった。


「どうも初めまして。私は女神を営んでおります」


「は、はぁ……」


自らを"女神"と名乗った女性は金色の長い髪を靡かせつつ、こちらに近づいてくる。

ある距離まで来て、僕は彼女の肩にいた"動物"が目に入った。


それは見覚えのある猫だ。


「まさか、その猫は僕が助けようとした……?」


「そんな細かいことより、あなたはこれからのことを心配した方がいいと思います」


「これから?」


「ええ。あなたには異世界に行って頂きます。そこで魔王討伐ために勇者を目指して下さい」


「と、突然、そんなことを言われても……」


「大丈夫です。あなたは轢かれそうになった猫を助けようとするほどの優しい心を持っています。その心で必ず世界を平和に導けるでしょう」


女神さんは満面の笑みで言うと、彼女の肩に乗った猫が"ニャー"と鳴いた。

いや結局、僕と一緒に轢かれたんじゃないか。


「でも、僕には何の取り柄もないですし……」


「ご安心下さい!そんなあなたに朗報です!」


「え?」


「心優しき勇者候補の方には、"特別なスキルガチャ"をご用意しております!」


「スキル……ガチャ?」


困惑する僕を無視するかのように女神さんの後方に巨大な金色のガラポンが落ちてくる。


「これはSランク・スキルガチャです」


「そのスキルとは?」


「スキルは次の新たな世界であなたが持つ特殊能力となります。スキルは様々でレベルを上げることで成長させられます。ですが……」


「ですが?」


「もし、このSランクガチャでSランクのスキルを引くことができれば成長なんてさせなくても最初っから最強です。つまりチートなのです!」


「そ、それは凄い……でも待ってください、SランクガチャなのにSランクを引けない時もあるんですか?」


女神はキョトンとした表情をする。

そして少し苦笑しつつ言った。


「Sランクガチャは94%の確率でSランクスキルを引けますので、まず間違いなく最強のスキルを引き当てることができますよ!」


「ま、まぁ、それなら安心ですね……」


と言いつつも実は不安があった。

僕の好きなゲーム、『ハイパーロボット大戦』の確率論から言って94%ですら信用ならない。

たった6%の確率で敵に攻撃が回避されることもあるのだ。

しかも、それは意外と頻繁ひんぱんに起こる。


つまり僕は100%しか信じていない。

どこぞのロボットパイロットと違って()()()()()()()()()なのだ。


「では張り切って引いてみましょう!」


「え、ええ……でも、どうやって?」


「回転をイメージしながら、"回れ"と念じるだけで大丈夫です」


「はい……」


僕はガラポンが回るイメージをしつつ、念じてみた。

すると徐々にガラガラと中身が擦れ合う音とともに回転しだす。

そして回転に勢いが増し、その動きによって風圧が起き始める。


「一体、どんなスキルを引けるのか楽しみですね!」


「そうですね」


女神さんの前向きな発言に後押しされて僕も色んな想像をしてみた。

やっぱり、ここは声高らかに叫べる必殺技スキルがいい。

どうせなら剣で一刀両断的なカッコいい戦闘スキルを望む。


今までに見た特撮やアニメで登場した様々な必殺技を思い返していると、ガラポンの勢いが弱まっていく。


そして……


一つ、玉が飛び出して白い床を転がった。


「え……?」


玉の色は"濃い紫"で、どう見ても当たりであるとは思えない。


女神さんの表情が固まる。

眉を顰め、僕の顔と出てきた玉を交互に見ていた。


「どうしたんですか?」


「……」


僕が問いかけるも女神さんは黙ったままだ。

そして何秒かして、ようやく口を開く。

しかしなぜか、その表情は引き攣っているようなら見えた。


「お、お、お、おめでとうございます!これは珍しい!」


「そんなに凄いスキルなんですか!?」


「ある意味で凄い!」


「ある意味で……凄い?」


「このスキルは『従属オビディエンス』というスキルです」


「『従属オビディエンス』とはどんな能力なのでしょうか?」


「これは動物、つまり犬や猫を懐かせる能力です!」


「は?」


「だから動物を懐かせるという、ちょっとだけ嬉しい能力なんです」


「それが……Sランクスキル?」


「いえ、これはFランクのハズレスキルですね」


「Fランク……?SランクガチャからFランクが出るんですか?」


「ええ、FランクガチャからSランクが出る確率と同じくらいの確率で出ます。だから"珍しい"と言ったのです」


そう、これが僕が確率を信じない理由だ。

決して1%であろうと侮ってはならない。


……いや、もしかして動物を懐かせるなら、よくあるテイマーだったり召喚士的な戦い方ができるのではないだろうか?


「それはできません。このスキルで懐かせることができるのは非戦闘動物だけです」


「なら、どうやって戦えばいいんですか!!」


「それは自分で考えて下さいね」


「そ、そんな……よくある引き直しとかできないんですか?最近のアプリゲームでは好きな武器が出るまで引き直しができるってのが流行ってます!」


「残念ながら、このスキルガチャを回せるのは一回だけです」


僕は絶望した。

よりにもよってSランクガチャでFランクを引き当て、さらにそのスキルは"動物を懐かせるだけ"のハズレスキル。

明らかに勇者が持つようなスキルではない。


「あとは冒険者ギルドで発行してもらうギルドカードをご確認下さい。そこにレベルとスキルの説明が出てきます。でも恐らく、その説明内容は『動物を一定時間、懐かせることができる』だと思います」


「しかも時間制限あり!?」


「レベルが上がったら変わるかもです。知りませんが」


「ひ、ひどい……」


「でも、Fランクスキルは"レベル5"までしか上がらないのですぐカンストしますよ!」


僕の頬に涙が伝った。

全く励ましになっていない。

せっかくの異世界転生に持っていけるのはFランクのハズレスキルだけ。

しかもレベルも大して上がらず成長性皆無だ。


「では御武運を」


「え、まさか、もう?」


「ええ。あなたは異世界へと旅立ちます」


いきなり意識が遠のいていく。

体に力が入らず仰向けに倒れると水面へ落ちるような感覚に襲われた。


体が水の中を漂う。


どこかへ流れていってしまうような感じだ。


そして……僕は人知れず異世界転生を果たした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ