表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/22

忍法・住民Aの術

初仕事である樹海での薬草採取は無事に終わった。

やっぱり、この樹海の入り口付近には魔物は全くおらず戦闘を全くしていない。


某ハンターゲームなら最初からクライマックスと言わんばかりにパッケージのボス級モンスターと遭遇するシュチュエーションだけど。


その代わりファリスちゃんという可愛い女の子に出会えた。

見た目は『くの一』といった格好で、とても気が強い子。

言葉も乱暴だけど、これから少しづつ"親交"を深めていけばもっと心を開いてくれるかもしれないな。

あれだけ心洗われるような美しい水の音色を奏でられるのだから根は優しい人のはず。


よし、あとはラーグ・グレイスの町に戻ってギルドに報告すれば依頼完了だ。


___________



予定より少し遅く、昼過ぎ頃に町に到着することができた。


住民や冒険者たちの動きが活発化していて、僕にとっては嫌な状況。

せっかくの、"ぼっち計画"が台無しだ。


僕は自前の影の薄さを利用して町に溶け込む。

瞬きせずに視線はまっすぐ、歩き方は一定で無表情を貫く。


完璧だ。

どこからどう見ても住民Aだろう。


僕の前世は多分、"くの一"だな。

……いや、ただの根暗なオタク高校生だった。



そんな、くだらない思考をしつつ中央広場へと差し掛かる。

ここは転移の石碑が立っている場所だ。


「ん?」


なにやら冒険者らしき人たちの話し声が聞こえる。

僕は歩きは一定のまま眼球だけを動かして、彼らのいる方向をチラ見した。


5、6人の冒険者が神妙な面持ちで話している。

彼らには見覚えがあった。

昨日、僕を嘲笑していた冒険者グループの一部だ。

僕は無関係を装い(実際に無関係なので)、彼らの横を通り過ぎる。


その際、冒険者の1人の声が大きくて嫌でも会話の内容が聞こえてきた。



「絶対、おかしいって!あいつが待ち合わせに来ないなんてさ!」


「どうせ寝過ごしてるんだろ?」


「いや、宿に行ったが誰もいなかったんだ!」


「酒でも飲んで路地で酔い潰れてるとか」


「あいつは酒を飲まん!」


「誰かの悪口言って報復されたとか」


「あ……」


ずっと威勢がよかった冒険者の動きが止まった。

それは心当たりが大アリのはずだ。

昨日、()()()で大盛り上がりだったからね。


「"ゼイバー"だ……」


「なんだと?」


(なんと?)


「いや、あいつ、ゼイバーのこと"気に食わない野郎"だって言ってたんだよ。俺もそれに同調して……」


「どこで会話した?」


「ギルド内だ……」


「マジか……まさかゼイバーが?」


「もしかして、あいつ、行方不明になったりしてないよな?」


冒険者たちは顔を見合わせている。

僕はこの町に来るときに荷馬車でした会話の内容を思い出した。


『冒険者の行方不明事件』


でも、あれって"強い魔物の仕業"とかじゃなかったの?


冒険者の会話は続く。


「そういえば、ゼイバーの勇者スキルを見たやついるか?」


「パーティーを組んだことはあるが見たことないな」


「俺もだ」


「この町の冒険者なら、ほぼ全員組んだことがあるだろ。だが誰もゼイバーの勇者スキルの話をしたことはない」


冒険者は一様にして頷き合う。


「もし、ゼイバーのスキルが()()()()()()()()()()()()()()なら……」


「この話はやめよう。勇者候補は化け物だ。もし相手にしたら無事では済まん」


「そうだな……あいつも何食わぬ顔で帰ってくるかもしれないし」


彼らの会話はこれで終わった。

辺りを警戒する素振りを見せ、何事もなかったかのように散って行った。


僕は考えていた。

あのゼイバーさんが勇者スキルで気に食わない人間を消している?


「いやいや、ありえないでしょ」


ゼイバーさんは他人からの蔑みに落ち込んだ僕を励ましてくれるような人だ。

そんな人が悪口を言われた程度で気にするだろうか?


「どうせ明日になったら、ひょっこり戻ってくるってオチさ」


苦笑いしつつの独り言。

でも、行方不明事件は実際に起こっている。

実は犯人が魔物ではなく、人為的なものだとするなら……。


僕はかぶりを振って、すぐにその考えをやめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ