北の湿地帯への道のり
昼下がり、やはり外は小雨が降る。
そんな中、僕たちブラック・ドラグーンとA級冒険者パーティーのホワイト・イーグルは北の湿地帯を目指した。
カイネンさん率いるホワイト・イーグルは彼女を合わせると3人いる。
まずはリーダーの"カイネン・マーティア"。
緑色の長い髪、上半身を覆う白の鎧、白のミニスカートと膝丈のブーツ。
腰にはロングソードを差す。
そして重厚な鎧を身に付けた茶髪で角刈りの巨漢。
大きな盾を背負い、腰にはメイスを差す。
名前は"ゴルド"という。
もう1人は長い黒髪でぴっちりローブ、三角帽子を被り、手には大きな杖を持ったお姉さん。
名前は"カミーヌ"という。
彼女たち全員が実力者のようで、その強者オーラは凄まじい。
雨の中、6人揃って湿地帯を目指して平原を道なりに進む。
先行するのはホワイト・イーグルのメンバー。
そのすぐ後ろに僕とディアナ、グレシアさんがいた。
すると前を歩くカイネンさんが少しだけ横顔を見せながら徐に口を開く。
「あなた達はなぜレヴォン・バレイズの町に?」
「えーと、僕はちょっと用事で……」
さすがにリリー家を乗っ取りに来たなんて口が裂けても言えない。
「もしかして目的は闘技大会か?」
言ったのはゴルドさんだ。
闘技大会?
そんなものあるとは知らなかった。
「闘技大会なんてあるんですか?」
「レヴォン・バレイズでは毎年あるのさ。今回は優勝賞品が凄いから、てっきり、お前達も出るものだと思っていたが」
「いえ、特に興味は無いですね。他にやることもありますので」
「それはよかった。出場者は少ない方がいい。戦う回数が多くなれば疲れるからな」
「ということは皆さんは闘技大会に出るためにレヴォン・バレイズに来たんですか?」
「ええそうよ。自分たちの実力がどの程度のものかも知りたいですからね」
答えたのはカミーヌさん。
確かに自分では自身の実力なんてよくわからないからなぁ。
魔物は一方的に倒せても、対人になるとめっぽう弱かったりとかはあるかもしれない。
武力や魔法、スキルが存在してるから人間同士なら知略戦になりそうだ。
「そういえばブラックドラグーンのリーダーさんは前衛でよかったかしら?」
「僕は……どっちだろ?」
「自分でわからないの?」
「は、はい……」
現在のスキルを総合するに、恐らく後衛寄りだと思う。
魔法分散とか強化付与など後方支援の方が強いスキルが多く揃っている。
でも近づいて攻撃もしたりするから、どっちつかずだ。
聞かれて思ったけど、実は僕って"器用貧乏"なんじゃないか?
「自分の戦い方はしっかり定めておいたほうがいいわよ。でないと仲間との連携は取れないし、いざとなった時に迷いもでるから」
「確かにそうですね」
カイネンさんの言う通りだ。
これから先は仲間と戦うことが多くなるから、しっかり前衛か後衛かを考えないと。
グリム・リーパー戦のように無理やり仲間を盾にして突っ込んで勝つなんて戦い方は危険すぎる。
まぁ、でも本当にやりたいことは決まってるんだ。
もちろんそれは、
"大剣で切り抜いて背後でドカン!"だ。
だけど残念ながら、今はそれに必要なスキルを持っていない。
そもそも背丈の関係で大剣なんてものを背おえないから、この目標に辿り着けるかどうかも不明ではある。
「どちらかと言えば後衛の方がいいかもしれません」
「そう。ならそれに徹してくれたらいいわ」
「わかりました」
カイネンさんからアドバイスもらったのは良かったと思う。
ある程度は戦いの動きは決めてあったが、さらにスキルを吟味して自分なりの戦い方を煮詰めていこう。
そうこうしているうちに僕らは湿地帯の入り口付近に到着する。
妙に霧が深く、数メートル先は全く見えない状態だ。
「こりゃ、厄介な魔獣かもしれませんね」
ディアナが言った。
「厄介な魔獣?」
「恐らく"ミスト・シザー"っすね」
「その魔獣は強いの?」
僕の質問に答えたのはディアナではなくカイネンさんだった。
「ミスト・シザーはCランクの魔獣よ。動きが単調で、さほど強くはないと聞いているわ」
「Cランク……」
「一応、姿は確認しておきましょう。もし出会ってしまっても私たちだけでなんとかなるかもしれないわ」
「わかりました」
Cランクであれば以前に倒した二体の魔獣よりも弱いということだろう。
しかし、ディアナはため息混じりに「そう簡単にいけばいいけどねぇ」とボソリと呟いた。
もしかして何かあるのか?
ホワイト・イーグルのメンバーは笑みを浮かべながら余裕の表情。
警戒はしておくべきだろう。
いざとなれば僕がここにいる全員を守らなければならない。




