追放のレイン・レディ(1)
レヴォン・バレイズ 中央区
僕とセシル、ディアナ、イディオの4人は宿を取り何泊かする予定であった。
ここで、ある問題が発生する。
セシルが使い魔を飛ばして見ていたランジェリカさんたちのことだ。
後追いで出発した彼女たちは雨の影響で到着が遅れるという。
確かにここに来るまでかなり雨足は強かった。
「東部でここまで雨が降るとは……」
なんて言ってセシルすらも困惑していたほど。
ここまできて、また計画が遅れそうなのは何かの呪いなのか……?
とりあえずランジェリカさん達が来るまでの間、どうやって過ごすか考えた結果、ある結論に辿り着く。
「そうだ、レベリングをしよう!」
我ながら、いい考えだ。
こういう時間は有効に使わないと損だからね。
そうと決まれば早速、この町のギルドへ行って依頼を受けよう。
駆け出しの時とは違って、ある程度は戦えるようになってるから討伐クエストだって受けられる。
もう"薬草採取の依頼"なんて受けないぞ。
そして、ここで重要になってくるパーティー編成。
僕的にはセシルとディアナを外したい。
なぜかと言えば、彼女たちは良くも悪くも目立ちすぎるからだ。
セシルは言わずもがな。
見た目がグラマラスすぎて冒険者っぽくない。
ディアナは僕にべったりして、もはや護衛というよりも友達以上、恋人未満という謎の距離感だった。
やっぱり護衛は変えないとダメかもしれないなぁ。
できたら"感情をあまり面に出さない冷静沈着なタイプ"がいいかもしれないが、そう都合よく仲間にできるわけがない。
とりあえず、連れていくのはイディオだけにして僕は冒険者ギルドへと向かうことにした。
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曇り空、小雨の朝、宿の外。
「それで……なんでディアナさんがいるの?」
待ち合わせていたのはイディオのはず。
しかし宿から出てきたのは頭にターバンを巻いたディアナだった。
「だってアタシ、主人様の護衛ですから」
「まぁ、そうなんだけどさ。でも昨日、話し合って宿に残るって決まったでしょ」
「でも、あんな変な仮面つけてるヤツよりはアタシの方が絶対に強いっすよ」
それは当たり前だろ。
魔王軍の幹部である魔神なんだからさ。
「"強い"とか"弱い"の問題じゃないよ。指示に従わなで勝手に行動されたら、みんなが危険に晒されるんだ」
「まぁ、そうっすね」
「今までは一人で行動していたかもしれないけど、これからは仲間同士で動くことが多くなる。だから決めたことは守って欲しい」
「はい、今度からそうしまーす」
ぶっきらぼうすぎる……。
そっぽを向きながら目も合わせず不貞腐れている。
「今日のところは僕の護衛ってことで一緒に来てもらうけど、明日からはちゃんとセシルさんと留守番しててよ!」
そう言うとディアナの顔はパッと明るくなって抱きついてきた。
「わーい、主人様、大好き!」
おいやめろ、惚れてまうやろ。
ギャルのノリはオタクに刺激が強すぎる。
周りの視線もあるから、早々に移動しなければ……。
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ディアナには何度も言って引っ付くのをやめてもらった。
あくまで"護衛"という立場を守って欲しいからね。
僕とディアナは街並みを見ながら冒険者ギルドを目指した。
その間も雨は降り、止むことはない。
そんな中、
「ん?なんだあれ」
「なんか、囲まれてますね」
行き交う人は見て見ぬフリをする。
恐らく冒険者パーティー内のいざこざだ。
3人の男女が、"1人の女性"に対して声を荒げる。
「お前はパーティーにはいらない」
「まったく、何の役にも立たない無能が」
「それで報酬だけもらおうなんて都合よすぎるのよ」
おっと、この展開はラノベや漫画でよく見るぞ。
結構な実力がある人間がパーティーメンバーから責められて、最終的には……、
「お前をパーティーから追放する!」
という、展開から始まる冒険譚。
まさか道のど真ん中で、かの有名な"パーティー追放"を見ることになるとは思わなかった。
3人の冒険者たちは、"女性"を置いてその場を立ち去る。
なぜか雨足が強くなってきた。
僕はいてもたったもいられず、置き去りにされた"女性"に近づく。
「あのぉー、大丈夫ですかー」
「え?」
若い女の子だった。
年齢は僕と同じくらいかな。
キリッとした顔立ちで可愛いといよりも綺麗系の美少女。
水色の短い髪、首元には黒いチョーカー、白いブラウスに皮の胸当て、青のホットパンツに茶色のロングブーツを履く。
後ろ腰には短剣が差してあって、見るからにRPGに登場する"シーフ"といった印象だ。
「わ、私は……大丈夫です」
顔が引き攣ってるぞ。
絶対、大丈夫じゃない。
さらに、いきなり優しくされた影響なのか女性は涙を流しはじめた。
さらに雨が強くなる。
「大丈夫じゃなさそうですよ。もしよければ僕とパーティーを組みませんか?」
「私と組むのは、やめたほうがいいと思います」
「どうして?」
「私、実は勇者候補なんですが……」
「それは凄いですね!」
「いえ、私の勇者スキルは何の役にも立たないゴミスキルなんです」
「え……どういうことです?」
僕が聞くと彼女は自分の"右の太もも"に視線を落とす。
「雨が降るんです。どこへ行っても」
「雨……?」
「私の勇者スキルは『雨女』。今、降ってる雨は私が原因なんですよ……」
僕も自然と女性が見つめる方へ視線が向かった。
右太ももの内側だ。
チラリと見えた、その勇者の刻印は"黒い亀のような紋章"だった。




