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青春病。  作者: 翠吉
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受け継がれる主将の腕章

始業式が終わったその日の放課後。

久しぶりの体育館には、いつものボールを打つ音が響いていた。

私はドリンクを並べながら、ふと時計を見る。

「……あれ。」

練習開始の時間なのに。

神谷先輩がいない。

水谷先輩も。

蓮さんも。

三年生が誰も体育館へ来ていなかった。

守屋先輩も辺りを見回す。

「あれ?」

「神谷さんたちは?」

岡田先輩も首を傾げる。

「監督室じゃないか?」

「まだ来ないっすね。」

少しだけ落ち着かない空気のままアップが始まる。

それでも三年生は現れなかった。

私は何度も体育館の入口を見てしまう。

その時だった。

ガラッ。

監督が体育館へ入ってきた。

「集合。」

全員が急いで集まる。

円になって座る。

監督は一人ひとりの顔を見渡した。

「今日から。」

「新チームだ。」

空気が変わる。

誰も口を開かない。

監督は続けた。

「まず。」

「新キャプテンを発表する。」

守屋先輩も少しだけ表情が引き締まる。

「キャプテン。」

「守屋。」

「……はい!」

思わず大きな返事が響く。

監督は頷く。

「お前は。」

「一番声が出る。」

「一番周りを見てる。」

「技術だけじゃない。」

「人を動かせる。」

「だから、お前に任せる。」

守屋先輩は真っ直ぐ監督を見る。

「はい。」

「任せてください。」

監督はもう一度頷いた。

「そして。」

「副キャプテン。」

少し間を置く。

「岡田。」

「はい。」

岡田先輩が返事をする。

「お前はアウトサイドだ。」

「試合中、ほとんどコートに立ち続ける。」

「リベロは交代がある。」

「守屋がコートを離れている間。」

「チームをまとめるのはお前だ。」

岡田先輩は少し驚いたように目を見開く。

「……はい。」

「よろしくお願いします。」

守屋先輩は笑いながら岡田先輩の肩を叩く。

「頼むぞ、副キャプテン。」

「こっちこそ。」

二人は笑い合った。

監督は話を続ける。

「もう一つ。」

「春高まで時間はない。」

「だから。」

「今日から。」

「コーチを付ける。」

体育館がざわつく。

「コーチ?」

「誰だ?」

監督は体育館の入口を見る。

「入れ。」

ガラッ。

扉が開く。

そこに立っていたのは。

水谷先輩。

蓮さん。

そして。

神谷先輩だった。

「えっ……。」

思わず声が漏れる。

守屋先輩も目を丸くした。

「えぇぇぇぇぇ!?」

部員たちも一斉にざわつく。

水谷先輩が笑う。

「今日からよろしく。」

蓮さんも笑った。

「まだ引退してねぇよ。」

最後に神谷先輩。

「春高まで。」

「付き合う。」

体育館が一気に明るくなる。

「よろしくお願いします!!」

全員の声が重なった。

守屋先輩が頭を抱える。

「終わったぁ……。」

「どうした。」

水谷先輩が笑う。

「いや。」

「鬼コーチが三人もいるじゃないですか。」

一瞬静かになる。

神谷先輩が守屋先輩を見る。

「守屋。」

「……はい。」

「レシーブ二百本追加。」

「えぇぇぇぇ!?」

体育館中が笑いに包まれた。

蓮さんが腕を組む。

「俺も打つ。」

水谷先輩も笑う。

「俺も。」

守屋先輩は膝から崩れ落ちた。

「終わったぁぁぁぁ!!」

岡田先輩が笑う。

「副キャプテン初日から大変だな。」

「助けて。」

「無理。」

また笑いが起きる。

私はその光景を見ながら、小さく笑った。

インターハイは終わった。

夏も終わった。

三年生は引退した。

だけど。

何も終わってなんかいなかった。

笑い声が響く体育館も。

ボールを追いかける姿も。

厳しい声も。

優しい笑顔も。

全部、あの日までと何も変わらない。

私は新しいドリンクを並べながら思った。

今日からまた。

私たちの新しい青春が始まる。

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