遠くの仲間
聖明高校体育館。
大型スクリーンの前には、多くの生徒や先生が集まっていた。
女子バレー部。
サッカー部。
野球部。
バスケットボール部。
吹奏楽部。
一般生徒。
立ち見が出るほどの人で埋め尽くされている。
照明が少し落とされ、体育館は静まり返った。
スクリーンにインターハイ準々決勝の映像が映し出される。
「さあ、インターハイ男子バレーボール準々決勝。」
「東京代表・白鷹高校対、静岡代表・聖明高校です!」
実況の声が響く。
「まずは東京代表・白鷹高校。」
「昨年度インターハイ優勝。今年度春高優勝。高校バレー界の絶対王者です。」
スクリーンには白鷹高校の選手たちが映る。
「注目は主将・月島大和。」
「U-18日本代表にも選出されている今大会屈指のエースです。」
続いて画面が切り替わる。
「対する静岡代表・聖明高校。」
「今大会最大のダークホース。」
「大阪代表・凌星高校を破り、一気に注目を集めました。」
画面には神谷が映る。
「司令塔・神谷凛太郎。」
「試合を支配する配球と、高いサーブ能力を兼ね備えたセッターです。」
続いて蓮。
「エース・朝倉蓮。」
「最高到達点343センチ。怪我から復活した絶対的スパイカーです。」
そして。
「リベロ・守屋堅護。」
「驚異的な守備範囲を誇る二年生。今大会も幾度となくチームを救っています。」
その瞬間だった。
「……え、守屋じゃん。」
後ろでサッカー部の男子生徒が思わず声を漏らした。
「え?」
「俺、守屋と同じクラスなんだけど。」
「昼休みずっとふざけてるあいつ?」
「そうそう。」
「マジで!?」
「全国で紹介される選手なの!?」
周りの生徒も驚いた表情でスクリーンを見る。
「守屋ってそんなにすごかったんだ。」
「いつも笑ってるイメージしかない。」
「知らなかった……。」
すると実況が続ける。
「三回戦では、ブロックで弾かれたボールを広告板手前まで追い掛け、奇跡的につないだプレーが大きな話題となりました。」
そのハイライト映像が流れる。
体育館中からどよめきが起こる。
「うわ……。」
「すげぇ。」
「これ守屋なの?」
「マジかよ……。」
誰もがスクリーンへ釘付けになっていた。
いつものムードメーカー。
いつものお調子者。
そんな守屋の姿はそこにはない。
全国の舞台で、誰よりも必死にボールを追い掛ける、一人のリベロが映っていた。
その時だった。
実況が少し声のトーンを上げる。
「そして、もう一人。」
「今大会、全国の関係者が最も注目している選手をご紹介します。」
画面いっぱいに神谷の姿が映し出された。
静まり返る体育館。
「聖明高校三年、神谷凛太郎。」
「正確無比なトスワーク。」
「相手ブロッカーを翻弄するゲームメイク。」
「そして、セッターとは思えないサーブ力。」
「今大会のアシスト数、サービスエース数ともに全国トップクラス。」
「さらに、その冷静な試合運びでチームをここまで導いてきました。」
「U-18代表候補としても注目されている選手です。」
体育館のあちこちから小さな歓声が上がる。
「神谷ってそんなすごかったのか…。」
「学校じゃ全然目立たないよな。」
「いや、オーラはあるけど。」
「こんな選手だったんだ。」
実況は続ける。
「対する白鷹高校も、世代最高のセッターを擁しています。」
画面には白鷹の司令塔が映る。
「王者を支える頭脳。」
「この試合は、セッター同士の駆け引きにも注目です。」
「神谷対白鷹。」
「どちらが試合を支配するのでしょうか。」
体育館全体が息を呑む。
誰も話さない。
誰も目を逸らさない。
スクリーンの中では、両校の選手が整列していた。
ネットを挟み、向かい合う。
去年の王者。
今年最大の挑戦者。
「間もなく試合開始です。」
審判がコート中央へ歩く。
選手たちがポジションへ散る。
体育館中の誰もが、スクリーンだけを見つめていた。




