絶対王者への挑戦
試合終了のホイッスルが鳴り響く。
「よっしゃああああ!!」
聖明高校。
ストレート勝ち。
三回戦突破。
ベスト8進出。
コートには笑顔が溢れていた。
「ナイス!」
「最高!」
守屋先輩が岡田先輩へ飛び付き、小林先輩と杉山先輩も笑顔で拳を合わせる。
「二年生、最高だったぞ。」
水谷先輩が笑いながら肩を叩く。
「ありがとうございます!」
岡田先輩たちは嬉しそうに頭を下げた。
関係者席。
全日本U-18男子代表監督は静かに拍手を送る。
「三年生はもちろんだが…。」
視線は二年生へ向く。
「来年も楽しみなチームだ。」
隣のスタッフも頷いた。
「層が厚いですね。」
その頃。
大型モニターにトーナメント表が映し出される。
ベスト8。
聖明高校。
対戦相手が表示された瞬間。
会場がどよめいた。
『東京代表 白鷹高校』
昨年度インターハイ優勝。
今年度春高優勝。
誰もが認める、日本一の高校だった。
「うわ…。」
「もう当たるのか。」
「あれが今年も本命だぞ。」
「聖明、次が山場だ。」
ざわめきが広がる。
私は思わず白鷹高校の名前を見つめた。
去年、日本一。
今年も日本一。
倒さなければ優勝はない。
監督が全員を集める。
「休憩は一時間。」
「昼飯食って、体を休めろ。」
「次が今日最後の試合だ。」
誰も返事をしなかった。
三回戦を戦い終えたばかり。
足は重い。
汗もまだ乾いていない。
それでも。
神谷先輩が静かに立ち上がる。
「勝つぞ。」
短い一言。
「はい!!」
全員の声が重なった。
相手は、日本一。
インターハイ三日目。
最後の戦いが、もうすぐ始まる。
試合終了から約一時間。
再び会場へ戻ると、空気はさっきまでとはまるで違っていた。
アップコート。
そこには一校だけ、異様な存在感を放つチームがいた。
東京代表、白鷹高校。
昨年度インターハイ優勝。
今年度春高優勝。
連覇を狙う絶対王者。
無駄な声はない。
派手なパフォーマンスもない。
ただ、一本一本を淡々と打ち込む。
それだけなのに、体育館全体が静まり返っていた。
「やっぱり白鷹だ…。」
「あれが日本一。」
「あの学校を倒らさないと優勝できない。」
観客席から自然と声が漏れる。
私は思わず息をのんだ。
アップなのに、一つ一つのプレーに隙がない。
レシーブは乱れず。
トスは一センチもぶれない。
スパイクは音だけで速さが分かる。
全国王者。
その四文字が、そのまま形になったようなチームだった。
「結衣。」
振り返る。
神谷先輩だった。
「大丈夫か。」
「……はい。」
そう答えたけれど、本当は少しだけ圧倒されていた。
神谷先輩は白鷹高校を見つめたまま、小さく笑う。
「やっと。」
「やっと当たれる。」
その表情を見て、私は驚いた。
緊張じゃない。
恐怖でもない。
嬉しそうだった。
その隣では蓮先輩が静かにストレッチをしている。
水谷先輩は二年生へ声を掛ける。
「さっきみたいにやればいい。」
「気負うな。」
「思い切り楽しめ。」
「はい!」
岡田先輩たちが力強く返事をした。
関係者席。
全日本U-18男子代表監督が再び姿を見せる。
「始まりますね。」
スタッフが声を掛ける。
「ああ。」
監督は静かに頷いた。
「今年、一番楽しみにしていた試合だ。」
視線は白鷹高校ではない。
聖明高校だった。
「王者にどこまで食らいつけるか。」
「見せてもらおう。」
その頃。
場内アナウンスが流れる。
「男子バレーボール準々決勝を行います。」
会場全体が静まり返る。
「東京代表、白鷹高校。」
大きな拍手。
続いて。
「静岡代表、聖明高校。」
今度はさらに大きな歓声が体育館を包んだ。
大阪代表を破った新星。
今大会、一番勢いのあるチーム。
両チームがコートへ入る。
ネットを挟み、向かい合う。
白鷹高校の選手たちは表情一つ変えない。
その姿には、王者の風格があった。
神谷先輩もまた、一歩も引かずに相手を見つめる。
静かな視線が交わる。
どちらも逸らさない。
審判が笛を口へ運ぶ。
体育館中の視線が、一つのコートへ集まった。
日本一への挑戦。
聖明高校、最大の戦いが、今始まる。




