最高到達点Part2
神谷先輩のトスが上がる。
「蓮!!」
今度も三枚。
凌星高校は迷わない。
それでも。
ドンッ!!
三枚ブロックの、そのさらに上。
ボールは指先をかすめ、コートへ一直線に突き刺さった。
「うおおおお!!」
体育館が揺れる。
「ナイス蓮!!」
守屋先輩が拳を突き上げる。
「その高さだ!!」
水谷先輩も思わず笑う。
神谷先輩は静かにボールを拾った。
「もう一本。」
短い一言。
蓮先輩は頷く。
「はい。」
次のラリー。
また高いトス。
また三枚。
今度こそ止める。
そんな相手の気迫が伝わってくる。
それでも。
ドンッ!!
またブロックの真上。
誰も触れられない。
「は……?」
凌星高校の選手が思わず振り返る。
観客席もどよめいた。
「おい。」
別コートで試合を終えた他校の選手が、聖明高校のパンフレットを開く。
「ライト、朝倉蓮。」
「最高到達点……343センチ。」
隣の選手がコートを見上げる。
ちょうどその瞬間。
蓮先輩が再び跳んだ。
ドンッ!!
三枚ブロックのさらに上から叩き込む。
思わずパンフレットへ目を落とす。
「……343?」
「いや。」
「絶対もっとあるだろ。」
「350はあるぞ、あれ。」
「343であんな余裕あるわけねぇ。」
「ブロックの上を完全に抜いてる。」
「怪物かよ……。」
一人の声に、周りも頷く。
「静岡代表って聞いてたけど。」
「こんな選手いたのか。」
「今年の聖明、やばいな。」
いつの間にか他校の選手たちまで足を止め、聖明高校のコートを見つめていた。
歓声はさらに大きくなる。
私は思わずノートを開く。
アンテナの横。
赤い五段目。
そのさらに上に引いた一本線。
私はその線をなぞるように、小さく丸を付けた。
『届いた。』
蓮先輩は静かに息を吐く。
もう止まらない。
三枚でも。
四枚でも。
全部、打ち抜く。
それが。
聖明高校のエースだった。
歓声が鳴り止まない。
その熱気を少し離れた場所から見つめる一角があった。
関係者席。
スーツ姿の男たちが並ぶ中、一人の男性が静かに腕を組んでいた。
全日本U-18男子代表監督。
周りには日本バレーボール協会の関係者たちが座っている。
監督の視線は、ずっと聖明高校のコートへ向けられていた。
「……なるほど。」
小さく呟く。
「聖明か。」
蓮先輩が着地し、神谷先輩が淡々と次のポジションへ歩いていく。
監督は小さく口角を上げた。
「朝倉。」
少し間を置く。
「神谷か。」
隣の協会スタッフがパンフレットを閉じた。
「気になる選手ですか?」
監督はすぐには答えない。
コートから目を離さないまま口を開く。
「まだ分からん。」
「だが、候補には入る。」
協会スタッフも二人へ視線を向ける。
「どちらも、ですか。」
「ああ。」
監督は静かに頷いた。
「朝倉は全国でも屈指の身体能力だ。」
「神谷はゲームを支配している。」
もう一度、二人を見る。
「この大会が終わる頃には、もっと面白くなってるかもしれんな。」
協会スタッフたちも静かに頷き、再びコートへ視線を戻した。




