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我慢の時間
結衣の情報通り。
ネットから離れたレシーブ。
青峰のセッターは迷わず左へ上げた。
「来る!」
守屋先輩が一歩左へ寄る。
ドンッ。
「上がった!」
会場がどよめく。
「ナイス!!」
神谷先輩が走る。
蓮先輩。
水谷先輩。
杉山先輩。
全員で繋ぐ。
最後は岡田先輩。
「よし!!」
十四対十三。
ベンチが沸く。
けれど。
青峰は笑っていた。
「もう分かってる。」
相手セッターが静かに呟く。
次の一本。
今度はネットから離れたレシーブ。
全員が左を警戒する。
その瞬間。
バックアタック。
「くっ……!」
決まる。
十四対十四。
さらに。
サービスエース。
十四対十五。
ブロック。
十四対十六。
青峰の流れだった。
会場の空気まで青峰へ傾いていく。
私は記録を書きながら、無意識にペンを強く握っていた。
「一本。」
神谷先輩が言う。
誰も下を向かない。
「一本。」
水谷先輩が続く。
「我慢。」
蓮先輩が静かに言った。
「今は我慢だ。」
その言葉に、守屋先輩が大きく頷く。
「絶対流れ来ます。」
次の一本。
また拾う。
また繋ぐ。
決まらない。
それでも繋ぐ。
相手に打たれる。
また拾う。
点にはならない。
でも。
誰も焦らない。
体育館中が青峰の応援でも。
ベンチだけは静かだった。
一本。
また一本。
その一本を積み重ねる。
まるで。
流れが変わる瞬間を、全員が待っているようだった。




