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青春病。  作者: 翠吉
4/7

合宿前奏曲、パフェと秘密

「お願い!葵!買い物付き合って!」

「朝から声でかいよ〜なんでまた買い物なの?」

「明後日からのゴールデンウィークに合宿があるんだけど、色々必要なもの買わないとで……」

「仕方ないな〜」

葵が小さくため息をつく。

「じゃさ、パフェ奢りね?」

「え、奢ります」

「即決でしょ?」

「……ありがと!ほんと助かる!」


休日のショッピンモールは、人で溢れていた。

少し騒がしいくらいのその空気が、今日は不思議と心地いい。

「で、何買うの?」

「えっと……タオルと、あと飲み物と……」

「ふわっとしてんな〜」

呆れたように笑う。

「合宿ってさ、思ってるより消耗するよ。タオルなんて何枚もあっても足りないし」

「そんなに?」

「うん。汗やばいから」

サラッといわれて想像してしまう。

体育館のの空気。

走る音。

ボールの音。

――その中に自分がいる。

「……じゃあ、多めに買っとこうかな」

「それがいいよ」

葵が頷く。

スポーツショップに入ると、壁一面に並ぶウエアやシューズに目を奪われた。

「すご……」

思わず声が出る。

「初心者丸出し」

「うるさい」

笑いながら、タオルの棚で立ち止まる」

「どれがいいと思う?」

「んー、厚すぎないやつ。すぐ乾くのがいいよ」

葵は慣れたて手つきで何枚か選び、こっちに差し出した。

「これとか」

「……あ、いいかも」

手に取ったタオルは、思ったより軽い。

「色もそれっぽいじゃん」

「それっぽいってなに」

「部活感ある」

「なにそれ」

笑いながら、そのタオルをカゴに入れた。

レジを済ませて、袋を受け取る。

「意外と買ったね」

「必要なものだけだよ」

「それが1番増えるやつ」

軽く笑いながら、モールの中を歩く。

休日の人相変わらずで、さっきまでの売り場よりも少しだけ騒がしい。

「疲れたし、ちょっと休も」

葵がそう言って指差した先に、フードコートが見えた。

「パフェでしょ?」

「もちろん」

即答。

こういうとこ、ほんと抜け目ない。

席を確保して、注文を済ませる。

しばらくして運ばれてきたパフェは、思っていたよりも大きくて、少しだけ笑ってしまった。

「でっか」

「でかいのがいいじゃん」

葵はもう食べ始めている。

スプーンを手に取って、少しだけすくう。

甘い。

さっきまでのざわざわし感じが少しだけ落ち着く。

「でさ」

葵が、なんでもなみたいな声で言う。

スプーンをクルクル回しながら、視線はこっちを向いていない。

「神谷先輩」

「……っ」

その名前に、手が一瞬止まる。

「気になているでしょ」

「え?」

思わず顔をあげる。

葵はこっちを見て、少しだけ口角を上げる。

「わかりやすいんだって」

「……別にそんなんじゃないし」

すぐに返したことばは、思ったよりも説得力がなかった。

(……なんで今。あの人の名前が出てくんの)

「ふーん」

興味無さそうに返しながら、葵はまたパフェに視線を落とす。

「でもさ」

小さくつずける。

「神谷先輩、ちょっとめんどくさいよ」

「え?」

思わず聞き返す。

「良い意味でね」

曖昧な言い方のまま、葵はそれ以上なにも言わない。

(……めんどくさい?)

頭の中に浮かぶのは、あの表情と、短い言葉。

「……よくわかんない」

「でしょ」

あっさり肯定される。

「合宿でわかるよ、多分」

「……合宿」

ポツリと口に出る。

まだ先のはずなのに。

「まあでも」

「ちょっとは楽しみでしょ?」

「……ちょっとだけ」

嘘じゃない。

でもそれが、なにに対してなのかは……

自分でもわからなかった。

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