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青春病。  作者: 翠吉
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30/68

最高到達点

インターハイ予選まで、あと二週間。

体育館には、いつもより少しだけ引き締まった空気が流れていた。

それでも部員たちの表情は明るい。

「蓮さん、今日も一本勝負っすよ!」

守屋先輩が笑いながらボールを抱える。

「負けたらジュースな。」

「なんでだよ。」

蓮先輩も笑って返す。

そのやり取りに、水谷先輩も思わず笑った。

「守屋、毎日それ言ってるな。」

「今日こそ勝てる気がするんですよ!」

「一回も勝ってないけどな。」

体育館に笑い声が広がる。

私はその様子を見ながら、小さく笑った。

少し前まで、あんなに苦しそうだった蓮先輩が、今はみんなと笑っている。

その光景だけで、なんだか嬉しかった。


「集合。」

監督の声で部員たちがコート中央へ集まった。

「インターハイ予選のパンフレット用に測定をする。」

「身長、最高到達点。」

「橘、記録頼む。」

「はい!」

私はクリップボードを受け取り、ペンを握る。

「まずは身長から。」

部員たちは順番に並び始めた。

「守屋。」

「はい!」

測定器の前へ立つ。

「175センチ。」

私は記録する。

『守屋 175cm』

「縮んでないですよね!?」

「去年と一緒だ。」

「よかったぁ……。」

体育館に笑いが広がる。

「次、岡田。」

「177センチ。」

「杉山。」

「182センチ。」

「小林。」

「179センチ。」

「水谷。」

「180センチ。」

「神谷。」

「182センチ。」

最後に。

「蓮。」

「はい。」

「187センチ。」

全員の測定が終わると、監督が笛を鳴らした。

「次。」

「最高到達点。」

守屋が助走を付けて跳ぶ。

パシッ。

「320。」

「よし!去年と一緒!」

「成長してないだけだろ。」

水谷先輩が笑う。

「うるさいですよ!」

部員たちが笑い合う。

岡田。

「320。」

小林。

「329。」

水谷。

「327。」

杉山。

「332。」

神谷先輩。

助走。

踏み切る。

パシッ。

「330。」

私は静かに書き込む。

『神谷 330cm』

そして。

「蓮。」

体育館が少し静かになった。

蓮先輩は深く息を吸う。

助走。

一歩。

二歩。

三歩。

ドンッ。

「342。」

私は思わず顔を上げた。

蓮先輩は少しだけ苦笑いを浮かべる。

その時だった。

「もう一本。」

神谷先輩が静かに言う。

監督も小さく頷く。

「跳べ。」

蓮先輩はゆっくり後ろへ下がった。

もう一度。

助走。

一歩。

二歩。

三歩。

踏み切る。

パシッ!

測定器が鳴る。

「343。」

一瞬、体育館が静まり返る。

「更新だ。」

監督が小さく頷く。

私は震える手で記録を書く。

『蓮 343cm』

蓮先輩は測定器を見つめたまま、小さく笑う。

「やっとだ。」

神谷先輩は何も言わず、静かにコートへ戻っていった。

私はクリップボードへ目を落とす。

神谷 182cm 330cm

水谷 180cm 327cm

蓮  187cm 343cm

岡田 177cm 320cm

杉山 182cm 332cm

小林 179cm 329cm

守屋 175cm 320cm

数字だけが並んでいる。

でも。

そこには、この一年のみんなの努力が詰まっていた。

「よし!」

水谷先輩がパンッと手を叩く。

「測定終わり!」

「次はブロック到達点測るぞー!」

「まだ跳ぶんすかぁ!?」

守屋先輩がその場にしゃがみ込む。

「蓮さん絶対また更新するじゃないですか!」

「知らねぇよ。」

蓮先輩が笑って返す。

「ほら、文句言ってないで並ぶ。」

水谷先輩の一言に、体育館はまた笑い声に包まれた。

インターハイ予選まで、あと少し。

私はこのチームなら大丈夫だと、心からそう思えた。

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