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青春病。  作者: 翠吉
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もうひとりの支柱

「今の試合」

水谷が口を開く。

「結果は問題ない」

一瞬、間

「でも……」

「……水谷」

低い声。

視線が水谷へと向かう。

「決まっているけど、コースが甘い」

短い。

「読まれている」

水谷はなにも言わない。

小さく頷く。

「……守屋」

「レシーブは問題ない」

「でもその後の一歩が遅い」

守屋先輩がわずかに息を吐く。

「次の一歩、俺も含めて全員遅い」

言葉が落ちる。

静かなまま。

守屋が口を開く

「フォロー、もう一歩早く行きます」

いつもより真面目な声。

その後、小さき笑う。

「まあ、でも」

「後ちょっとで、蓮さんもどるし、」

一瞬、空気が止まる。

「その前に詰めときたいですね」

「……ああ」

凛太郎が短く返す。

(蓮さん?)

初めてきく名前。

誰も質問しない。

話は続く。

「精度がまだ足りていない」

「一つ一つ詰める。次、意識していこう」

静かに終わる。

誰もすぐ立たない。

同じ試合をしてたはずなのに

見ているものが違う。

(……まだ全然)

その実感だけ残る。

そして、もう一つ

(……蓮さん?)

その名前だけが、少しだけ引っかかっていた。

夕食の時間。

部屋を出ると、廊下に食事の匂いが流れてきた。

人の気配も増えてきて、さっきまでの静けさとはちょっと違う。

その流れに乗るように食堂へ向かう。

中はほとんど席が埋まっていた。

トレーを受け取って並ぶ。

前には部員の背中。

笑い声が、ところどころ弾けている。

料理を受け取って、席を探す。

「こっち」

守屋先輩が手を挙げる。

「ありがとうございます」

そのまま向かって座る。

向かいには、水谷先輩。

「いただきます」

声が重なる。

箸が動き始める。

守屋先輩がふと口を開く。

「そういえばさ」

軽い調子で、水谷を見る。

「橘、最近めっちゃ聞いてきますよね」

一瞬、手が止まる。

(……え)

「ルールとか、動きかたとか」

「ちゃんと覚えようとしてる感じある」

「スコアも書き始めたしな」

さらっと言う。

でも、ちゃんと見ていたのがわかる。

水谷先輩が少しだけ顔を上げる。

「な、頑張ってくれてる」

短く言う。

守屋先輩が小さく笑う。

「そのうちふつうに指示出してきそうっすよね」

軽く笑う。

冗談っぽい

「無理だろ」

誰かが笑う。

そのまま、空気が少しだけ緩む

その中で、思い出す。

(……そういえば)

「あの」

声を出す。

「さっき出てた、蓮さんって……」

守屋がすぐ反応する

「あー」

「気になるよな」

空気が少し緩む。

「三年のエースっす」

さらっと言う。

「今いないだけで、ふつうに一番っすよ」

箸を動かしながらつずける。

「戻ってきたらまた、変わると思う」

水谷先輩も小さく頷く。

「点の取り方が違う」

短く言う。

「流れ関係なく、決める」

それだけ

(そんな人がいるんだ……)

想像が追いつかない。

守屋先輩が少しだけ笑う。

「まあ、よく凛太郎さんとやり合ってるっす」

「やりあってる?」

「プレーっで、って意味っす」

軽く付け足す。

その言葉で、空気が変わる

視線を向ける。

少し離れた席に、神谷先輩がいる。

会話には入ってこない。

でも、どこかで繋がっている気がした。

(蓮さん……)

その名前だけが、少しだけ強くなった。

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