満たされない勝利
試合が終わる。
軽く息を吐く。
「一回、集まろ」
水谷の声。
コートの端に集まる。
自然と円になる。
「今の試合。悪くない」
少しだけ空気が緩む。
「でも」
「繋ぎ、雑な部分があった」
「一本一本は悪くないけど」
「その次に繋げるところでズレてる」
淡々とした言い方。
「もう一歩俺らなら出来る」
「……まあでも」
守屋が口を開く。
「今の流れ、悪くなっかたっすよ」
軽い調子。
でも、そのままつずける。
「繋ぎで止まると一気に崩れるんで」
「そこだけ、ちゃんと合わせたいっすね」
(……ちゃんと見てる)
そう思った。
「……遅い」
低い声。
一瞬で、止まる。
「判断が遅い」
たった一言。
空気が締まる。
(……判断)
「……まあ、それあるな」
水谷が小さく頷く。
「判断早ければ、全部楽になる」
「よし、次行くぞ」
水谷の声。
全員が動き出す。
その中で、
一度だけコートを見る。
凛太郎先輩
もう、次のことを考えているみたいに、
なにも言わずに立っている。
あの人は、更に先を見ている。
(……もっと、ちゃんとやりたい)
その気持ちだけが、
はっきり残っていた。
すぐに二戦目が始まった。
ボールが繋がる。
崩れない。
守屋が拾う。
水谷が決める。
流れはこっちだ。
(……できてる)
少しだけ、分かる。
さっきの試合より、かみ合っている。
試合はそのまま、終わった。
勝った
「ナイス!」
軽い声が飛ぶ。
空気も悪くなる。
でも、誰も大きく喜ばない。
廊下に出ると、少しだけ涼しい。
守屋が前を歩きながら言う。
「悪くなっかたっすね」
軽い声。
(……悪くない)
頭の中で、さっきのプレーを思い出す。
繋がっていた。
崩れなっかた。
それでも、
どこか引っかかる。
前を歩く水谷先輩。
その少し先に神谷先輩。
2人ともなにも話さない。
でも、
同じことを考えている気がした。
(……違う)
勝っていたはずなのに、
どこか足りてない。
そう感じているのは、多分自分だけじゃない。
「こっち」
水谷先輩が扉を開ける。
会議室。
中に入る。
さっきまでとは違う空気だった。




