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悪魔へ墜ち、天使を殺せ  作者: 大器晩成
一章 邂逅 忌むべき者達
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第一章 邂逅 忌むべき者達

少し更新ペース下がります。後先考えずに書いていたので、ここら辺で一度設定をきちんと整理すべきだと判断しました。

夢を見た。

悪夢だ。

でもそれは十年前、確かに経験した現実で。

俺にとっては数えきれないほど見てきたありきたりな悪夢だった。


燃え盛る街並み。喚き散らす人々。一向に進まな人ごみ。路上に倒れている人だった何か。


空を見上げれば、地上の炎によって赤く染められた夜空が不気味に広がっているだけだ。そんな空に向かって一心不乱に叫ぶ。その叫びはすぐにかき消されることになった。


赤く染まった夜空を横切るナニカ。白い騎士。紅蓮を吐き出す化け物。時には炎の化身とも評すべき化け物が街を、人を、世界を蹂躙した。


銃を撃つことは無意味に等しかった。当たっても死なない。戦車砲や機関砲、ミサイル兵器などは利いたみたいだったが、当時子供だった俺が、デカくなっても天使が蔓延っているところを見るに、有効とは言えない運用だったのだろう。


人類は逃げた。逃げて逃げて、逃げ続けた。主要都市の内側から湧き出すように現れた奴らから逃れるために、海へ海へと逃げていった。そして今、人類の大半は、急造された人工島で生活を行っている。


いつそのような人工島が建造されたのか? その経緯はその上に住んでいる誰も彼もが、分かっていない。都市伝説では、人間を助けるために悪魔が一晩で建てたなんて言う荒唐無稽なものまである。


……天使との戦いで悪魔じみた術を使っている俺達が笑えた義理ではないが。

ともかくとして人類は、天使たちの巣窟――聖域(サンクチュアリ)に囲まれているのではなく、海と、その沿岸部から囲っているのだ。これが囲碁かオセロだったら、とっくに人類の勝ちでエンドロールだ。


まあ、現実は非情なのが、常である。二年前に反撃の狼煙は上げられたが、未だにエンドロールのエの字も見えない。当初の経過は順調だった。最初に投下された各国の部隊は八年の雌伏と厳しい訓練を耐え抜き、賦活と魔弾を完全に御する逸材ばかりだった。


各主要都市を中心に、天使どもを掃討していき、二か月で湾から三十キロほどを手中に収めていた。

だが、それもすぐに勢いを失くすこととなる。今まで観測されていなかった守護天使の出現だ。


人の形を持つ災厄に精鋭たちは完膚なきまでに蹂躙された。戦線はあっさりと押し返され、三分の一程にまで縮むこととなった。


唯一の救いといえば、彼らが酷く気紛れということだった。

二年経った今でも、押したり引いたりのシーソーゲームが延々と続いている。

持久戦となれば不利なのは、勿論、人類側だ。この戦い、既に命運は分かたれているのかもしれない――。



                                                ▽

「う、あ……?」


頭痛、吐き気。それにおまけで眩暈と空腹感。目を覚ました直後の感想はそれらに費やした。

酒は呑んだことはないが、二日酔いはこんな感じなんだろう。全身を賦活させる術を使うとしばらくこうなってしまう。だが、今回はいつもの数倍酷かった。


「んだよ……これ、焦点があわねぇ。うぇぷ……つぅ」


身体にかけられた白いシーツを捲って、上体を起こすと頭が割れんばかりの頭痛が夕を苛んだ。

さらに言えば、グルグルと目も回っている。


痛みが引くまでその場で制止し、目を瞑る。目を瞑れば。それはそれで最悪の気分だった。


「よっと……ととっ」


慎重に身体を動かして、床へと降り立ったのに、バランスを崩した。

どうにも相当まいっているらしい。


「オイオイ! ムチャすんナよ!」


あわや転倒というタイミングで誰かが両肩を支えてくれる。起きぬけで頭がはっきりしていなかったので気が付かなかったが、誰かがいたらしい――。


「目が覚めたよウだナ」


「な、何だオマエ――」


「いや、その過程はもウ終ワッただろ?!」


夕が仰天して、大声を上げようとした途端、五本の脚に蹄を付けた車輪魔人――ブエルが頭の頂点につけた脚で夕を制止しながら、呆れた様子で叫んだ。


「それトも何カ!? テメェ、まーた忘れたカらっテ、無駄ニ長イ回想パートに入ろウってノか!?」


よく分からない理由で怒鳴り散らすブエルの迫力に押されながら、夕は自身の置かれている状況を思い出す。

黒い騎士と目の前の車輪魔人に夕は助けられたのだった。どういう原理なのかは不明だが、こいつが描いた謎の方陣が光に包まれて、それで――。


「おいっ!! 黒くてデカいのは無事なのか!?」


最後の瞬間、黒の騎士は天使ザドキエルが憤怒の形相で放った一撃から夕とブエルを庇ったのだ。


「あア、アンドラスか? ヤツなら、無事ダ。ピンピンしてルよ」


その言葉を聞いて、夕は内心胸をなでおろした。こんな奇怪で意味不明な連中だが、彼らのお陰で命拾いしたのは確かなのだ。恩人が自分の代わりに取り返しのつかないことになっていたら、流石の夕も気分が悪い。


「そうか……ならいい」


静かに呟き、未だ焦点の合わぬ目で辺りを見回す。

見慣れない部屋だった。白い壁と床で構築された八畳ほどの部屋。どこを向いても白なので目が痛い。

窓は無く、部屋を照らしているのは、天井中央に設置された蛍光灯である。


ドアは三つあり、磨りガラスが嵌められているところを見るに、その内の二つはトイレと風呂のようだった。

残りの一つは、外へのドアだろう。


この部屋に設置されているは、つい先ほどまで夕が横たわっていて、現在進行形で浅く腰掛けているベッドだけのようだった。ついでに言えば、ベッドのシーツもマットレスも、ベッド本体のカラーまで徹底して白だ。

ここまで来ると、何か偏執めいたものを感じる。


それらすべてを見終えて、夕はようやく口を開いた。


「ここは何処だ?」


「やっトかよっ!? まズ最初ニ疑問に思ウとこじゃねェか?!」


「知るか。それよりも答えろよ。ここは何処だ」


「カァー、なんツーガキだ。テメェは恩ッテもんを感じネぇのかヨ?」


顔の横側に付く脚を器用に組み、ブエルは顔を顰めさせた。冷静に見ると、愛嬌のある気持ち悪さだ。十年前ならそれなりに流行ったかもしれない。


「感じてる。だが、そっちもただ俺があそこにいただけで助けたわけじゃないだろ?」


「ほゥ? ドーしてソー思う?」


「あの天使――ザドキエルが、あの巨漢にこう言ってた。『まともに相手をしくれたことがなかった』ってな」


「つまり、あんたらは俺を助けるあのタイミングで、伏せていた手札を明かしたわけだ。只の慈善事業でそんなことをするとは考え辛い。それほどの価値か、何かしらの理由が、助けた奴にあったというわけだろ」


夕はツラツラと感じ取ったことを述べる。これで外れていれば、大恥だが、それなりの自身があっての発言だ。十中八九的中しているだろう。


「ナンだ、馬鹿で無鉄砲ナ考えナシの戦士だと思っタラ、意外ト頭がキレるみタいだな」


「こんな理知的でカッコいい奴を捕まえて失礼なこと言ってんなよ。車輪お化け」


「ぶ、ぶわはっはっはっはっは!!! ぎぃひひいいいひひひっひっひっひっひっひっひ!!!」


「おい、笑うところじゃねぇぞ。そこは頷いて同意するところだ」


「ダ、だっテよォ!! ダッて、ンな顔しテ理知的って!! くひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」


「ふぬ」


流石に腹の立った夕は何時まで笑い続けるブエルの顔に拳をめり込ませる。ぶにゅという何ともいえない感触と音が鳴って、車輪魔人は外へのドアへと飛んで行った。


「おい、この部屋の洗面台は何処だ? ここが何処とかの前に顔を洗いてぇよ」


震える足でふらつきながら室内を探索すると、すぐにそれは見つかった。どうにもトイレの中に洗面台が付属しているらしい。ご丁寧なことに人の顔が映せるほどの大きさを持つ鏡が備え付けられていた。この部屋で唯一、便器以外で、白色とは別の色になりえる場所だろう。……便器はあれだ、身体からの排出物で一時的に染まる。


鏡を覗き込むと、日に焼けた黒髪の青年が映り込んだ。ひねた様な目付きに、細めの眉。鼻は高くも低くもなく、唇の肉付きは薄い。そこに映るのは間違いなく、諏訪野夕であった。


よく見ると見慣れない病衣のような純白の服を着せられている。どうにも下着なども脱がされているようで、

胸元から覗く素肌が、それを如実に主張していた。


何も身に着けていないと気が付いたら違和感が強まってしまった。どうにも下の方に不安感を覚える。

男に生まれたサガだろう。


気を取り直して、奇妙なデザインの蛇口を捻ると、水が勢いよく流れだしてくる。両手を椀にして貯め、顔に勢いよく叩き付けた。冷たい水の感触が気持ちいい。何度も繰り返すと、不思議と吐き気と頭痛が引いていった。


ずぶ濡れになった顔を拭うべく、洗面所の横に取り付けられているであろうタオルに手を伸ばそうとうして、そこでようやく気が付く。――タオルがない。事前の確認を怠った夕の敗北だ。


わざわざ今張り倒したブエルにタオルを持ってきてもらうのも手間だ。どうせすぐに着替えることになるだろうし、ここは服で拭くという小洒落たジョークでも言いながら、顔の水滴をぬぐうとしよう。


「あ、あの、これ使ってください」


不意に耳朶に心地よいソプラノボイスが響いた。驚きながら、トイレのドアへと目を向けると、そこには見慣れない小柄な少女が顔を赤くして、タオルを差し出している。その瞳は頑なに閉じられていた。


夕は混乱しながらも、素直にそのタオルを受け取る。このタオルも真っ白で、汚れ一つない柔らかなモノだった。


「悪いな」


よく分からないまま、礼を述べ、顔を拭く。柔らかな繊維が顔を刺激して心地よい。こんな上等な布で顔を拭ったのはいつ振りだろう。


「た、タオルを掛けておこうと思ったんですけど、うっかり忘れていてっ。すいませんっ!」


その言葉と共にトイレのドアがとてつもない勢いで閉じられる。鈍い音の後に、風が夕の頬を撫でた。

色々考えた結果、よく分からなかったので用をたしながら考えることにしたのだった。




今回も遅々として進まない物語。もっと量を書きたいですが、区切りが悪くなってしまう恐れがあるので、できません。もっと技術があれば可能なのでしょうが。

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