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やさしい子  作者: こめい
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勝利

本堂の外から、ラッパの音が聞こえた。


日東軍の勝利を告げる進軍ラッパだった。


続いて、大勢の兵士の声が上がった。


「敵軍が退却したぞ!」


「司令部を制圧した!」


「青海は落ちた!」


慎太郎のいる本堂へ、班の兵士が駆け込んできた。


「新田! 無事だったか!」


兵士は大仏の手のひらに横たわる明遠を見た。


「お前が仕留めたのか」


慎太郎は答えなかった。


兵士は慎太郎の肩を叩いた。


「よくやった。俺たちの勝ちだ!」


勝った。


その言葉が、ゆっくりと慎太郎の中へ入ってきた。


戦いが終わった。


もう撃たれない。


そう思った瞬間、身体から力が抜けた。


慎太郎の口から笑い声が漏れた。


何がおかしいのか分からなかった。


それでも笑いが止まらなかった。


涙も流れていた。


兵士に肩を支えられながら、慎太郎は本堂の外へ出た。


境内には日東兵が次々と集まっていた。


誰かが軍旗を掲げた。


「国王陛下万歳!」


一人が叫んだ。


「国王陛下万歳!」


兵士たちが腕を上げた。


慎太郎も両腕を上げた。


「国王陛下万歳!」


何度も叫んだ。


「国王陛下万歳! 国王陛下万歳!」


周囲の兵士たちは笑い、抱き合い、帽子を空へ投げていた。


慎太郎も笑った。


戦友が死んだことも、自分が何人殺したのかも、その瞬間だけは忘れていた。


ただ、生き残ったことがうれしかった。


自分たちが勝ったことが誇らしかった。


煙の向こうでは、日東国の旗が高く掲げられていた。

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