砲撃
青海の沿岸砲台は昼までに沈黙した。
日東軍の砲弾によって大砲が破壊され、守備兵の多くが死傷した。港の倉庫では火災が起き、黒煙が空を覆っていた。
午後、日東軍が東側の浜へ上陸した。
慎太郎は腰まで海水につかりながら岸へ進んだ。頭上を華嶺軍の弾が飛び、海面に小さな水柱を立てる。
隣の兵士が撃たれた。
男は声も上げず、水の中へ沈んだ。
慎太郎は一瞬だけ手を伸ばした。
しかし、すぐに引っ込めた。
助けるために立ち止まれば、自分も撃たれる。
清江で小隊長から言われた言葉が、今では命じられなくても分かるようになっていた。
止まれば次はお前だ。
慎太郎は前へ進んだ。
浜を守る華嶺兵は、日東軍が近づくと市街地へ退いた。
「追え!」
兵士たちは東門を抜け、青海の中へ突入した。
市街戦では、敵がどこにいるのか分からなかった。
窓から銃が撃たれ、屋根の上から瓦や石が落とされた。狭い路地の奥に敵兵がいると思って撃つと、倒れていたのは逃げ遅れた住民だった。
誰が撃った弾かは分からなかった。
兵士たちは立ち止まらなかった。
慎太郎の班は、家の壁を盾にしながら中央広場を目指した。
華嶺兵が立てこもった建物には火が放たれた。銃声が止まるまで、出口へ向けて銃を構え続けた。
燃える家から女が飛び出してきた。
慎太郎は反射的に銃口を向けた。
女は赤ん坊を抱いていた。
泣きながら地面へ伏せ、何度も頭を下げている。
「行け!」
慎太郎は道の奥を指さした。
女には言葉が通じなかった。
それでも意味を理解したのか、赤ん坊を抱え、煙の中へ走っていった。
「新田、遅れるな!」
慎太郎は仲間を追った。
振り返ると、女の姿はもう見えなかった。
助かったのか、別の場所で死んだのかも分からなかった。
街の西側では、慈雲寺の鐘が鳴っていた。
祈りの時刻を知らせるためではない。
逃げ惑う人々へ、避難所の場所を知らせるためだった。
砲声の間を縫うように、重く、悲しい鐘の音が繰り返されていた。




