↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亀裂  作者: きじの美猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/11

第十話 退く者たち

革命の三日前、議会前には数万人が集まった。

まだ革命とは呼ばれていなかった。

政府は違法集会と呼んだ。

市民は請願と呼んだ。


広場の中央で、教師が憲法を読み上げていた。

声は震えていた。

警護隊は議事堂の階段に並んでいた。

ゴエイカンは先頭に立っていた。

通信機から命令が届く。

排除せよ。

必要なら発砲せよ。


ゴエイカンは群衆を見た。

最前列に、かつて同じ部隊にいた男がいた。

負傷して退役し、今はパン屋を営んでいる。

その隣には、病院を閉鎖された看護師。

後ろには学生。

ムクルの女性もいた。

彼女は「ここを第二の故郷にしたかった」と書かれた紙を持っていた。

どこにも敵は見当たらなかった。

命令だけがあった。


「隊長」

部下が尋ねた。

「どうしますか」

ゴエイカンは議事堂を振り返った。

議員の多くは逃げていた。

残った者は、地下通路から退避しようとしていた。

議会を守るとは何か。

建物を守ることか。

椅子を守ることか。

命令を出す者を守ることか。

それとも、そこへ権力を預けた人々を守ることか。


ゴエイカンは銃を下ろした。

「門を開けろ」

部下たちは動かなかった。

「隊長、それは命令違反です」

「わかっている」

「逮捕されます」

「守るべきものを守るのだ」

部下たちに目が輝いた。


ゆっくりと門が開いた。

群衆は押し寄せない。

教師が先に歩いた。

憲法を抱え、ゆっくりと階段を上っていく。

群衆も一人ずつ、その後へ続いた。

警護隊は左右へ退いた。


夜、政府はゴエイカンを指名手配した。

だが、彼を捕らえる警察官はいなかった。

翌日、放送局が占拠された。

占拠したのは武装集団ではなく、局員たち自身である。

過去に放送を止められた記者たちが舞い戻り、保管していた映像を流した。


キーツとキョウソの会談。

オウとの密約。

タヌアの献金記録。

シンパンカンの音声。

違法手術の映像。


国民は一晩中、画面を見た。

知っていたこともあった。

噂だけだったこともあった。

信じたくなかったこともあった。

それらが一つにつながった。

国が壊れたのではない。

ずっと壊されてきたのだ。

そして壊す者を止められる立場の人々が、少しずつ目をそらしてきたことを思いだした。


翌朝、キーツのリコール成立が宣言された。

政府は無効だと発表した。

司法機関も無効だと判断した。

シンパンカンは、その日の午後に国外逃亡を図り、空港で職員に止められた。

「命令書を見せろ」

彼女は叫んだ。

職員は答えた。

「あなたが無効にした裁判所からは、命令書は出ません」


キーツは首相府へ立てこもっていた。

軍へ出動命令を出した。

複数の部隊が拒否した。

オウへ援軍を求めた。

返事はない。

キタノクニへ支援を求めると、短い返答だけが届いた。

「弱り切ったやつの相手をしている暇などない。」


キョウソは地下施設へもぐっていたが、

金と記録を国外へ運び出そうとしていた。

コクドはその荷物を無言で見ていた。

箱の一つには、手術を受けた子どもたちの名簿が入っていた。

キョウソは箱を燃やすよう命じた。

コクドは従わなかった。

「聞こえないのか」

青年は初めて、キョウソを正面から見た。

だが、まだ何も言わなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。